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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)4月20日、立花義秀、長尾憲長、捕虜交換交渉へ!

立花義秀、長尾憲長が2年振りに対面、交渉する事になりますが……


1546年(天文15年)4月20日


─柏原城、立花軍本陣─


朗報が二つ届きました。

秩父からの勝利の報告と川越上杉家の難波田城の開城です。

秩父では越後上杉軍の援軍8000を加えた前橋上杉軍は19000の大軍が秩父藤田領に進攻するも劣勢な兵力で撃退、前橋上杉家、筆頭宿老、長尾憲長の弟、長尾秀長を捕らえ、切腹を偽装して出家させて確保していると驚きの成果が判明しました。

前橋上杉軍の捕虜400名、越後上杉軍の捕虜100名、多くの捕虜を確保した事が報告されました。

その報告に続いて難波田城の開城の知らせが届きました。

─立花義秀、鹿島政家─


「殿、朗報が続いておりますが、秩父は松千代様の夢のお告げに救われました。松千代様が伊集院忠久を指名なされて援軍の主将に決めましたが、報告では紙一重の危機を脱して勝利したとあります。

松千代様の夢のお告げがいつも有るとは限りません。

反省すべき処を後程検証する必要があるかと存じます。」


「そうだな、想定した以上に敵の兵力が大きかったな、昨日も俺が敵の策に嵌まり、百済神社に誘い込まれた隙を狙われ、留守を託したお主達に迷惑を掛けてしまった。

済まなかった。

松千代が援軍を引き連れて来なかったら、我が軍勢は大敗して小谷田陣地まで失っていただろう。危うかった!」


「殿、反省も必要ですが、難波田城を開城させた義國様宛てに今後の作戦指示をお願い致します。」


立花義秀は難波田城を確保した嫡男、義國へ伝令を派遣、開城に導いた難波田信春を讃え、川越城を東側、荒川方面から牽制する事を指示しました。


「さて、松千代の夢のお告げに従い、田波目城の前橋上杉家と捕虜交換の交渉をせねばならん。政家、用意は出来ておるか?

腹一杯食べさせたのか?」



「はい、前橋上杉家の捕虜は400名は豚汁と握りメシを腹一杯に喰わせてやりました。

立花家の考え方を伝え、大國魂神社の護符も数名に与え、困った時に護符を持って立花家を頼れば助ける事を伝えました。

福島正義の軍勢2000が護送準備を完了しております。」


「良し、それでは俺が田波目城に交渉に向かうぞ!政家、2000の軍勢を残す故、留守の指揮を任せる!

後学の為、お前の息子、政勝を連れて行くぞ!」


立花義秀は捕虜交換交渉の為、田波目城に向かいました。高萩陣地の花澤勢と合流すると6000の軍勢を率いて北へ移動します。

岡城付近に配置していた三田綱秀勢3000と合流、田波目城目指して9000の立花軍が進みます。


─前橋上杉軍、田波目城─


秩父から敗戦の悲報が田波目城に届いていました。総兵力19000の大軍で秩父藤田家領内に進攻しましたが、逆襲されて大敗したと知らせが入り、長尾憲長は自信満々の作戦が失敗した事に茫然としていました。


─上杉英房、長尾憲長─


「義父上、弟の秀長殿が切腹なさったとか、御悔やみ申し上げます。」


長尾憲長の片腕として信頼していた弟が降伏した兵士達の命と引き換えに切腹したと報告されました。

流石の長尾憲長もショックを受けていました。


「あぁ、婿殿気をつかわせたな……詳細は不明ながら勝てるはずが負けた事実は変わらぬ。

秩父藤田家が立花家と共に鉢形藤田領へ進攻するなら救援に行かねばならぬ。

しかし、鉢形方面に向かえば川越城は陥落するであろう。

難しいな…古河公方家の指図に従う以上、川越上杉家を見捨てる事も出来ず、煩わしいものだな?」


その時、立花軍が田波目城に向かって進軍中との知らせが入り、緊張が走りました。

更に岡城付近の三田勢3000が東に大きく迂回して田波目城に接近中と急報が入りました。

「まさか?川越城に向かわず、こちらに寄せて来るとは、迂闊であった!」


百済神社と岡城を占領中の三弟、長尾時長の軍勢3000は南に布陣していた三田勢に備えて離れた位置に布陣しています。

直ぐに呼び出しても間に合うのか?

