1546年(天文15年)4月28日、意外なる障壁、虎ヶ岡城!
諏訪頼宗の軍勢は仲山城攻略を目指しています。三田綱秀の軍勢は要害山城の攻略を目指しています。
二つの城を攻略するには目障りな虎ヶ岡城が存在しています。
降伏勧告をしますが、城主、猪俣正綱は拒絶しました。
1546年(天文15年)4月28日
諏訪頼宗、三田綱秀の二人が花園城を攻略した事で北西1キロにある花園御嶽城も抵抗を諦めて降伏開城する事になりました。
花園城の戦いに敗れた前橋上杉家、沼田勢の逃亡兵は仲山城、虎ヶ岡城、要害山城へ分散して逃げ込みました。
逃げて来た沼田勢の兵士から花園城の戦いの様子や、花園御嶽城の降伏、開城が知らされました。
仲山城は南へ2キロの天神山城の北側を固める重要な支城です。
虎ヶ岡城は仲山城の2キロ東にあり、荒川対岸の要害山城と南に1キロの位置にあります。
要害山城は仲山城、虎ヶ岡城とともに天神山城を支える支城です。
天神山城と鉢形城を繋ぐ要の城です。
立花義弘がら指示された命令は諏訪勢が仲山城、三田勢が要害山城の攻略する事です。
虎ヶ岡城を攻略出来れば仲山城と要害山城へ進撃できますが、虎ヶ岡城が絶妙な位置に存在して目障りでした。
虎ヶ岡城は小高い山城です。
力攻めすれば犠牲が多数と予想されます。
2キロ東に猪俣城があり、その一帯の美里郡を猪俣一族が領地としており、援軍が来ると予想されます。力攻めにするのは避けたい処でした。
そこで、諏訪頼宗は降伏した藤田氏晴を通じて虎ヶ岡城主、猪俣正綱に降伏勧告を行いましたが、拒絶されてしまいました。
そこで諏訪頼宗は青龍寺住職に相談しました。
─諏訪頼宗、青龍寺住職─
「ご住職様、虎ヶ岡城に降伏勧告しましたが、拒絶されてしまいました。
花園城を攻略した勢いで高圧的に勧告したのが不味かった様です。
ご住職のお知恵を頂きたく、参上致しました。」
「諏訪様、虎ヶ岡城は猪俣一族にとって大事な城です。藤田家創立以来、天神山城と鉢形城を守って来た自負があります。
虎ヶ岡城及び美里郡の猪俣一族の本領安堵すれば必ずや従いましょう。
猪俣一族の尊厳を大切に為されば秩父藤田家に仕えてくれるでしょう。
差し支え無ければ私が猪俣一族の本拠地、猪俣城に参ります。
猪俣の長老と面識が有る故、話を纏めてみせましょう。」
「ご住職様、本当に宜しいのですか?」
「はい、喜んで参りましょう。
但し、秩父藤田家に仕えるならば、猪俣一族に宿老等の重役の待遇と場合によっては仲山城を与える権限を頂きます。
腹の探り合いの結果に依りますが、餌として仲山城が必要になるかもしれません。
宜しいですかな?
主将の立花義弘様や立花家ご当主、義秀さまに叱られるのは御免で御座る故、腹を括って頂きますぞ?」
青龍寺住職は虎ヶ岡城の背後には美里郡の領主一族猪俣一族があり、纏めて調略すれば秩父藤田家の為になると伝えています。
藤田家一族の長老にしか出来ない事でした。
「ご住職様、宜しくお願い致します!」
頭を下げる諏訪頼宗。
ニコニコした笑顔の住職は自らの正体を明かします。
「諏訪様、私の正体を明かしましょう。
青龍寺住職、浄心と名乗っておりますが、先代秩父藤田家当主、藤田重綱の庶腹の兄、藤田重時にございます。
藤田家の継承問題を避ける為、仏門に入りました。猪俣一族が秩父藤田家に仕えるならば条件は何でも重綱に従わせます。
これで胸の内がスッキリされましたかな?」
「参りました。全て見透かされていました。
ご住職様に是非、お願い致します!」
青龍寺住職が猪俣一族の本拠地、猪俣城に向かいました。
猪俣一族当主、猪俣信綱と交渉しました。
─交渉の結果─
①猪俣一族は秩父藤田家に臣従する
②猪俣一族の本領安堵、美里郡全域は猪俣一族の領地とする。
③猪俣一族から秩父藤田家の宿老に猪俣信綱を迎える。
④猪俣一族から仲山城の降伏勧告の使者を立てる。
降伏を受諾した場合は猪俣一族の領地に組み入れる。
⑤仲山城が降伏を拒絶した場合、先鋒を猪俣一族が引き受ける。
⑥仲山城が陥落した場合は猪俣一族が仲山城と領地を受け継ぐ。
⑦当面の間、猪俣一族は立花家の指揮下に入る事。
同意した内容を書状に纏め、署名して約定が成立、夕刻、青龍寺住職、浄心が花園城に戻りました。
─諏訪頼宗、青龍寺住職、浄心─
約定の書状に目を通した諏訪頼宗が安堵しました。
「諏訪様、ご覧の様に纏まりました。
明日の早朝から猪俣勢500が先鋒となり、仲山城を攻撃致しますので後詰めをお願い致します。」
「ご住職様、交渉を纏めて頂き感謝致します。
早速、主将、立花義弘に報告させて頂きます。それでご住職様、何か御用命はありませんか?例えば寺領の加増?
還俗(武士へ復帰する事)でも構いません。
ご希望があれば必ずや実現致します!」
「いやいや、諏訪様、立花家は滅亡寸前の秩父藤田家を救って頂きました。
交渉が纏まったのは立花家の支援あればこそに過ぎません。
そうですなぁ、旨い酒を戴けるならお願い致します。」
「ご住職様、なんと謙虚な……清酒と焼酎なら立花家には無尽蔵に有りますから早速ご用意致します!」
青龍寺には諏訪頼宗から清酒5樽、焼酎5樽と酒のツマミが多数届けられました。
諏訪頼宗と小前田諏訪神社の宮司との出会いが青龍寺住職との縁結びと繋がり、花園城、花園御嶽城、虎ヶ岡城が手の内に入りました。
秩父の状況は立花家、秩父藤田家有利の展開になりました。




