1546年(天文15年)5月2日、鉢形城攻防戦3日目、連雀曲輪、外曲輪の攻防戦!
連雀門の攻防戦が激しくなりました。
鹿島勢は思わぬ苦戦となりますが、松千代の指示で流れが変わります。
1546年(天文15年)5月2日
─鉢形城連雀門付近─
阿佐美信隆率いる軍勢200が鹿島勢の先鋒部隊500の軍勢に突入した結果、3台の投石機が破壊されました。
阿佐美信隆は戦い疲れた兵士と連雀門に控える200名の兵士達を巧みに交代させて戦いました。
鹿島勢は後方から500の軍勢を加勢に繰り出して阿佐美勢に立ち向かいました。
そこに、連雀曲輪の土手の土壁沿いに楯を並べて身を守りながら石礫部隊が鹿島勢目掛けて投石を開始します。
先程は鹿島勢の弓矢の雨を浴びて退避しましたが、再び現れると鹿島勢に負傷者が続出しました。
─松千代、鹿島政勝─
「政勝にぃーに、あの土手上の石礫部隊の辺りに火薬玉撃ってー!当たらなくても空中で破裂させれば逃げるよー!」
「はい!承知致しました!
急ぐぞ!伝令!
投石機2台に火薬玉装填!
狙いは土手上の石礫部隊だ!
空中で破裂させろ!」
鹿島政勝の周囲の兵士達が慌ただしく動きます。2台の投石機が地面にしっかり固定されると火薬玉が装填されて導火線に着火すると発射されました。
空中に放たれた火薬玉は連雀曲輪の土手上でダーン!と破裂して細かい鉄片を撒き散らしました。次々に発射された火薬玉が破裂する度に石礫部隊の兵士達が慌てて土手から退避を始めました。
「政勝にぃーに、次は地面で破裂させて!」
「承知致しました!
伝令!
投石機の火薬玉を地面で破裂させろー!」
投石機から火薬玉に着火させずに発射します。火薬玉は地面に落ちた衝撃で火薬が発火して破裂します。
空中に放たれた火薬玉が連雀曲輪内部に落下すると破裂音がダーン!と響き、鉄片が四散して近くの兵士達に負傷者が続出しました。
土手上から石礫部隊が退避する事になりました。
阿佐美勢は土手上から石礫部隊の援護が無くなると単に400対1000の軍勢の白兵戦になり、鹿島勢に押され始めました。
優勢だった阿佐美勢は次第に劣勢になりました。
阿佐美信隆は攻勢の限界と見切り、連雀門から城内へ退避を始めました。
連雀門前には退避する味方を支援する弓隊が鹿島勢に弓矢の雨を浴びせます。
鹿島勢は負けじと阿佐美信隆に弓矢を集中します。信隆は最前列で指揮していた為、自身が殿軍となる形で退却する軍勢を励ましながら連雀門を目指します。
城兵達は阿佐美信隆の周りに楯を集め、防ぎながら退却します。
その時、鹿島勢の弓矢に馬を射られた信隆が落馬しました。
兵士達が駆け寄り、投げ出された信隆の周りに集まり、身体を起こします。
「んぐっ…」
苦痛の為、信隆は声が詰まります。
落馬した時に膝と腰を打撲、右肩から胸部にも痛みがあります。
大柄な兵士に担がれ、周りに楯を担ぐ兵士に囲まれて連雀門を目指します。
連雀門までは50メートル、信隆を守る兵士達が声を出して20名程が壁の如く塊となり、死を覚悟して時間を稼ぎます。
鹿島政勝は即座に長槍隊を密集させて追撃します。
「追撃だー!付け入るぞー!
連雀門を突破するぞー!」
鹿島政勝は追撃したまま連雀門から城内に侵入するつもりです。
阿佐美勢は連雀門から次々に城内に退却します。門前に弓隊20名、長槍20名が阿佐美信隆を収容する為に備えていました。
やがて信隆を担いだ兵士と警護する兵士達が連雀門に収容されると門扉が閉ざされました。鹿島勢の付け入りを防ぐ為、信隆の命令も無しに彼を信奉する兵士達が連雀門を守ります。
目の前で連雀門が閉まり、40名の兵士に鹿島勢が殺到します。
城内、連雀門の上部から城兵達が弓矢を放ち、門前の兵士達を援護します。
楯を前に並べた鹿島勢が弓矢の射ち合いで激しく戦います。
「あれは死ぬ気だな?」
鹿島政勝は冷静に攻撃停止を命じました。
死を覚悟した兵士は恐れを知らず戦う為、寄せ手の死傷者が増えてしまいます。
無駄に消耗するのを避けました。
鹿島勢が連雀門から一旦兵士を下げました。
連雀門が開き、死を覚悟した兵士40名が城内に入ると城兵達は拍手で勇気を讃えました。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
自然に兵士達が声を上げて気合いを高めました。
─松千代、鹿島政勝─
「政勝にぃーに?
こちらが優勢なのに、少し負けた気がしちゃうよね?」
「はい、投石機が3台被害を受けました。
暫く修理が必要です。」
「まぁ仕方無いね、だけど、そろそろ味方の軍勢が外曲輪の守りを突破するよ!
さて、連雀門の近くに阿佐美勢が集まってるから残りの投石機を集めて投石と火薬玉で時間を稼ぐよ!
政勝にぃーに、攻撃用意だよ!
阿佐美勢を引き付けるよー!」
「はい!松千代様?我らは囮ですか?」
「まぁそーだよ。お空から諏訪神社の神様が仰るからね。」
「松千代様?お空に諏訪の神様が見えるのですか?」
「政勝にぃーに?見えないの?
きゃははは!」
鹿島政勝は松千代が諏訪神社の神様からお告げを貰っていると信じました。
兵士達に投石機の準備を命じました。
準備が出来た投石機から次々に投石と火薬玉の攻撃が始まりました。
4台が投石、3台が火薬玉を発射します。
連雀門から連雀曲輪内部に次々落下する投石と落下した火薬玉が炸裂すると城内が騒がしくなりました。
ドン!ダン!ダーン!と各々の音が響きます。暫く攻撃していると立花義弘の本陣から伝令が到着、外曲輪の北門、南門を突破して侵入に成功との知らせでした。
「政勝にぃーに、攻撃停止!
暫く休み、敵は混乱してるよ、放置すれば阿佐美信隆は外曲輪に駆けつけるから、連雀曲輪の守りが弱くなるよ。
休憩してから連雀門を突破するよ!」
「はい!承知致しました!
伝令!攻撃停止!
休憩するぞ!
但し、警戒は怠るな!」
松千代の指示した通り、諏訪神社の神様のお告げが流れを呼びました。
連雀曲輪で想定以上に苦戦しました。
外曲輪の北門、南門が突破に成功しました。
鉢形城攻防戦はさらに熱くなりそうです。




