１５４６年(天文１５年)４月２１日、稲荷山砦の戦い！釣り野伏せ炸裂！
立花軍が前橋上杉軍を追撃します。
松千代は前橋上杉軍を無力化する追撃方法を考えました。
１５４６年(天文１５年)４月２１日
─午後１６時頃、狭山、入間川河川敷─
─三田綱秀、側近─
前橋上杉軍が稲荷山砦周辺に誘い込まれ、釣り野伏せに遭遇、包囲殲滅の攻撃を受けて入間川に敗走して来ます。
勝利が確定した状況です。
「伝令だ！
的場陣地の立花義秀殿に伝えよ！
稲荷山砦周辺にて鹿島政家殿、釣り野伏せに成功、大勝利！前橋上杉軍は入間川周辺を敗走中！以上だ！」
伝令の早馬が走りました。
敗走する前橋上杉軍は入間川対岸に三田勢が待ち構える姿に愕然とします。
後ろからは次々に味方の兵士が逃れて来ます。河川敷に兵士が集中します。
下流に移動して三田勢から離れた場所から対岸に渡ろうとします。
混乱した前橋上杉軍は押し合い揉み合い、我先に川を渡ろうとする者、対岸の三田勢を恐れて下流に向かい逃走せんとする者が入り乱れ、混乱します。
三田勢の存在に気付いた指揮官が叫びます。
「下流に走れー！下流から渡れー！」
焦るあまり、目の前の対岸に渡ろうとする者が半数、下流から逃れようと移動する者が半数に別れます。
目の前の入間川の水深は最大１２０センチ、胸の高さになりました。
流れも緩く、危険はありませんが、甲冑の重量に水を含んだ身体は弓の餌食になります。対岸に渡るも甲冑と装備全体が水を含み、動作が鈍く、分散した少数を三田勢は集中して囲んでいます。
下流に逃れ、対岸に渡った兵士達も対岸の土手に隠れた三田勢に囲まれました。
三田綱秀は老巧な手腕で前橋上杉軍を捉えました。
─１時間前、午後１５時頃─
─長尾時長、側近、─
「時長様、敵に包囲されました！
このままでは全滅します！
何か手段はありませんか？」
「ある！今回の計画は全て俺の責任だ！
伝令！兄上(長尾憲長)に伝えろ！
我らが殿軍となる故、田波目城に向かわれよ！以上だ！」
伝令が長尾憲長の部隊目指して走りました。
「時長様！なるほど！
２日前まで布陣していた田波目城なら対岸に渡れば方角が解ります。
対岸は２日前の戦場です。憲長様の兵士達には見覚えがある道のはずです。
迷わずに田波目城に向かえます！」
「そうだ、２日前にも兄上達は勝ったと思って追撃していた場所だろう。
退却した道なら覚えているだろう。
しかし、…！？
あぁー！そうか！？
２日前も似た様な追撃してたら、逆襲されて負けたんだよなぁ？
立花家は何でそんな派手な逆襲が出来るんだ？……２度もやられたんだな？」
時長は気を取り直し、叫びます。
「我らは殿軍を引き受けた！
我が主君、上杉英房様を守る為に命を捧げるぞ！掛かれー！」
長尾時長の軍勢は包囲する立花軍の中で最大兵力の花澤勢２０００に突撃を敢行します。
「怯むなー！密集しろー！」
─１時間前１５時頃─
─上杉英房、長尾憲長─
柏原城から立花義秀の軍勢を追撃中、黄金の甲冑の武将を見掛けた兵士達は立花義秀だと思い込み、必死に追撃していました。
稲荷山砦付近まで到達した時に突然、多数の空馬が突入してきました。
稲荷山砦の主将、諏訪頼宗が松千代から託された策でした。
空馬二頭に５間(９メートル)の縄を胴回りに縛り、尻を叩いて放馬します。
馬は驚いて走り出します。二頭が並走すると縄が張られ、３メートル幅の縄の間に入った兵士を薙ぎ倒して混乱を招きます。
諏訪頼宗は空馬２５組、５０頭の空馬を放ち、長尾憲長の軍勢が大混乱になりました。
馬が通過した道に数百名の兵士達が倒されました。
さらに埋伏していた伏兵が現れ、包囲される形になりました。
「うぉーぉー！」
「わぁーぁー！」
「囲めー！潰せー！」
周囲から包囲に掛かる立花軍に長尾憲長指揮下の軍勢はたちまち崩れました。
「入間川を渡れー！」
「北へ逃げろー！」
指揮官達が叫びます。
「婿殿、図られた！伏兵を隠しておったか！」
「義父上、退却しましょう。
包囲される前に切り抜けましょう！」
退却を始めた憲長率いる軍勢に長尾時長の伝令が追い付きました。
時長から殿軍を引き受ける事。
入間川を渡り、田波目城を目指せ！と伝言を伝えました。
「馬鹿者！生きて戻れ！！
時長にそう伝えろ！」
伝令の使者は一礼すると立ち去りました。
弟、時長との別れになるかも知れません。
憲長は気持ちを切り替えました。
なんとしてもまず、当主、上杉英房を無事に田波目城まで生還させねばなりません。
「生き抜くぞー！」
「死ぬ気で蹴散らせー！」
