１５４６年(天文１５年)４月２１日、前橋上杉軍、川越上杉軍の軍勢が反撃、立花義秀の命を狙います！
前橋上杉軍と川越上杉軍が反撃を開始します。
百済神社の神様が松千代にお告げを託します。
松千代には何か対策が有る様ですが……
果たして……
１５４６年(天文１５年)４月 ２１日
─午前１０時頃、立花義秀本陣、柏原城─
高萩に布陣している三田綱秀から前橋上杉軍７０００が坂戸から川越城に向かうと知らせが入りました。
坂戸を通る事で前橋上杉軍は立花軍を恐れて遠回りに川越城へ向かう様子に見えます。
前橋上杉軍と川越上杉軍が合流して軍勢を動かすのは昼過ぎと思われました。
やがて今福城で戦いが始まったと知らせが入りました。更に川越城から今福城に援軍２０００が向かったと情報が入ります。
次に川越城から立花軍の的場陣地に５０００の軍勢が向かうと知らせが入りました。
的場陣地は川越城攻撃の準備の為の陣地で、髙梨勢２０００が配置されています。
５０００の軍勢に耐えられる守備力はありません。
─立花義秀、鹿島政家─
「政家！川越上杉家が随分強気だな？
これは午後には前橋上杉家の軍勢と合流する見込みがあるからだ！
柏原城に１０００を残す故、政家に後の指揮を任せる！
俺は４０００を率いて的場陣地の髙梨勢を救いに行くぞ！
状況次第で今福城攻めの福島勢６０００、それから鹿島政勝の軍勢２０００を柏原城に集めろ！
全ての判断を任せるから頼んだぞ！」
「殿、承知致しました！」
鹿島政家は時間との勝負になる気がしました。その為、反対せず、義秀の判断を受け入れました。
─立花軍、稲荷山砦─
─松千代、瀬沼信勝─
昨日まで柏原城に滞在していた松千代は柏原城の本陣から南に３キロの稲荷山砦に移りました。
柏原城は立花軍の本陣である為、数え歳６歳の幼児には騒がしくて居心地があまり良いとは言えません。邪魔に成らない為の配慮も有り、稲荷山砦に移動しました。
小高い山に築かれた稲荷山砦の景色は素晴らしく、清らかな湧き水が豊富で城に格上げしても良い環境にありました。
稲荷山砦から柏原城、今福城、さらには１２キロ離れた川越の町も眺める事が出来ます。
２人で景色を眺めています。
「信兄ぃー！お願いがあるよ。
高萩陣地の三田家の綱秀お爺に使いを出して欲しいのー！」
「はい、松千代様、お土産のおねだりでしょうかな？」
「ちがうょぉ、あのね、前橋上杉家の軍勢が坂戸から、向かってるから霞ヶ関辺りを警戒して欲しいの！
今ねぇ、雲の中から百済神社の神様が教えてくれたんだょ！」
「えぇーぇー！百済神社の神様がぁー？？
松千代様、私には見えませんが？？」
背後に控える松千代の美人侍女達４名には空を指して何やら見えている様です。
「きゃははは！信兄ぃー？見えてないのぉー？？」
「見えませんが、百済神社の神様のお告げが降りたなら至急三田綱秀殿に使いを出します！」
「三田の綱秀お爺には、敵が来たら釣り野伏せするから、戦わずに隠れる様に伝えてね！」
「はい、隠れる様に伝えます！」
「それから、お爺にも知らせるんだょ！
敵は柏原城目指して来るから準備するの！
柏原城は守りが弱いから稲荷山砦に集まりなさーい！
信兄ぃ、宜しく！」
「はい！すぐに知らせます！
三田綱秀殿と柏原城の殿様宛てに知らせます！」
瀬沼信勝が慌てて砦の主将、諏訪頼宗を通じて高萩陣地、柏原城に伝令の馬を走らせました。
「信兄ぃー！次はねぇ、小谷田陣地にあずけてる騎兵部隊６００騎と５間(９メートル)の長さの縄と空馬５０騎と弓矢たくさーん貰って来てー！」
「えぇーぇー！
松千代様？また戦に出るつもりですか？
殿様に叱られますよ？」
