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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)4月19日、岡本政國の深謀!

岡本政國が次々に売った手が長尾秀長の軍勢を無力化する事に成功します。

1546年(天文15年)4月19日


─早暁、秩父国神砦周辺─


前橋上杉家、長尾秀長の軍勢は岡本政國が仕掛けた策に嵌まり、同士討ちになり、多数その死傷者を出しました。後片付けに時間を取られ、疲労と空腹が増幅した頃に更なる災難に遭遇しました。


無防備の荒川河川敷側から夜襲を受けた長尾勢が混乱、そこに国神砦から立花家の軍勢が繰り出し、挟撃を受けて窮地に立たされます。長尾秀長は伊集院勢を切り抜け、荒川下流の天神山城を目指して突破を試みました。


「諦めるなー!離れず固まれー!」

長尾秀長は将兵を鼓舞して伊集院勢の中に突入します。

伊集院勢は死兵となった長尾勢に道を開き、荒川河川敷に導きました。

死に物狂いの敵と戦えば死傷者が多数出ます。荒川下流へ逃がし、背後を追撃する事を選択しました。


長尾勢は荒川土手を下り河川敷に向かいますが、数万年も荒川が削った崖下は緩やかではありません。

慌てて転び負傷者が続出、河川敷から下流を目指しますが足元は砂と砂利、石や大きな岩が邪魔になります。

河川敷には2000~3000の長尾勢が溢れ、背後から崖上から弓矢の雨が降り注ぎます。


長尾秀長は対岸に待ち構える秩父防衛隊の存在を知りませんでした。

背後から夜襲してきた伊集院勢を振り切れば助かると考えていました。


先ほど対岸に引き上げた秩父防衛隊1000の部隊は200メートル程下流に移動して待機していました。指揮官、富岡久満は挟撃された長尾勢が荒川沿いに退却すると予想して待機していました。


やがて長尾勢が接近します。

「今だ!放てぇー!」

富岡久満は対岸から弓矢と石礫の攻撃を命じます。ここは最深部の水深が胸まであります。敵の反撃の心配がありません。

秩父の庶民達が鍛えた弓矢、投石の技量を存分に発揮します。

「秩父の神々の神罰を受けよ!」

久満が叫びます。


対岸20メートルから30メートル離れた距離から横撃を開始しました。長尾勢の多数の兵士が倒れ、後続の兵士も逃げる側面から弓矢と石礫の餌食になります。


退却するスピードが緩み、さらに激しい横撃を喰らいます。

対岸の秩父防衛隊の兵士達は秩父を守る為に必死の攻撃を続けます。


後方には伊集院勢が追い付き、弓矢の連射が続きます。倒れた兵士を長槍で叩き、重傷を追わせます。

国神砦から出撃した岡本勢が崖上から先回りして河川敷の一部を開けて待ち構えます。

逃げ道を示して本気の反撃を避ける為です。

弓矢の餌食になりながら長尾勢は逃げ道に殺到しました。


長尾勢は20キロ程の甲冑を着て岩場だらけの河川敷を退却しています。

数時間前の同士討ちの戦いから空腹、寝不足、疲労が溜まり、絶望的状況になりました。



─岡本政國、側近─

「もう、良いだろう。

降伏を促せ!降れば故郷に生きて帰す!」


「はい!」


側近が長尾勢の前に進み大音声に叫びます。

「降れー!長尾勢の兵士達!降れば故郷に生きて帰す!降れー!」


周りの立花家の兵士達も呼び掛けます。

「降れー!降れば生きて故郷に生きて帰す!」


更に岡本政國が前に出て叫びます。

「秩父の神々に誓う!生きて帰す!

降る者は座れー!

秩父の神々に誓う!生きて帰す!

降る者は座れー!」


立花家の兵士達が政國の言葉を繰り返しました。やがて精魂尽き果てた兵士達が座り始め、しだいに多数の兵士達が降ります。

長尾秀長は周囲の兵士を励まし、戦う姿勢を見せますが、周囲の兵士達が座り始めました。

─長尾秀長、側近─


「殿、これまでにございます。

兵士達は限界でございます。」


「そうだな…負けた、完全に負けた!

敵より多数の兵力で有利に戦っていたはずが、岡本政國?知らぬ名前だな?

今まで最前線に出て来なかった武将に完敗だ…

さて、少しでも兵士を故郷に帰さなきゃならんよなぁ?

