表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

215/409

1546年(天文15年)4月19日、長尾憲長の策謀

作品中の百済神社はモデルに設定した神社の実名を避け、配慮させて頂きました。

1546年(天文15年)4月19日


田波目城に到着した前橋上杉家の支配者、長尾憲長は川越上杉家と連絡を取り、周辺の情報を集めました。

川越城の西南の要、柏原城の3キロ先に立花家が砦を築き始めたと聞きつけ、地図と川越上杉家の軍勢の配置、立花家の軍勢の配置を確認すると打開策が浮かびました。


田波目城の隣接地に百済(くだら)神社があります。

立花家の同盟大名、三田家の領地、日高地区の中に広大な社領を持っています。

太古の昔、朝鮮半島から渡来した百済王家一族に朝廷が与えた土地です。

周辺に定住して以来、地域の尊敬を集める由緒ある神社です。朝廷より、守護不入の特権が与えられています。

三田家は川越上杉家との国境の緩衝地帯として百済神社の社領を大切に保護していました。長尾憲長は百済神社の社領を守る岡城を包囲する事で立花軍を分散させる事を考えました。


前橋上杉軍が田波目城に着陣すると、青梅勝沼城から三田綱秀が1000を率いて飯能城に入り国境の警戒を強化していました。

前橋上杉軍は突然、百済神社の社領に侵入すると宮司一族や神職者を拘束して、社領を守る岡城を包囲しました。

長尾憲長は三弟の長尾時長に3000の兵力を任せて策を授け、残る5000の兵力を率いて東に転進、柏原城方面に向かいました。



前橋上杉軍本隊5000が東に向かった事を知らずに三田綱秀の軍勢と合流した立花義秀の軍勢は岡城を目指しました。


三田綱秀勢1000、立花義秀7000、合計8000の軍勢は岡城付近に迫り、周囲の情報を集めました。


岡城は降伏、百済神社の宮司、神職一族が人質になった事が判明しました。

百済神社の社領一帯は前橋上杉軍に制圧され、岡城の先にどれだけの兵力が存在するのか斥候部隊、間者達も把握出来ません。


すると前橋上杉軍から使者が訪れました。

使者曰く、百済神社宮司、神職一族数200名、岡城兵士300を捕縛している。

人質の命を助けて欲しいなら、立花家が普請中の稲荷山砦の破棄、入間小谷田陣地、新座大和田陣地の破棄と陣地からの撤退を要求、さらに5万貫(50億円)の金まで要求してきました。

要求に答えぬなら、人質を一刻(2時間)に10名ずつ処刑すると通告して来ました。


「ぶはははは!使者殿?百済神社は帝から授けられた土地に赴任なされた百済の王孫の方々が苦労なされて切り開いた土地である。

帝、朝廷は武蔵国守護職、歴代武蔵国国司に百済神社の社領は神領に付き、永代守護不入と通達されておる。

つまり、武力を用いて神領に入るならば朝敵、賊軍となる事を関東管領職の前橋上杉家が知らぬとは言わせぬぞ!帝、朝廷からの怒りは必定!

前橋上杉家は上野国守護職の剥奪は確実となろうぞ!

この事実はすぐに朝廷に報告するから覚悟しておけ!さらには前橋上杉家は越後守護職、越後上杉家から援軍を頂き侵略行為に及んでおる故、朝廷にご報告する!

越後上杉家の越後守護職も剥奪になっても良いなら好きにすれば良い!

我が立花家は朝廷より綸旨を下され、関東静謐の為に官軍として行動しているのだ、戦うなら正々堂々と戦え!

間も無く、こちらから攻撃を開始する!!

命が惜しいならさっさと人質を解放して立ち去れー!」


珍しく怒りを使者に叩きつけた義秀に前橋上杉家の使者は突然の罵声と正論に圧倒され、ひたすら平伏すると、主人に伝えると答えて去りました。


─立花義秀、三田綱秀─


「立花殿、有り難うございます。

傲慢な態度の使者が怯えて小さくなっておりましたな?痛快至極、楽しゅうございました。」


「ぶはははは!、敵の考えた人質策など、守護不入!帝、朝廷の名を借りて脅した効果はあるだろう。こちらから使者を出して探りを入れましょう。」


義秀は更々と書状を書き上げると使者を前橋上杉軍が布陣する岡城に向かわせました。


使者は岡城に書状を届けてから随分待たされました。どうやら立花義秀に論破され、対応に困ってる様子でした。


やがて、回答は明日にするからと、使者は返されました。


使者が戻ると立花義秀は使者に敵陣の様子を尋ねます。長尾憲長に対面を求めたが、多忙で会えないと却下され、三弟の長尾時長なら会えると言われたが、会えずに帰された事がわかりました。


─立花義秀、三田綱秀─


「やられた!長尾憲長の弟が居るのに使者に会えないのは長尾憲長は不在だから対応策を確認するのに時間が必要だからだ!

百済神社を制圧した後、弟に後を任せて稲荷山砦に向かったに違いない!」


「立花殿!急ぎ稲荷山砦に向かってくだされ!

我らの事は気になさらず!」


「三田殿、2000の兵士を預けます。

後を託して我らは稲荷山砦に向かいます!」


即断即決、立花義秀は5000の兵士と稲荷山砦に向かいます。





百済神社と岡城を制圧した長尾時長から人質を盾に突きつけた要求に立花義秀が見事に論破しました。

しかし、長尾憲長の策は別の処にありました。

さて、長尾憲長の意図はどこに……?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