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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)4月22日、川越上杉家、松山城へ撤退始まる!

川越上杉家は密かな政変がありました。

筆頭宿老代行となった上田朝直は松山城へ撤退を決めます。

川越城内が混乱する状況で撤退が始まりました。

1546年(天文15年)4月22日


─川越上杉家、川越城─


筆頭宿老、長尾信忠の訃報が家中に大きな衝撃となりました。

川越上杉家を取り仕切る存在をを失い、混乱した城内は次席宿老、上田朝直が職務を引きぐと直ぐに松山城への撤退を命じました。

長尾信忠の補佐役だった彼は信忠から万が一の撤退計画に関わっていました。

撤退計画は極秘で勧められ、長尾信忠は存命中、弟に知らせず、亡くなる数時間前に弟、信正に打ち明けるまで秘密にしていたほどでした。


川越城は難攻不落と言われ、兵士達もそれを信じていました。

混乱の中、いきなり松山城へ撤退と命じられて城内は混乱します。

撤退計画に携わっていた長尾信忠の側近と上田朝直の側近が中心になり、撤退の段取りが組まれました。


長尾信忠の遺体と共に当主、上杉朝定を先に撤退させます。護衛を兼ねて2000の部隊が川越城の西側、大手門から出発しました。

その大手門一帯を西第四砦と古河公方家の援軍、梁田義助の3000が守りを固めます。

立花軍が近付いた場合は周囲に火を放ち、街中を火の海にして立花軍を防ぐ準備をしています。

更に川越城の南門周辺に火を放つ準備が進められました。

川越城内では撤退を完了すると最後に川越城を燃やし尽くす準備も始まりました。


長尾信忠は生前、川越上杉家が万が一、本拠地移転をしなければならぬ場合、川越城に次ぐ規模を誇る松山城に移転する準備を進めました。その為、二年前から兵糧、軍資金を松山城に少しずつ移転し続けました。

さらに領内の農業生産に関わる資料、商工業資料、川越上杉家の家臣や使用人の俸給資料など、本拠地移転後に必要な物を事前に準備していました。

上田朝直はその補佐役であり、現場を熟知しています。


しかし、本拠地移転は平和的引っ越しではありません。戦いの最中の退却です。

想定外の事が起こります。


それは城内、上級家臣の邸宅から財宝の持ち出しに台車や、馬の手配を要求したり、高級品や家財の持ち出しに関する苦情が殺到した事、上級家臣の家族が大勢城内に残っていた事、城下の富裕層が坂戸に避難せず、金の力で城内に退避していた事など想定外の事が次々に起こりました。


極秘で撤退の対策をしていた為、試験的な事も出来ず、いきなり本番を迎えると家財を運び切れず、抗議が殺到します。

川越城内は段差だらけで運び出すには困難を極めました。

二年前から準備しましたが、軍事的な準備に偏り、家族の財産を運ぶ手順までは準備していませんでした。

箪笥(たんす)、金庫は台車が無ければ運べず、

布団さえ困難です。箸や茶碗、食器や春夏秋冬の衣類、先祖伝来の品々の中から一人ずつが運べる物を選び持ち出すのは困難を極めました。


─上田朝直、弟、上田義直─


「兄上!城内の通路に家財を運ぶ家族達で大混乱です。

北門と東門の前が立花軍に封鎖されました!

門前に逆茂木と馬防柵が備えられ、出入りが不可能になりました!

西側の大手門から退却するしかありません!」


「まずいぞ!立花軍が西から攻めてきたら、西第四砦と梁田義助殿がいつまで持つか?」


「兄上、梁田義助殿が川越の街中を焼き払うと西から南へ放火準備を、済ませております。

梁田殿は立花軍に放火を通告しており、立花軍が攻撃を控えてる状況です。

梁田殿は撤退を急ぐ様にと申されております。」


「川越の街中火の海なら立花軍も手出し出来ぬ、立花家は繁栄する川越の城下町と川越城をそのまま接収したいだろう?

しかし、全部焼いて仕舞えば立花家に大した利益にならぬ。

簡単には渡さぬ!