「信兄ぃー！行かないなら自分で行くから、信兄ぃー！留守番でもしてなさーい！
侍女達と小谷田陣地に行くぞぉー！」
「解りました！預けてる騎兵部隊６００騎と空馬５０騎と５間の縄と弓矢たくさーん！
貰ってくれば良いんですね？」
「きゃははは！信兄ぃ正解！
頼むねー！」
百済神社の神様のお告げから松千代は急に人使いが荒くなりました。(笑)
─松千代、稲荷山砦主将、諏訪頼宗─
「松千代様、百済神社の神様からお告げがあったと伺いました。
何かお手伝いする事がございますか？」
「はい、諏訪殿、貴方の祖先は信濃国の諏訪神社の大宮司一族ですね。
武蔵国、立川に諏訪神社が創建されるに際して信濃国から選ばれて、立川諏訪神社と任命された宮司一族を守る為にご先祖様は柴崎城を建てられましたね。
立川諏訪家は立花家に長く仕え、功績により川越上杉家との国境の宮寺城を任され、此度は稲荷山砦を任された。
大神様もご先祖様もお喜びになられてます。」
「はい、松千代様は良くご存知で、驚きました。」
「諏訪殿、貴方の背後に諏訪の大神様とご先祖様がご挨拶にいらっしゃるので、心よりご挨拶申し上げます。」
松千代が諏訪頼宗に頭を下げます。
松千代が諏訪の大神様とご先祖様が見えると宣言して周りの一同が驚きました。
「諏訪の大神様とご先祖様が？
ははーぁー！松千代様有り難き幸せにございます。」
「諏訪殿、頼みたい事があります。
百済神社の神様を通じて前橋上杉軍の野望が見えました。
先日の柏原城周辺の戦いに破れた前橋上杉軍は反撃に燃えています。
坂戸から川越城に向かう振りをして現在、進路を柏原城に向けて南下しています。
柏原城は川越上杉家が立花家の軍勢が南から攻める想定で築いています。
北からの攻撃に脆い構造の為、破棄して入間川の南へ撤収、敵の軍勢を稲荷山砦周辺に引き込み、包囲して潰したいと考えています。」
数え歳６歳の松千代が普段と違う大人の言葉で説明しています。
その場に控える側近や松千代の美人侍女でさえ驚きました。
「諏訪殿、薩摩の軍法に釣り野伏せ、と名が付いた戦い方があります。
立花家の軍事教練でもご存知かと思われます。敵に仕掛けるのはこの戦法です。」
「はい！解りました！
松千代様、その為に小谷田陣地に瀬沼信勝を派遣して騎馬隊を集めさせたのですね？
松千代様、殿様は４０００を率いて柏原城から的場陣地に出撃なさいました。
柏原城に残るのは鹿島政家様の １０００だけになりました。
どの様になさいますか？」
「ならば、柏原城、鹿島の政家叔父様に松千代からの伝言を頼む！
百済神社の神様のお告げが有り、前橋上杉軍が坂戸から南下、柏原城を狙う故、兵力を稲荷山砦に結集、釣り野伏せの指揮を任せる！」
「はい、至急手配致します！」
「それから、諏訪殿、稲荷山砦の南東、南西に伏兵を３００ずつ配置、砦の正面には逆茂木を多数並べて下さい。」
「はい！直ぐに手配致します！」
「諏訪殿、松千代は疲れました。
百済神社の神様と諏訪の大神様に、貴方のご先祖様のお話しを聴きながら貴方と会話するのは非常に疲れました。
少し眠らせて頂きます。」
松千代は座ったまま、直ぐに眠ってしまいました。神様と諏訪家のご先祖の心の通信を聴きながら、不思議な能力を発揮しました。
美人侍女に抱き抱えられ、別室で休ませる事になりました。
松千代に新たな能力が？
神様とご先祖様からのメッセージを聞き取りながら、考えたり、会話したり……
不思議な同時通訳みたいな？
そんな能力があったら短時間で猛烈に疲れてしまうでしょう。
松千代の発した情報が高萩陣地、三田綱秀、柏原城、鹿島政家に伝わります。
戦いの行方は……？
