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今日はレイアとジータと三人で街に繰り出した。 色々あったし、ちょっと気晴らししたかったから。
「街中が飾り付けしてるわね、何かあるの?」
「うん、もうすぐ独立記念日のお祭りだから」
そのお祭りは王都を挙げての大きなお祭りで、平民も貴族も関係なく記念日を祝うらしい。
「子供はお面をして、大人は仮面を付ける。 それは身分を忘れて喜び合う為の風習なのよ」
「そうなんだ」
「子供達が仮面を取ろうとしてきてね、顔を見られた大人はお菓子をあげなきゃいけないの」
「へぇ、楽しそう」
ジータの説明を聞いて、頭の中に薄らと何かが浮かんだ。 そして、それは段々と形を成していって―――
「……これは、面白そうね」
「ど、どうしたのエルマ、怖いよ?」
じっとしてるのは性に合わない、クルホワイト家の血が騒ぐわ。 それに、
「――お祭りは大好きなのよ」
◆◇◆
「好きにやってくれ、遠慮はいらんぞ」
お祭りを明日に控えて、私達は以前連れて来てもらったファビオのお店にやって来た。
学生なのにもう経営してるなんて凄いわよね。 性格には難があるけど、実は優良物件だったのかも。 何よりレイアが気が合うみたいで良かった。
「な、なんかいつも悪い、ここ高そうだし……」
「何を言う、私は商人だぞ? これは先行投資だ」
またファビオが訳の分からない事を言い出した、と思っていたら、
「私の心は決まっている、レイア」
「は、はい」
「卒業したら私の……」
ちょ、ちょっと、いきなり何を始めてんの!?
こんな、私やジータも居るのに―――
「私の――――右腕になって欲しい」
………ナニソレ。
それは恋人に、というのでも、婚約の申し出でもなかった。
ダメだ、この男はやっぱりかなりズレてる。 ハラハラドキドキしたこっちがバカみたい、レイアだってさすがに呆れてるわよ。
「は、はいっ」
「――レイアちゃん!?」
「そうか、良かった」
何なの、これ何なのよ、もしかして私の方がズレてるのかしら。
「この二人はよく分からないわ、ねえジータ」
「え、ええ、そうね」
どうしたんだろう、なんか元気無いわね。
ジータの様子にレイアも気づいたみたいで、二人でどうしたのか聞いてみた。 すると、
「……ダンテと会ったの」
そうだとは思ったけど、やっぱり。
「ちゃんと話したかったし、心配だったから」
「そ、それで?」
「ええ……」
ジータは自分がメリッサ様に浮気を伝えたんじゃない、そうダンテに伝えた。 でも、ダンテの方はもうそんな事どうでもいい感じだったみたい。
「シュカワレ伯爵家はストレイロード公爵家に謝意を示す為、ダンテと縁を切り彼を追い出すみたい」
「そうなるだろうな、家を守る為には当然の選択だ」
頭の中では、ダンテを『風避け』と言っていたメリッサ様が思い浮かぶ。
「彼は明日王都を出るみたいだけど、あの時の様子が気になって……何か、おかしな事をしなければいいけど……」
ジータはレオーネが擁護してくれて、ダンテに騙された自分は難を逃れたと思っている。
本当は、少なくともメリッサ様に負い目を感じる必要は無いって伝えたいけど、それはレオーネを縛ってるのが自分だと気づく事に繋がるかもしれないし……。
「そ、そうだ、エルマがファビオに用事があるんだって」
「そうか、それは煩わしいな」
―――おい。
「それで、用事とは何だ?」
「ええ、ちょっとレオーネに伝えて欲しい事があるの」
「自分でやれ」
「――それが出来ないから頼んでるのよっ! 理由は聞かないで、いい? 言うわよ! 明日の……」
用件を伝えようとした時、個室の扉が開き誰かが入って来た。
「……な、なんで」
「どういう……こと?」
その人物を見て、レイアとジータは唇を震わせている。
「……まったく」
私も驚いたけど、こんな事になるかもな、とは思っていたから。 ただ、確信したのは―――
「皆、どうやらお別れね」
そして、
――――今度は私の勝ちよ、レオーネ――――




