1546年(天文15年)4月20日、立花義秀の油断を松千代が救います!
油断している立花義秀に松千代が危機が迫る事を知らせます。
夢のお告げに頼らずに苦言と提案を示します。
1546年(天文15年)4月20日夕刻
捕虜交換を済ませ、立花義秀は軍勢7000を率いて柏原城に戻りました
─夕刻、柏原城、立花軍本陣─
─立花義秀、鹿島政家─
「殿、お帰りなさいませ、早馬にて知らされ、痛快至極にございます!
あの悪党、長尾憲長を捕虜交換交渉で痛烈に組伏せたと聞きました。」
「ぐはははは!彼奴らは前橋上杉家に綸旨を頂いていたと家中に嘘を広めておったのだ、今回の交渉で嘘を論破してやった!
捕虜達に真実を知らせてやったからな、長尾憲長の立場は苦しくなったはずだ!
そうだ、お主の嫡男、政勝も随分捕虜達と語り合い、親睦を深めておったぞ、なかなか、役に立っておった!」
「はい!息子には良い経験を積ませて頂きました。感謝申し上げます。」
その時、スタスタと近付く松千代。
美人侍女4名が軍装して従います。
「お爺ぃー!お帰りー!」
「おぉー!松千代、帰ったぞ!」
松千代を抱き締める義秀に笑みが溢れます。
「お爺ぃー!あのねぇ、長尾憲長はさぁ、悪党なんでしょ?山根城からさぁ、川越城に向かうんじゃないの?
悔しいから挽回する事考えるでしょ?」
捕虜交換交渉が思い通りに進み、前橋上杉軍と一時的な停戦の運びとなりましたが、長尾憲長を舐め切ってる自分の気持ちに気がつきました。
「政家!地図を見せろ!」
鹿島政家が川越城周辺の地図を広げます。
田波目城から交渉の結果前橋上杉軍を移動させた山根城があります。
山根城から東に街道が伸びて川越城に至ります。敵を一歩下がらせた事が裏目に出るかもしれません。
「やばいぞ!長尾憲長の奴が東に伸びる街道から川越城に向かったら、面倒だぞ!
松千代!よくぞ教えてくれた!」
「殿、前橋上杉軍が川越城に来る前に川越城の南にある今福城を落とさねばなりません!」
「それならば明日、今福城を攻撃するぞ!
福島正義を主将に福島勢、花澤勢、髙梨勢を合わせて6000、難波田城の義國の軍勢に支援させろ!」
「はい、手配致します!」
「お爺ぃー!川越城を攻める理由は朝廷から関東静謐と民の安寧の為に綸旨を与えられて、朝廷に敵対する古河公方、足利家、関東管領、前橋上杉家に従う川越上杉家を征伐するんでしょ?
朝廷に歯向かう賊軍を征伐するんでしょ?
立花家は錦の御旗を掲げる官軍でしょ?
高札とか、紙芝居を使って宣伝するのが良いんじゃないの?
宣伝が足りて無いよー。」
「おぉー!松千代!そうだ!
宣伝が足りて無かったな?
政家!高札を川越上杉家の領内に多数掲げるのだ!文面は任せる!
紙芝居も、川越上杉家領内で広めるのだ!
寺院、神社に避難している民に立花家の正統性を宣伝せよ!」
「はい、高札と紙芝居の手配を致します!」
「お爺ぃー!それからねぇ、朝廷に従い、立花家に仕官を希望する者を受け入れる!
身分を問わず、武士、農民、商人、職人から受け入れるの!
立花家の民になりたい村を募るの!
立花家の村になったら今年は年貢を免除!
希望した村に立花家の領地だと示す看板を建てるの!」
「ぶはははは!政家!
松千代は凄い軍師だな?
身分を問わず仕官を受け入れる!
村が立花家に所属を希望したら受け入れる!
手配頼むぞ!」
「はい、手配致します!」
「お爺ぃー!、川越上杉家は年貢がきつくて村は貧乏だよ!
戦いが終わったら川越の各農村に米を30俵与える約束したでしょう?
先に与えるの!
面倒でも与えるの!」
「松千代?面倒だぞ!
米を手配する政家が更に忙しくなるぞ!」
「お爺、年貢が重くて困ってるから、お米で村人助かるでしょ?
もしも川越上杉家の軍勢がお米を奪ったらどーなる?
川越上杉家の兵士の大半が徴兵された農民なんだから、兵士の気持ちが上杉家から離れるよね?」
「おぉー!そうだな?
政家?米配りも頼めるか?」
「殿、米配りも致しましょう!
農民の気持ちを掴みましょう!」
「ぐはははは!政家、政勝と協力して諸々の手配を頼む!」
「はい、お任せ下さい。」
「お爺は丸投げの名人だね?」
「ぶはははは!その通りだな?
わかってるぞ!政家にもっと感謝しろって言いたいのだろ?」
「お爺が、長尾憲長を追いかけて、留守してたら政家おじさんが上杉家の軍勢に囲まれて危ないから助けに来たんだからねー。」
「解った!解った!
松千代が俺の一番大事な右腕の政家を救ってくれた英雄だ!」
「だから、お爺、政家おじさんを大事にしなさいね。居なくなったらお爺は何も出来ないかもしれないよ?
丸投げ出来なくなるよー。
きゃははははー!」
「政家、松千代に俺の宝物は松千代だけで無い事を教えられたぞ!
俺の大事な宝物は二つ有る!
それは鹿島政家という大事な宝物だ!
これからも頼むぞ!」
「殿!松千代様!
有り難き幸せ、過分なお言葉に御座います。
私の命の恩人は松千代様に御座います!
あの日、松千代様の救援が無ければ命を失っていました。」
鹿島政家の目から涙が溢れます。
「政家おじさん!大好きー!
これからも、お爺を宜しくお願いしまーす。
二人で仲良く長生きしてねー。」
笑顔の松千代に癒される立花義秀、鹿島政家の目から涙が滲みました。
松千代が丸投げばかりの義秀に鹿島政家がどれだけ大切な存在なのか、考えさせました。
さて、これから松千代が義秀に策を提案する機会が増えて来るかもしれません。