腹を切るから、お主に介錯を頼む!

首を岡本政國へ届けろ!

我が首を差し出す代わりに兵士達の命を助ける様に申し入れするのだ!」


覚悟を決め、腰を卸し、側近に介錯を命じ、短刀を手にした時でした。


「殿ぉー!お殿様ー!」

その時、岡本政國の軍勢に捕虜になっていた兵士が現れました。

「殿ぉー!お殿様!岡本政國が面会を求めております!」


「なんだと?面会だと?」

見覚えある兵士が現れ、彼は捕虜になっていましたが、伝言を託す為に解放されました。

切腹を覚悟していた時に不意に面会を申し込まれると、何故か敵将に会ってみたくなりました。


長尾秀長は周囲の兵士達に戦闘停止を命じると、案内を受けて側近2人を連れて岡本政國と対面しました。


─岡本政國、長尾秀長─


「長尾殿、間に合って良かった。

腹を召される寸前だったと聞きました。

邪魔立てした事をお詫び申し上げる。」


「まぁ、話しが有るそうだが、それを済ませたら腹を切るつもりだ!

今さら兄へ会わす顔が無いからな……」

長尾秀長の兄は前橋上杉家の筆頭宿老です。

当主、上杉英房の義理の父であり、前橋上杉家の最高権力者です。

屈辱的大敗したままでは帰れません。


「長尾殿、昨日から捕虜を預かっております。軽傷200、重傷100、さらに生首200程の後始末が有りす。是非、受け取りをお願いしたいのですが?

それに昨日の根古屋砦にも同じく多数の捕虜と生首が多数ありまして、推定600の捕虜と生首400をお返し致しますのでお受け取りを願いたいが如何ですかな?」


「岡本殿、捕虜の返還は有難いが、生首は困ります、今や長尾勢は完全に包囲され、兵士達は睡眠不足に空腹、疲労困憊で全員捕虜も同然の状態でござる。生首まで受け取る余裕がござらぬ。私が腹を切る故、兵士達は生きて国元に帰して貰いたい!」


「長尾殿、貴殿の軍勢を武装解除致します。

見返りに捕虜をお返しいたします。

生首は貴殿の軍勢に手伝って頂いて埋葬と供養をいたしましょう。

この秩父の土地は神々の聖地です。

これ以上戦いが続くのは望みません。

供養が済ませたら軍勢は根古屋から出牛を通り前橋上杉領へ帰還して頂きます。」


岡本政國の言葉を噛みしめ、秀長は頭を下げて答えます。

「岡本殿、承知致した。供養を済ませたら腹を切る故、我が兵士達の眠る場所に一緒に埋葬して頂けるだろうか?」


「長尾殿、死んだつもりで仏門に帰依しては如何でしょう?

国元へ生きて戻れぬ気持ちが判る故に申し上げます!秩父にて亡き将兵の供養をお願いします。重傷の兵士達は回復次第、国元へ帰還出来る様に配慮致します。

更には将来、立花家、前橋上杉家と和解が必要な時に橋渡しになって頂きたいと考えております。

今は堪え忍び、出家なされて未来の為に道を開かれては如何でしょうか?」


切腹せずに出家を勧められた事に驚く秀長、側近2人も驚きを隠せませんでした。

死を覚悟の会見で生きる事を勧められて動揺しています。


「少々側近と相談しても宜しいだろうか?」

戸惑う秀長に岡本政國は席を外し、相談する時間を与えました。

やがて、暫くして相談が纏まった様子に席に戻った政國へ長尾秀長は回答します。


「岡本殿、恥を忍び、世捨て人となりましょう。仏門に入り我が身が死に至らしめた将兵の魂を慰めて生きる事に致しました。

我が側近2人も出家したいと申しておりますが、お許し頂けるだろうか?」


「承知致しました。ご希望通りにいたしましょう。それでは、武装解除、戦場の片付け、埋葬が済みましたら兵士達は前橋上杉領に送り届けます。」


岡本政國の提案に従う事になり、長尾秀長は剃髪して出家しました。

側近2人は長尾秀長は切腹したと兵士達に伝え、武装解除、戦場の片付け、死者の埋葬を終えたら無事に帰国出来る事を説明しました。


戦場に残った長尾秀長の3000余りに減った軍勢は素直に従いました。

武器を手放すと、立花家、秩父藤田家の将兵と長尾秀長の軍勢が協力して戦場の死者を埋葬、供養しました。


敵味方が協力して戦場を片付け、死者を埋葬、供養の儀式までするなど前例が無いかもしれません。

正午過ぎには供養の儀式が終わり、食事が配られます、長尾勢が優先され握り飯が与えられました。

多数の兵士が1日半も空腹でしたから貪る様に食べました。

配られた握り飯は拳大の大きめの塩むすび、豚肉と(たけのこ)の炊き込み握り飯の2つ、さらに豚汁が配られます。

秩父藤田家や立花家の兵士達は日頃からこんなに旨い物を食べてるのか?

