１５４６年(天文１５年)４月２９日、要衝、要害山城の去就！？
天神山城と鉢形城の中間に要衝、要害山城があります。天神山城から鉢形城に軍勢を移動する為には要害山城の眼下の街道を通る必要がありす。
街道を封鎖されてしまうと面倒な存在です。
藤田康邦と伊集院忠久は要害山城の去就に気を使いました。
１５４６年(天文１５年)４月２９日
─要害山城(金尾要害山城)─
天神山城から山を降りた上野勢１０００は荒川沿いに進み、要害山城に差し掛かりました。上野勝家は要害山城主、私市家斉に鉢形城に合流する事を勧める使者を送りました。
上野勝家は使者の帰りを待たず、軍勢を率いて鉢形城に向かいました。
要害山城の兵力は３００、天神山城から３キロの距離にあり、天神山城が落ちれば次に標的になる運命です。
鉢形城まで４キロの距離にあり、要害山城が落ちれば鉢形城まで軍勢を遮る城がありません。
使者のからの誘いに対して回答を保留した私市家斉は家臣と相談して決める事を伝えて使者を帰しました。
荒川対岸の仲山城が落ちています。
天神山城も間も無く敵の手に落ちそうです。
城兵３００名の命は私市家斉の決断次第で大きく変わります。
─私市家斉、側近─
「ここに残り、勝ち目の無い籠城をするか？
城を破棄して鉢形城へ移動するか？
秩父藤田家に降伏するか？
兵士達は何を望むだろうか？」
「殿、籠城しても無駄になりましょう。
鉢形城へ移動して一時的に生き延びるか？
秩父藤田家に降伏して生き延びるか？
いずれかでございましょう。」
そこに天神山城の本丸が燃えていると報告が入りました。
天神山城が落ちれば間も無く敵の進撃が始まります。城兵達も不安を抱きながら、城主、私市家斉の判断を待っていました。
「殿！秩父藤田家から使者が参りました！
お味方して頂きたいと城門前にて叫んでおります！」
「なんだと？味方になれと？
良いから使者をこちらに通せ！」
城門前で叫ぶ使者の声は城兵達に生きる希望を与えました。
城主が受け入れたら生き延びる事になります。側近は使者を城門から要害山城の本丸に導く間に城兵達が喜ぶ姿を見て、城兵達の希望を理解しました。
本丸に案内された使者は秩父藤田家当主、藤田康邦の気持ちを伝えます。
「私市様、主人、藤田康邦は貴殿にお味方していただければ、要害山城の城主を今まで通り任せて、重役の待遇を約束すると申されております。鉢形城までの先導役をお願いしたいと希望されております。
如何でしょうか？」
「使者殿？私は秩父藤田家を裏切った身にございます。それを咎めぬと申されるのか？」
「はい、主人は関東管領、前橋上杉家の采配にて強引に藤田家を鉢形藤田家を本家、秩父藤田家を分家に貶めました。
無理矢理引き裂かれた事が原因ですから、元通りに仕えてくれる事を望まれております。
秩父の神々に誓って貴方を粗末にせぬと、こちらに要害山城主の任命と本領安堵の書状にございます。」
藤田康邦からの書状を受け取り、内容に目を
通す私市家斉の目から涙が溢れます。
「なんと寛大な……使者殿！
秩父藤田家、藤田康邦様にお仕え致します！
それで人質については如何されますか？」
「私市様、主人は人質は無用と申しております。鉢形城への先導役を任せたいとの事にございます。」
要害山城主、私市家斉は降伏する事無く、寛大な条件で秩父藤田家に引き抜かれる事になりました。
私市家斉の服従に藤田康邦、伊集院忠久は安心しました。
─天神山城付近、荒川河川敷─
─藤田康邦、伊集院忠久─
「藤田殿、要害山城の城兵と街道筋を封鎖する軍勢が２０００程が布陣したらお手上げの地形でした。
鉢形藤田家に軍才のある武将が居なかった事に救われました。」
「はい、天神山城が落ちても、鉢形城に向かうには要害山城前の道か、荒川対岸に渡り、大回りするしかありません。
さらには対岸から荒川を渡れる場所は限られています。
まずは難関をすり抜けました。」
二人は河川敷で将兵達と本日の勝利を祝いました。明日は鉢形城へ向かう事になります。
仲山城、天神山城、要害山城が秩父藤田家の手に戻りました。
明日からは鉢形城攻めが始まります。
鉢形城は昨年１２月に立花軍に包囲されてから大規模な改修をしています。
どんな戦いになるのでしょうか？