500名の捕虜を抱えて敏速な行動は困難を極めます。

長尾憲長は非情な決断を下します。

「伝令!三弟、時長に伝えよ!

命令があり次第、捕虜を処刑する準備をしておけ!以上だ!」


伝令が百済神社方面に向かいました。


「義父上!捕虜の命だけは何とかなりませんか?」


「婿殿、これは駆引きだ!

最悪の場合に限り、最後の手段に使わせて貰うのだ!

良し!使者を使わすぞ!

立花家の武将に伝えろ!

攻撃するなら百済神社の宮司一族と関係者の全て500名の命は無いと思え!」


長尾憲長は使者に児玉政光を選び、交渉内容を伝え、強気の交渉を命じて出発させました。

児玉政光は立花家の軍勢に遭遇すると責任者との対面を求めました。

立花義秀は前橋上杉家を仕切る長尾憲長は必ず嫌味な交渉をしてくると考え、使者との交渉の席に捕虜の兵士を招く事を考えました。

捕虜の兵士から5名を選び、密かに交渉の席に立ち合わせました。


児玉政光は立花家当主自ら交渉に出てくるとは思いもよらず、動揺しますが、命じられた通りに田波目城を攻撃するなら百済神社の宮司一族や岡城の捕虜500名を処刑すると宣言しました。


卑劣な手段を聞いた捕虜から選ばれた5名の表情が暗くなりました。

長尾憲長の使者に対し、義秀は捕虜交換を提案します。百済神社の関係者500名と立花義秀の軍勢が確保した前橋上杉家の兵士400名の交換です。


児玉政光は田波目城を攻撃しない事を条件に捕虜交換を提案します。


─立花義秀、児玉政光─


「ならば、使者殿、立花家が田波目城を攻撃しない見返りに田波目城から退去して前橋に帰国して貰いたい。如何かな?」


「それは出来ません。田波目城を攻撃しないと約束する事、柏原城を川越上杉家に返還するなら百済神社の捕虜を交換します。



「なんと、使者殿?先ほどより条件を上乗せなされたな?

ならば、秩父の戦場にて前橋上杉家の将兵400名、越後上杉家の負傷した捕虜100名を預かっております。

返還して欲しいのなら誠意を見せて貰いましょう。前橋上杉家のご当主、上杉英房殿のご実家の越後上杉家の負傷兵を預かっておるのだ!

越後上杉家の後ろ楯を無くして構わぬなら好きになさるが良い!」


「なんと?秩父の戦場にてそんなに捕虜が?」


前橋上杉家の使者、児玉政光は動揺しました。


「使者殿、我が立花家は朝廷から綸旨を賜り関東静謐の為に働いております。

朝廷の意向に従わぬ古河公方、足利家、関東管領、前橋上杉家には昨年に懲戒の書状が下され、お叱りを受けた事を反省しておらぬ様子でありますな?

上総国、下総国、の侵略行為を止めず、朝廷に従わぬ逆徒を許してはならぬ故、朝敵として征伐する故、田波目城へお帰りなされ!

交渉は決裂!これより、田波目城を攻撃すると報告して参れ!


「お待ち下さい!主人に相談して参ります故、攻撃はお控え願います!」


「ならば使者殿、こちらは捕虜交換せずとも良い、田波目城攻撃まで、半刻(1時間)だけ猶予を与える!即刻立ち去れ!」


児玉政光は退去させられ、田波目城に戻りました。報告を受けた長尾憲長は危険を感じました。城内には川越上杉家の城兵が400、前橋上杉軍が4000、三弟の時長の軍勢を呼び出していますが、到着が遅れています。

