1546年(天文15年)4月19日夕刻、反転攻勢の立花軍は柏原城攻略を目指します!
反撃する立花軍は鹿島政家の判断で柏原城攻略に兵力を集中します。
1546年(天文15年)4月19日夕刻~
川越上杉家の軍勢は松千代が率いて来た軍勢に逆襲を受けて川越城方面と柏原城方面に別れて退却します。
厳しい追撃に死傷者続出、立花軍は多数の捕虜を確保しました。
前橋上杉軍は田波目城を目指し退却します。
立花軍の反撃を受けて早々に退却した為、犠牲者は比較的に少なく済みました。
立花軍は鹿島政家の指揮に従い、川越城へ逃げる軍勢の追撃を停止、目標を柏原城攻略に切り替え、兵力を集中しました。
─松千代、鹿島政家─
「政家おじ様、無事でよかったー!」
駆けつけて政家の胸に飛び込みます。
抱きしめながら、数え6歳の幼児に微笑みながら感謝の気持ちを伝えます。
「松千代様!有り難うございます!
松千代様が援軍を率いて現れねば、我が軍勢は全滅、大敗しておりました。
松千代様に多くの兵士を救って頂きました!」
周囲の兵士達は膝を付いて松千代に敬意を表します。兵士達から自然に声が上がります。
「松千代様万歳!
松千代様万歳!
松千代様万歳!」
「エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!」
「政家おじ様?柏原城はねぇ、篝火たくさんで周りを明るくするの!
夜までに落としたら戦いが有利になるよぉ!
がんばれば出来るよー!」
「はい!松千代様、その通りに致します!
皆の者!松千代様が柏原城を攻略すれば運気が上がると仰せになった!篝火を掲げて柏原城を攻略するぞ!」
「おぉー!」
兵士達が元気に答えました。
一方、立花義秀の軍勢5000は岡城から引き返し、稲荷山砦を目指していました。
騎馬100騎を先行させて状況を探りながら進みました。
やがて、状況が判明します。
稲荷山周辺で、前橋上杉軍、川越上杉軍が稲荷山砦周辺に合流、凡そ2倍の敵軍に攻撃されて立花軍が大敗、退却中に松千代が率いる軍勢が現れ逆転勝利して追撃中と判明しました。
─立花義秀、近習─
「なんと?松千代が?
府中から軍勢を率いて来ただと?
動員可能な軍勢など、残ってないはず、予備役の兵士でもかき集めたのか??」
「殿?松千代様なら有り得ます。
2年前に殿様の軍勢が下総国で太田家の反乱に巻き込まれ、古河公方軍に包囲された時に松千代様が府中から2万の大軍を率いて現れ、全滅の危機から救って下さいました。きっと知恵を絞り軍勢を集めたのでございます。」
「ぶはははは!、そうだったな?
松千代が来てくれなかったら全滅していただろう。ぶはははは!すごい孫だな?
今回も松千代に救われた!
松千代は立花家の至宝だぞ!」
「はい!松千代様に数多くの将兵の命を救って戴きました!
大國魂神社の大神様だけでなく秩父の神々にも愛され、我が立花家の兵士達は松千代様を神の子と信じています!」
先行させた騎馬隊からもたらされた情報により、立花義秀の軍勢5000は稲荷山砦の北3キロ先の柏原城に向かう事になりました。
途中にて前橋上杉軍の一軍と遭遇、稲荷山砦付近の戦いに敗れ、田波目城を目指して退却する200程の部隊と戦闘になり、壊滅させると100名を捕虜にしました。
確保した捕虜は後に百済神社を占拠した前橋上杉軍との捕虜交換交渉に使う事が可能と見られます。
やがて20時過ぎ、立花義秀の軍勢は柏原城付近に到着、鹿島政家が義秀の元に松千代を連れて現れます。
─立花義秀、鹿島政家、松千代─
「お爺ぃー!大神様が教えてくれたから、お馬さんと兵士達にお願いして援軍に来たんだよー!」
義秀の腕に抱かれて微笑む松千代。
「聞いたぞぉー!松千代!偉いぞ!
政家が危ない処を助けたんだってなぁ!」
「殿!松千代様が府中から援軍を率いて来なければ私は討ち取られておりました。
命あるのは松千代様のお陰です!」
「そうか!凄いぞ、松千代!軍勢はどーやって集めたんだ?」
「あのねぇ、それはね、留守居役の瀬沼のおじさん(瀬沼寿勝)にお願いして騎馬隊300騎と近くのお城から20騎の弓名人を借りたらねぇ、600騎になったの、それで連れてきた空馬50頭に縄着けて、お尻叩いて暴れて貰ったら敵の兵隊さんがぁ、みーんな倒れたから、味方のみんなが勇気出して戦ったら勝ったんだよー!」
鹿島政家が補足説明をすると義秀は驚きました。
「何いぃー!松千代はたったの600騎だけで駆けつけて勝利に導いたのか?」
「違うよぉ、みんなが勇気出して一緒に戦ってくれたからだょー。
みんなが勇気だしたからぁ、みんなが勇者なんだよー!みんなー!ありがとーぉー!」
周囲で話を聞いた兵士達が泣いていました。
「松千代様ぁー!
有り難うございました!」
命を助けられた兵士達から口々に声が掛かります。鬨の声を挙げるぞー!と兵士が言い出しました。
鬨の声が上がります。
「エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!」
数千名の兵士から鬨の声が発生しました。
連鎖して周囲の立花家の兵士達が腹から声を挙げると柏原城を守る川越上杉軍の兵士達に恐怖が芽生え、闇に紛れて逃亡が始まりました。
柏原城は北側の方角だけ開けて包囲されています。城兵達はそれに気が付き、今なら逃げ切れると思い逃亡が続出しました。
やがて逃亡が相次ぎ、城主の広沢政弘は支え切れぬと判断、川越城に退却を開始しました。
退避する城兵に代わり、立花家の軍勢が城内を確保します。立花家の軍旗が風に揺られ、柏原城は大きな損傷が無いまま攻略されました。
「エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!
エイ!エイ!おぉーぉー!」
立花家の軍勢が一斉に鬨の声を挙げて勝利を祝いました。
稲荷山砦周辺の戦いは波乱の結果になりました。
さて、立花義秀は川越城攻略に向かうのか?
それとも田波目城に退却した前橋上杉勢攻略に向かうのでしょうか?