驚きながら味わいました。

敵なのに親切な扱いを受けた長尾勢の兵士達には自然に敵意が消えていました。

長尾秀長は自分達の命を救う為に切腹したと信じています。密かに出家した事を知りません。


食事を終えた長尾勢の兵士達は100名ずつ北に向かい、根古屋砦から出牛を経由して前橋上杉領へ向かいました。

出牛の先1キロを越えると前橋上杉領です。

前日に根古屋砦の戦いに破れた小幡勢と遭遇します。小幡景定の軍勢は多数の負傷者を出しましたが、反撃の為に再度出撃する支度をしていました。


しかし、長尾秀長の軍勢が武装解除されて御岳山城を目指して退却すると知りました。

長尾秀長が切腹した見返りに軍勢は武装解除され、甲冑も着けず、手ぶらの状態です。

3000余りの丸腰の軍勢は武器や甲冑が無ければ戦力にならず、武器や甲冑は直ぐに用意は出来ません。

郷里に向かう彼らを見逃すしかありません。

反撃に向かうはずの小幡勢の兵士達の士気が下がりました。


間も無く小幡勢の兵士達が御岳山城への撤収を願い出ました。

小幡景定は反撃を断念、御岳山城への撤収を始めました。


これらの様子は間者から岡本政國の陣営に知らされました。


─岡本政國、倉賀野尚之─


「岡本様、長尾勢の兵士に釣られて小幡勢までが御岳山城へ撤収しました。

手元に3000の兵力で小幡勢3000と長尾勢5000を撃退して領外に駆逐しました。鮮やかな手腕でございます。」


「いや、大勢の仲間に手伝って貰いながら、思い付いた策を繋げたら運に恵まれたに過ぎぬ、秩父防衛隊、伊集院勢、秩父藤田家や寺社、寺院の協力が結果に結んだ事が一番良かった。」


「岡本様、立花家の泥酔軍師、魔術師の立花将広様以外にも、立花家には凄い謙虚な魔術師が秩父におりました。(笑)」


笑顔の倉賀野尚之に対して、にんまりと笑みを見せる岡本政國……彼は先を見据えて次の段階を考えています。前橋上杉軍の攻勢が続きさましたが流れは守りから攻勢に移るべき状況になりそうです。軍勢の配置を攻撃態勢に替える事を考えていました。

倉賀野尚之は2年前、前橋上杉軍が八王子、滝山城に進攻した時の武将です。

青梅、入間の国境で三田家の軍勢と戦い、敗れて降伏、亡命して三田家に仕え、秩父近衛中将府に派遣されて岡本政國の側近として働いています。

岡本政國34歳、倉賀野尚之23歳、政國は尚之は将来有望な武将になると考えています。彼には旧主家、前橋上杉家との戦いになりますが、上野国、高崎の領主の家系です。

必ずその縁故が役に立つ時があると考えていました。


倉賀野尚之は亡命した青梅三田家では今井城主、来住野泰知、藤岡城主、諸岡和春に助けられ、友と呼べる仲間になりましたが、やはり、家中の家臣達から余所者の差別に悩まされました。環境を変えたくなり、秩父の近衛中将府への赴任を志願、希望が許されて赴任すると秩父には早く馴染み、岡本政國と出会い、側近として働く事になりました。












岡本政國が生首の受け取りを提案したのは駆け引きです。駆け引きに引き込み、長尾秀長を出家させて生かす事で長尾勢を静かに秩父藤田領から退去させる事に成功しました。

徹底的に戦えば、逃げ延びた長尾勢の武装した兵士が空腹を押さえきれず、民家や神社仏閣に押し入り乱暴する事が発生したに違いありません。視点を替えて冷静な判断で秩父に進攻した前橋上杉軍、小幡勢、長尾勢の8000が秩父から消えました。

秩父の戦いは次の展開へ向かいます。

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