立花軍は9000、城内に入りきれないので野戦になり、圧倒的に不利な状況です。


長尾憲長は自分が立花義秀と交渉するしか無いと悟りました。

立花義秀に使者を使わして来訪を告げると護衛20名を引き連れて立花義秀を訪ねました。


両者の対面は2年前の4月、岩槻太田家の領地を巡る和議交渉の時以来でした。

簡単な挨拶をした後、交渉が始まります。


─立花義秀、前橋上杉家、長尾憲長─


「長尾殿、昨年は朝廷から不始末をお叱りなさる書状が届いたはず、何故、朝廷から禁じられた古河公方家の侵略行為に加担するのか伺いたい!」


「何を言われても我が前橋上杉家は主家の古河公方家の指示に従い勤めを果たしただけに御座る。朝廷からの書状など知らぬ!」


「長尾殿、その書状を携えた朝廷の勅使殿は帰りに我が府中城を訪ねて前橋上杉家の当主、筆頭宿老に対面した話を伺っておるが、勅使に謝罪した事を忘れておる様かな?」


痛い処を突かれた憲長は言葉に詰まります。


「昨年の古河公方家は常陸国を侵略、朝廷から禁じられた事を忘れ、今年も下総国、上総国に侵略する蛮行を繰り返して恥ずかしく無い様だが、それに加担して前橋上杉家は秩父で大敗、昨日も我が軍と戦い、敗走する始末、そろそろ朝廷に恭順の態度を示すのは如何であろうか?

立花家は朝廷より綸旨を戴き、関東静謐、民の安寧の為、古河公方家、関東管領家の暴挙を鎮めよと帝の叡慮を拝しておる故、朝廷に恭順するなら仲介しても構わぬ、但し、恭順を拒否するなら、我が立花家は前橋上杉家を成敗せねばならぬ!

朝廷に恭順するか?

反旗を掲げて謀反人になるのか?

どちらかひとつ!選らんでもらうぞ!

さあ!どちらだ?」


「待たれよ!我が前橋上杉家は朝廷に逆らうつもりはございません。

主家、古河公方家の圧力に仕方無く、指示に従い、最低限の協力をしたに過ぎません。

今回もやむ無く従った次第にございます。」


「ぶはははは!ならばどーするんだ?

まず、百済神社の宮司一族と岡城の捕虜全員と、こちらに預かる捕虜交換に応じるか?

どうだ?」


「田波目城の攻撃をせず、柏原城に下がって貰えるなら、捕虜全員の交換に応じましょう。」

長尾憲長は義秀の威圧に押されながら必死に生意気な口振りで回答します。


「ここで、長尾殿に忠告する!

大名家の公式な交渉の席では、立花家は朝廷から従四位下、左近衛中将である。

前橋上杉家当主、上杉英房殿は代々、従五位下、兵部少輔(ひょうぶしょうゆう)であり、貴殿の主君の地位は四段も格下である!

言葉使いに注意なされよ!」


「はっ!ご無礼致しました。

ご無礼をお詫び申し上げます!」


関東管領家、前橋上杉家を仕切る最高権力者が立花義秀の威圧感には敵わず、圧倒されてしまいました。

それからの交渉は義秀の思い通りの展開になりました。


①百済神社宮司一族及び岡城の捕虜と立花家に捕らわれた前橋上杉軍の捕虜全員の交換が成立。

②立花軍は田波目城を攻撃しない。

③前橋上杉軍4000は田波目城から北に1里(4キロ)の山根城に移動する。

④百済神社一帯、岡城一帯の支配地域から前橋上杉軍3000は山根城に移動する。

⑤立花家と前橋上杉家は睨み合いを演じて事実上の停戦とする。

⑥立花軍は田波目城付近から撤収、互いに田波目城に接近しない事。

⑦秩父の捕虜交換については後日、互いに誠意を持って対応する。


以上、義秀が主導権を握り、立花家に有利な条件で交渉が纏まりました。


朝廷に恭順するか?反旗を掲げるか?

選択を迫った辺りが交渉の切り札になりました。一部始終を前橋上杉家の捕虜から選んだ5名が間近で見学していました。

彼らのクチコミが前橋上杉家の中に浸透するとどの様な科学反応が起きるでしょうか?

今の時点では何もわかりませんが、強権で取り仕切る長尾憲長と、長尾一族の権力基盤に小さな亀裂の芽を植えた様です。



田波目城付近にて百済神社宮司一族と岡城の捕虜、前橋上杉家の捕虜を交換しました。

百済神社は社領が回復しました。

前橋上杉軍は4キロ北の山根城一帯に移動しました。

これで、川越城から離れた地域に後退した事により戦意が落ちて、田植えの時期が迫り、農民から徴発された兵士達が帰国したがります。やがて帰国が早まると義秀は見込んでいました。


立花義秀は三田勢と合流して柏原城へ帰還しました。







立花義秀の策に嵌まり、前橋上杉家の最高権力者、長尾憲長は主導権を握れぬまま、交渉が終わりました。


次は、川越城を廻る戦いになりそうです。

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