18 二階の勤務
早朝勤務を終えて朝食を取ると、リーナはマーサの元に向かった。
「おはようございます」
「おはよう」
マーサはリーナに新しい仕事に関して説明し始めた。
「貴方の担当する仕事は大幅に見直されました。一階の仕事も全部なくなります」
「一階の仕事も?」
リーナは驚いた。
新しい仕事は一階でするものだと思っていた。
「もしかして地下ですか?」
「それは下働きの仕事です。今後は二階以上で仕事をして貰います」
「二階以上で?」
「すでに二階で働いているので問題ありません」
通常、召使いの仕事は一階からになる。
能力や経験を評価してより上階の仕事を任せる。
だが、リーナはすでに二階で勤務しており、出入りする許可も出ている。
そこで人手が足りない上階の仕事をさせることにした。
「二階以上の仕事は、侍女長あるいは侍女が上司になります。すぐに侍女長の元に行きなさい」
「はい」
「一人で行けますか?」
以前、マーサと共にリーナは侍女長の部屋に行ったことがある。
だが、しっかりと覚えてはいなかった。
「なんとなくはわかりますが、自信がありません」
「これからは、侍女長や侍女の部屋に行くことが多くなるでしょう。しっかりと覚えなさい」
「はい」
「今回だけは私が一緒に行きます」
「お手数をおかけして申し訳ありません。感謝致します」
リーナはマーサと共に侍女長の部屋に行った。
マーサは道案内だけで、部屋の中には入らずに戻ってしまった。
早速、侍女長から新しい仕事の説明がされる。
「新しい仕事は二階のトイレ掃除です」
トイレ掃除という部分は変更にはならなかった。
「まず、早朝の勤務はなくなります。前回のようなことが起きないよう通常の時間に掃除することにします」
「はい」
「召使いになると地上で仕事をします。これまでとは違う知識が必要なため、できるだけ早く身につけるように。一番重要なのは、出入りできる場所です」
召使いが出入りできる場所は、一階、二階、四階以上。
階段は例外だが、それ以外の三階部分には出入りできない。
三階には非常に重要な部屋が多くあるため、掃除は上級召使い・侍女見習い・侍女が行う。
勤務などの必要時だけ出入りするのが基本だと説明された。
「二階には多くの部屋がありますが、担当ではない部屋には入れません」
リーナは二階にあるトイレにしか出入りできない。
但し、担当する場所には廊下から直接入れないトイレもある。
早朝勤務で担当していた部屋がまさにそれだが、一旦部屋に入ってから付属するトイレに行かなければならない。
「部屋を通らなければ仕事場に行けないとしても、長居は無用です。家具に触れたり部屋の中を歩き回るようなことをしてはいけません。いいですね?」
「はい」
「後はメリーネから指示があります」
「では、別の部屋で説明をします。私と共に来なさい」
「はい」
リーナはメリーネと共に侍女長の部屋を退出して移動した。