「諦めるなぁー！！」
憲長は兵士達と自分自身に言い聞かせる様に鼓舞しました。
─立花家、稲荷山砦─
─松千代、諏訪義宗─
出撃した諏訪頼宗は松千代の側に弟の義宗を付けていました。
「義宗おじさん、前橋上杉軍は田波目城へ逃げたいはずだょ。２日前に通った道だから知ってる道から帰りたいでしょ？
香月勢を砦の西から入間川を渡らせて対岸で壁になり、下流に追い込む様に伝えて！」
「はい、松千代様、直ぐに伝令を走らせます！」
「それからね、鹿島の政家おじさんに、伝令お願い！川越方面に追い込め！
それだけ宜しくね！」
「はい、鹿島様に伝令を出します！」
何故、敵の軍勢を川越方面に追い込むのか？
義宗は怪訝な顔を見せました。
「義宗おじさん、前橋上杉軍が田波目城へ逃げたら面倒だからね、川越城に纏めて追い込んで退治する方が効率高いでしょ？」
「なるほど！私にも理解出来ました！」
松千代からの伝令が香月勢に届きました。
「なるほど！川越方面に追い込む！
纏めて退治するお考えの様だ。」
香月久則は直ぐに理解しました。
直ちに稲荷山砦を西へ迂回、入間川対岸に渡り、三田勢と合流、三田綱秀に松千代の考えを伝えました。
「なるほど！川越に纏めてしまうのか？
面白そうだ！」
三田綱秀も直ぐに理解します。
さらに鹿島政家に松千代の伝令が届きました。
「おぉ！なんと？川越に追い立て、纏めて退治するおつもりだな？
ぐふふふ！松千代様は冷静だな？」
「下流に追い立てるぞ！
敵を川越方面に追い込めー！
東に追い立てろー！」
前橋上杉軍は入間川を渡り、田波目城を目指して退却を試みます。
立花軍は単純に追撃する部隊、川越方面に追い立てる部隊、対岸で待ち構える部隊に別れました。
─立花家、稲荷山砦─
─松千代、諏訪義宗─
義宗が疑問に感じて質問をします。
「松千代様、全部隊に川越城方面に追い込め！と指示したら如何でしょう？」
「必要無しだよ。前橋上杉軍が７０００、田波目城に向かうのが、半分、川越城に向かうのが半分なら？
田波目城にたどり着くのは、最大２０００として川越城にも最大２０００なら？
もう、疲労困憊の軍勢は戦力としての存在は無いに等しいでしょ？
指揮官と兵士がはぐれて再編成に時間掛かるし、戦う気力も残らないだろうね。
分散させるのが目的、先ほど伝令をお願いした時に全てを説明しても、頭ごちゃごちゃになるから、説明を省略したんだよ。
きゃはははは！」
「はぁぁー！その様な、深い思慮とは知らず、恐れいりました！」
「でもねー。これからの後始末をどーするか？
結構難しいょ。
川越城をどーするか？
お爺に頑張ってもらわなきゃねー。」
稲荷山砦の諏訪家の家臣達は松千代の活躍する姿を見て、立花家の当主になる頃、どれほど立花家が大きく飛躍しているのか？
想像もつきませんでした。
─立花家、的場陣地─
午前１１時過ぎ、川越上杉家の軍勢５０００は２倍半の兵力で的場陣地を攻撃しました。
陣地の主将、髙梨勢２０００は柏原城の本陣に救援を求め、立花義秀が４０００を率いて援軍に駆けつけました。
義秀の軍勢が現れると、川越上杉軍は戦いが不利になり、河川敷の周囲に火を放ち、東から西に吹く風を利用して抵抗しました。広範囲に火を放ち、的場陣地一帯が火に包まれ、風下の立花軍は一時苦戦します。
陣地は火に焼かれてしまいましたが、立花軍は陣地から離れ、逆襲に転じ撃退します。
川越上杉軍は川越城方面に撤退しました。
戦いが終わり、戦場の後始末をしていた夕刻、三田綱秀からの伝令が到着、稲荷山砦付近にて釣り野伏せに成功。前橋上杉軍を追撃中との知らせを受けました。
後始末を髙梨勢に任せて義秀は軍勢を率いて入間川沿いに南下しました。
暫くすると遥か先に入間川沿いにの道を退却する前橋上杉軍の姿が見えます。背後には追撃する立花軍が見えました。
その時、義秀の元へ三田綱秀からの伝令の使者が到着しました。松千代からの指示で敗走する敵の半数を入間川を渡らせ、残る半数を川越方面に追い立てる分断を図っていると知らされました。
「ぶはははは！
松千代は面白い事を考えたな？
敵を分断するとは！
ぐはははは！」
義秀は長く伸びた行軍中の隊列を入間川河川敷に展開、軍勢を整列して前橋上杉軍が接近するのを待ちました。
敗走する前橋上杉軍は厳しい追撃を受けました。田波目城方面を目指しますが、立花軍が立ちはだかります。
分断されて半数は川越城に追い立てられます。
追伸、ラストの義秀の軍勢が前橋上杉軍を攻撃する部分をカット、修正しましました。
