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25,

 


 メリッサを抱えて馬車まで戻り、御者がドアを開けると沈んだ顔のジータが見えた。 その隣にメリッサを座らせ、思わぬ展開ではあったが、これでレオーネの第1戦目は何とか幕を閉じた。


「……レオ、後で逢いに来てくれる?」


「ああ、ちゃんと手当てしてもらえよ、ジータもな」


 レオーネは御者に「二人を頼む」、と言ってドアを閉めようとしたが、


「――レ、レオっ!」


「どうした?」


「……上着(これ)、もらっていい?」


 首元を隠すように上着を掴み、メリッサはよく分からないおねだりをしてくる。


「今年から記念祭で女は上着を欲しがるらしい……好きにしろ」


 ドアが閉まり、車内には複雑な関係性の二人が残される。 メリッサはダンテをどうも思っていなくても、ジータからすれば自分は婚約破棄の原因、更に言えば、それが無ければ今回の事件だって起こらなかった、そう考えてしまう。

 どう詫びようにも許されないだろうが、何も言わずにはいられなかった。


「メ、メリッサさ――っ……?」


 意を決して口を開いた時、頬にひんやりとした手が触れた。


「こんなに腫れて、私の為にすみません」


「………」


 逆に謝られてしまい、感極まったジータの瞳から溢れる。 その涙は頬を伝い、添えられた手を濡らす。


「レオの言ったように、私も悪いのです」


 ダンテを利用したメリッサ、ジータを騙したダンテ、それに流されたジータ。 事の大小はあれど、それぞれに犯した罪はあったのだ。


 ジータの背をさすりながら、メリッサは戦利品の上着に顔を埋めた。



「レオの初恋は……私……」






 ◆◇◆






 再戦の地、グレイターズガーデンに着いたレオーネは人混みに揉まれる。


「これは骨が折れそうだ」


 今日の賑わいは普段日の比ではない、この中からエルマを見つけるのは至難の業だろう。 だがそれは相手も同じ事。


「あいつの事だ、また曲芸師やらに夢中になってるところを仕留めればいい」


 後ろを取られない自信はある、レオーネは余裕の心持ちでエルマ探し始めた。 ―――が、



「……居ないな、まさかまだ来てないのか? それともファビオから何か策を……―――っ!」


 何かに気づいた様子のレオーネ、その目に映ったのは子供達に追いかけられるピエロの面。


「そうか、なるほどな」


 今日、グレイターズガーデンには子供達の遊び相手をするピエロが何人も放たれている。 それに意識を高めてみると、さっきからよく目に入るピエロが一人。 それも、徐々に自分へと距離を詰めているのがわかる。


「一般の仮面をしているとは限らない……て事だ。 あいつにしては考えたな」


 こちらが気づいたと悟られないように、レオーネはさり気なくそのピエロの容姿を確認する。 すると背丈、何より栗色の髪がエルマと一致した。


 そして遂に勝負の時、ピエロは子供に追いかけられたフリをしてレオーネの背に迫る。


「悪くなかったが、残念だったな」


 その台詞に一瞬ピエロは動きを止めてしまう、そしてレオーネは素早く振り返り―――


「今度もオレの勝ち……」


 ピエロの面を上にずらすと、そこには間違いなくエルマの顔があった。 だが、


「お前……その傷……」


 1度お仕置にエルマのおでこを弾いたのを思い出す。 その時には無かった傷、それも、それは明らかに古傷だった。



「―――私の勝ちね、レオーネ」



 その時、目の前に居る筈のエルマの声が背後から聞こえ、



「…………ど、どうなってる?」



 戸惑うレオーネの顔に、それを隠す仮面はもう無かった。




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