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1546年(天文15年)4月29日、仲山城、天神山城の攻防!

仲山城攻めが始まります。

仲山城攻めがきっかけになり、荒川対岸の天神山城の戦いに影響が波及します。

1546年(天文15年)4月29日


─早朝、秩父藤田領、仲山城─


早朝の山々から鳥の囀ずりが聞こえています。諏訪頼宗の指揮下に入った猪俣一族が仲山城攻略の先鋒を請け負いました。

虎ヶ岡城主、猪俣正綱勢500が仲山城の北側から切り開かれた道を登ります。

虎ヶ岡城と仲山城は隣の城同士の緊急な事態に備えた通路を利用していました。

平時から使われた道は互いにの城兵の一部しか知らない道でした。


諏訪勢3000も後を追いかけて山頂を目指して登ります。


諏訪頼宗は仲山城付近に布陣している岡本政國の軍勢2000と連絡を取りました。

岡本勢は仲山城の東側、小阪諏訪神社の参道から1000、南側の正門から攻めあがる軍勢1000に別れて攻撃を開始します。


岡本勢は天神山城攻撃中の藤田康邦、伊集院忠久指揮下で天神山城の背後を牽制する役目を帯びて、丁度都合の良い場所に布陣していました。岡本政國は伊集院忠久の許可を取り付けて仲山城攻略に加勢が許されました。


仲山城に籠るのは児玉勝之以下400、鉢形藤田家の筆頭宿老の弟である為、意地でも降伏出来ぬと決意を固めています。


仲山城の兵士達は麓の東側と南側から攻め昇る岡本勢に気を取られます。

岡本勢は弓隊を先行させると徹底して弓矢の雨を浴びせて城兵の弓矢を圧倒します。

立花家の軍勢は山岳戦を想定した局地戦の演習を重ねて訓練しています。

訓練通りに盾に身を守られた弓隊が密集して弓矢の連射を続けます。

疲れたら次々に交代して弓矢を放ち続けます。


1つずつ城兵が守る柵や陣地を突破して攻め上りました。

やがて城の東側から攻め上がる岡本勢が三の丸に到達、南側から攻め上がる味方と合流しました。

三の丸の空掘りは深く、三の丸の南側の正門前の橋を巡り激しい弓矢の攻防が始まりました。


互いに盾に守られた弓隊を前に出して弓矢を撃ち合い、長槍の突入を繰り返します。

その周囲では深い空掘りから鉤縄を塀に引っ掻けて侵入を計りますが、空掘りと斜面の角度がきつく、斜面には多数の木が生い茂り、三の丸の塀まではなかなか鉤縄が届きません


届いた鉤縄も次々に切られたり、外されて侵入が出来ない状況でした。

しかし、間道伝いに北側の二ノ丸前に進出した猪俣勢が静かに鉤縄を使い侵入します。

城兵は岡本勢に気を取られ、北側の侵入路から猪俣勢が来ると思わず、手薄な二ノ丸は簡単に制圧されてしまいました。


二ノ丸の騒ぎに気が付いた本丸の兵士達が慌てます。

「猪俣勢の裏切りー!」

「猪俣正綱殿、裏切りー!」

猪俣家の軍旗、丸に橘の家紋が二ノ丸に立てられました。

敵らしき兵士の背中には丸に橘の家紋がありました。

仲山城の将兵達は昨日、虎ヶ岡城主、猪俣正綱が立花家の武将、諏訪頼宗の降伏勧告を拒絶した事を知っていました。

信じていた隣人が裏切るとは想像出来ませんでした。


慌てた城兵達は二ノ丸と本丸を繋ぐ橋の封鎖に間に合わず、猪俣勢が本丸に一気に侵入を許してしまいました。

城兵達は次々に討たれます。


「殿ぉー!裏切られました!

最早これまでにございます!」


側近から知らされた状況を悟り、仲山城主、児玉勝之は意を決しました。

「やられた!猪俣一族め!

自害する故、首を敵に渡すな!

火を放って本丸を焼き尽くせ!」


側近に介錯と火を放つ事を命ずると、仲山城主、児玉勝之は自害、本丸は火に包まれました。炎に包まれた本丸を見た猪俣勢が鬨の声を挙げます。

「エイ!エイ!おぉー!

エイ!エイ!おぉー!

エイ!エイ!おぉー!

エイ!エイ!おぉー!」


その声に岡本勢、諏訪勢も呼応して勝鬨を挙げます。仲山城の周囲に勝鬨の声が響きました。



─鉢形藤田家、天神山城─

─城主、丹治正俊、上野勝家─

─午前10時頃─


天神山城本丸から火に包まれた仲山城本丸の姿が見えています。

丹治正俊は、上野勝家に決意を語りました。


「上野殿、仲山城が落ちて荒川の対岸の城は全て立花家と秩父藤田家の手に落ちました。

次は仲山城の目の前にある要害山城が狙われます。要害山城が囲まれたら鉢形城への退路が塞がれるでしょう。

今なら鉢形城に戻れます!