それで、殿は出発なされたな?」


「はい、先ほど松山城に向かわれました。」


「良し!殿が向かわれたなら、反対してた奴らも従うしかあるまい!」


撤退に反対する強硬派の重臣は曽我和正、宇田川長広、河越勝重の三名でした。

彼らは歴代の重臣であり、厄介な存在です。

しかし、彼らの反対を封じる為、既に当主、上杉朝定が率先して出発して既成事実を作りました。

実は上杉朝定は長尾信忠の死去から暫くすると冷静になり、松山城移転を拒否、川越城に籠城を主張しましたが、上田朝直が無理矢理松山城に送り出したのが真相でした。


やがて立花家から使者、日奉宗政(ひまつりむねまさ)が訪ねて来ました。

立花義秀から安全に撤退する提案がありました。

内容は撤退に関して立花家が戦闘を停止した上、大幅な譲歩した提案でした。


日奉宗政は立花家の一門で関東の7大武士団、西党の直系子孫にして立花家と同じく、古代に藤原家の武蔵国の国司の家系です。多摩地区の神社の宮司を多数輩出する家系であり、日野、八王子地区の帝領、近衛家、九条家の荘園管理に携わる立花家でも特に尊い名門の出身です。

立花義秀から交渉を任され、臨機応変に対処する全権を与えられています。

日奉宗政は立花家一門として川越上杉家、筆頭宿老代行、上田朝直と挨拶を交わして交渉を開始しました。


─交渉の結果─


①川越上杉家は川越城から松山城に撤退する。


②川越上杉家と立花家は川越城周辺から松山城周辺地域で停戦する。


③川越城から撤退する期限は明日、23日の日没までとする。


④川越城内から持ち出す物は制限無し、23日の日没まで搬出した物は全て川越上杉家の所有権を認める。


④川越城内、川越城下町に残された川越上杉家の資産は全て立花家に所有権があるとする。民や寺院、神社等の財産権、所有権は従来通り認める。


⑤立花家は川越上杉家が撤退を完了するまで川越上杉家の将兵、領民に危害を加えない事。田畑や街の保護を約束し、略奪、放火等の一切の不法行為を行わぬ事。

川越上杉家は撤退を完了するまで、同じく一切の不法行為を行わぬ事、特に略奪、放火等の行為は厳しく監視して取り締まる。

両家は監視部隊を城下に配置して警備を行う。


⑥4月24日から松山城にて国境を決める交渉を開始する


以上が合意に至り、書状に署名して交渉が成立しました。



─立花家、今福城─

─立花義秀、鹿島政家─


日奉宗政が今福城に戻り、交渉成立が報告されました。

成立した内容は立花義秀が満足する内容で纏まりました。


川越城から撤退する猶予は大幅に譲歩しましたが、半日猶予を与えても台車不足に城内の段差が妨げになり、川越上杉家側の満足出来る量の搬出は不可能でした。

全てを見通しした上に川越城と城下町を略奪と放火から守る監視態勢が約束され、放火される可能性が低下しました。


さらに停戦地域を川越城から松山城周辺に限定した事で田波目城、山根城など川越上杉家の西側の領地を接収出来る内容に持ち込み、4月24日から国境を決める交渉に入ると決まりました。


これは川越上杉家の士気が大幅に低下する仕掛けになっています。

交渉中に田波目城、山根城だけで無く、さらに北へ進み松山城の西側に勢力を伸ばす事も視野に入れています。

交渉が断然有利になる可能性がありました。


「ぶはははは!

日奉宗政はなかなか交渉が上手だぞ!

上出来だ。

24日から松山城で国境の交渉に託つけて周辺の情報を集められるじゃないか?

川越城と城下町の放火も防ぐ対策が出来たみたいだな?」


「はい、見事な交渉でした。

しかし、放火に関しては油断なりません。」


「政家、川越城下の民の財産権、所有権を交渉内容に含めた事で松山城に移転した川越の民を引き戻せるか?

宣伝する方法はどうだ?」


「殿、川越上杉領で立花家が支配している地域に交渉内容の高札を建てます。

庶民に分かりやすく公表します。

紙芝居の如く解説出来る者を側に置きます。

さらに寺院、神社、避難した民が集まりそうな場所で宣伝させます!」


「立花家に仕えたい者をついでに募集したいのだが、やれるか?」


「お爺ぃー!!丸投げやり過ぎぃー!」


松千代が現れ、義秀に抱きつきます。


「松千代、俺は欲張りだから直ぐにやりたいからな、政家に頼むんだがダメか?」


「お爺、松千代が府中から連れてきた日奉さんが交渉で活躍したでしょ。

まだ二人、宿老の瀬沼おじさんの息子さん、瀬沼の信勝にぃーにと、親戚の藤原の家永にぃーにが居るじゃん。

頭良いし、戦うのも上手になんだから、もっと仕事を割り振るのが効率良いでしょ?」


「解った!政家!瀬沼信勝!藤原家永を補佐役に育てるぞ!二人を使い、立花家に仕えたい者を募集せよ!」


「殿、承知致しました。松千代様の見立てですから将来性は抜群です。

喜んで二人を預からせて頂きます!」





立花家と川越上杉家の撤退交渉が立花家に有利な形で成立します。


交渉力の差は明白でした。

松千代が人材育成に貢献しそうです。

日奉宗政、瀬沼信勝、藤原家長、成長のチャンスが巡りそうです。

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