退路がある内に引き上げて、鉢形城の殿様を助けて貰えないでしょうか?」


「丹治殿、今、我が軍勢が引き上げたら、難攻不落と言われた天神山城も人手が足りず、持ちこたえる事は無理でありましょう。

それで宜しいのですか?」


「上野殿、秩父藤田家と立花家は鉢形藤田家を残さず潰して参りましょう。

前橋上杉家の力を借りて本家を乗っ取りした罪は深く、時の流れは止められぬ様です。

少しだけ時間を稼ぎますから、上野殿、貴殿は鉢形城に向かってくだされ!」


「丹治殿、鉢形城に戻ったとしても前橋から援軍が来るはずも無く、何も出来ませぬそ!約束も出来ませぬ!」


「上野殿、我が殿の事を託します!

殿が最後を迎えようと恨みません。

約束無しに鉢形城へ向かってくだされ!」


「解った!約束はせぬぞ!

丹治殿!世話になりました。」

二人は互いに手を握り別れを惜しみました。


天神山城は3日前から秩父藤田家、立花家の軍勢と戦っていました。

藤田康邦勢1000、伊集院忠久勢4000

総勢5000、天神山城は600の守備兵と上野勝家の軍勢1000が連携して守りを固めていました。

上野勢が抜けると天神山城を守るにはギリギリの人数で戦う事になりました。

藤田勢と伊集院勢は天神山城の北側を包囲せずに空けています。

攻城戦の秘訣として、逃げ道を空けて城兵の逃亡を促す事があります。

上野勢はその包囲の穴から抜けて鉢形城へ向かいます。


天神山城から上野勢1000が抜けて行きました。本丸、二ノ丸、三ノ丸、東曲輪に配置されていた上野勢が抜けると一部の兵士達は手を振り、別れを惜しみました。


天神山城を攻める秩父藤田勢、伊集院勢は上野勢が退去した事を把握すると城内に矢文を放ちました。

投降するなら命を保証して、秩父藤田家で採用する内容です。


午前11時頃、藤田勢、伊集院勢は攻撃の手を緩め、休息を取りました。

城内の兵士達に考える時間を与える為でした。寄せ手の兵士達は握り飯を与えられ、しっかり休息を取りました。


午後13時頃、藤田勢、伊集院勢は攻撃を再開しました。

天神山城は北から本丸、二ノ丸、三ノ丸が並び、東には背後から援軍を出せる東曲輪がありました。

伊集院勢が三ノ丸と東曲輪の通路に柵を並べて封鎖しました。柵の後ろに2メートルの高さの台座を配置して台座の上に盾を並べ、5名の弓手が一斉に弓を放ち、指揮官を狙いました。その他の弓隊は柵の中から連射を繰り返し援軍の接近を遮断しました。

三ノ丸を守る城方は援軍無しの状態で正門前の攻防を続けました。

交代要員も乏しく、次第に疲れてついに正門の守りが破られ、藤田勢、伊集院勢が三ノ丸に侵入しました。


「うぉー!押せー!

押し込めー!」

藤田勢、伊集院勢が攻勢を続けます。

やがて二ノ丸が騒がしくなりました。

二ノ丸から雑兵達が逃げ出します。

寄せ手に降伏する為に守りを破棄する者と、それを止める者達が争いを始めました。

その時、伊集院勢の忍びが二ノ丸に紛れ込み火を放ちました。

「裏切りだー!逃げろー!」

「裏切りだー!逃げろー!」

数ヶ所であがる声に混乱した二ノ丸は燃え広がり、火の勢いは風に煽られて本丸に及びました。


「ダメだ!本丸が燃えてるぞー!」

城方から声が上りました。


二ノ丸から本丸まで火が廻りました。

「これまでだ!降れ!降れー!

秩父藤田家に降れー!」

寄せ手の兵士達が次々に降伏を促します。

鉢形藤田家の軍勢の半分は逃亡、半分は降伏する事になりました。


二ノ丸、本丸は3時間燃え続けた末に全焼してしまいました。

城主、丹治正俊は自害、側近が降伏して首は秩父藤田家に渡されました。

天神山城から藤田勢、伊集院勢の勝鬨の声が上りました。



─藤田康邦、伊集院忠久─


「伊集院殿、立花家のお陰で天神山城や、荒川対岸の城の奪還が出来ました。

感謝致します。」


「藤田殿、立花家は秩父の神々に捧げるご奉仕が出来る事が喜びとなります。

藤田家創立以来の領地全てを秩父藤田家に託すのが秩父の神様のご意向ですから、気になさらず、神様から領地を預かるお気持ちを忘れずに頂ければ十分でございます。」


「はい、神様から預かる事を忘れませぬ!

神々からの御恩と立花家から頂いた御恩は藤田家末代まで忘れません!」


「さて、藤田殿、対岸の諏訪勢、三田勢と連絡した上、鉢形城に向かう立花家次男、義弘様と相談して鉢形城攻略に向かう事になります。鉢形城攻略の主将は立花義弘様になるかもしれませんが、ご了承頂けますか?」


「伊集院殿、お気になさらずに、今まで主将にして頂いただけで過分な待遇を頂きました。

これ以上の望みはありません。

今後とも宜しくお願い致します。」


夕刻、天神山城を攻略した藤田勢、伊集院勢は荒川河川敷に布陣しました。

勝利を祝い、秩父産の鹿、飼育された豚の鉄板焼、豚汁、焼そばと少々の酒が振る舞われました。


対岸の諏訪勢達も荒川河川敷に布陣してささやかな勝利を祝い、食事と少々の酒が振る舞われました。


仲山城、天神山城が陥落しました。

鉢形城の近くに残るのは要害山城が残りました。

鉢形藤田家は極めて不利な状況になりました。

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