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NOISE  作者: 坂津狂鬼
31/66

盆休み-9

もう、作者にも展開が分からない。

バンッ!! と、乾いた銃声が会場全体に鳴り響いた。

俺の能力の介入により、大きく上に上げられた腕は、そのまま引き金を引いてしまったようだ。

幸い、天井から何かが落ちてくる事はない。

そして、悲鳴を上げる者もいない。

「・・・・・・・」

撃った奴は銃口が大きく逸れた事に驚き、俺は事態をじっくりと静観する事を決めた。

何故なら彼らの計画の始まりは、アリサさんの殺害からだと撃った奴の反応から確信したからだ。

事態は進展しないまま、3秒が過ぎ去ろうとしていた。

こちら側の【本命】が一斉検挙なら、もうそろそろ全ての下拵したごしらえが終わる頃だろう。

「【デリート】、だったかな?」

シキの声だった。最低限、アイツはこちらの【本命】を知っていたわけだ。

最近はアイツに振り回されっぱなしだと思う。

「お前らを捕まえて、拷問する。覚悟はいいか?」

シキの質問は単なる確認だった。無機質な、裏の世界の時の彼女の声がそれを物語っている。

「何で、【蒼い死神】が・・・・・・・?」

シキの登場は予想外だったのだろう。会場の中の誰かが思わず言っていた。

この勢いだと、彼らは【本命】を果たせそうにない。

まあ、俺の予想した程度のレベルだ。本当にそうなるとは限らない。

「嫌だ、と言ったら」

会場の中から、今度はしっかりと意思を持って誰かが言う。

っていうか、そんなの訊くまででもないだろ。

「燃やす」

シキの短い回答は俺の予想にぴったしと当てはまる。

なんせ、生物の生命力を操れる奴だ。殺してから、拷問のために生き返らせる事が出来る。

というかこの前、やらされてた。園塚に。

「ああ、逃げようとしても無駄だ」

シキの言った言葉は、会場の出入り口は一つしかないとか、今から一斉に燃やすとか、そういう事ではない。

暗に、俺に働けと言っているんだ。絶対に俺の能力が必要となる場面が来ない様に。

すると、俺の願いが神様に届いたのか、部屋の端にいる俺以外が蒼い炎に包まれていく。

面倒だから作業を短縮したわけか。ナイスだ、シキ。

「殺したのか?」

全員がバタバタと倒れ、炎が消える中、俺は遠くからシキに尋ねた。

「いいや。気絶させただけだ」

死亡どころか気絶までさせる事が出来るのか。シキの能力は便利だな。

「このパーティは、一体何のために開いた?」

「こいつらの大人数を捕まえるためだ。アタシ達の所属している組織を襲撃した、こいつらを」

シキが少し、重い声で答える。

「こいつらは?」

「アタシ達が所属してる組織より大きな場所に連行だ。そこら辺の手引きはもう済ませてある」

「じゃあ、俺、もう帰っていい?」

「少し待て。アタシが着替え終わるまで」

シキはそう言うと、どこかに消えて行った。

はぁー、つまり、俺は銃口を逸らす為に呼ばれたわけか。最悪だ。

それだったら、集まったところをシキが燃やして解決すれば良かったんだ。

それとも何か? 現行犯逮捕みたいに犯行するまで待って、未遂で終わらせようとしたって事か?

つくづく面倒な事をする。

バカか、こいつらは。

俺は欠伸をしながら、死屍累々な会場を歩く。

つーか、継承式は? あ、もしかしてこの後にやるのか?

つくづく俺は何しに来たんだ、ていう気持ちになるよ。

まったくもって最悪だ。

さっさとシキ、着替え終わ――――――――、


バンッ!!!!


何かが壊れるような音がした。それが城の城壁を破った音だと知ったのは随分と後になる。

何だッ!? と疑問を持つ暇は必要なかった。

「はっろォー。皆々様、全員御揃いでしょうかァー?」

園塚よりもウザったい喋り方をする奴を見つける暇も必要なかった。

何故なら、それは上から降ってきたからだ。

シャンデリアや瓦礫と共に。

部屋の端にいたら、今頃スプラッターな遺体となって霊安室にでもいただろう。

死屍累々の会場を歩き、抜け出そうとしたから、瓦礫から逃げられた。

シャンデリアが間一髪の距離に落ちてきたのは、奇跡と表しておこう。

銃弾を天井に撃ったからこうなった、なんてふざけた理由でない限り、俺は一つの事しか思いつかなかった。

彼らの【本命】。

天井から舞い降りた怪物が、彼らの【本命】だったという事か。

だとすると、俺だと対応しきれない。警備員でも無理かもしれない。

シキは・・・・着替えに行って、この場にいない。

絶体絶命という言葉の使い所だろう。最悪だ。

「なんかウチの部下がァ、全員ぶッ倒れてんだけどォ、殺しちャッたのかな?」

軽い調子で確認をする怪物。声からしたら、男の、それも割と若い男の声だった。

その怪物の狙いは・・・・いうまでもない。アリサさんだ。

「残念だけど、お前が天井から降りてくるまで、生きてたよ」

俺は振り返りながら、怪物に合わせ、軽い調子で答える。

声が震えていないのは、多分、脳が処理オーバーな事態だと判断したんだろう。

怪物は、俺より少し身長が高い、赤黒い髪をした、俺と同じ黒眼の少年だった。

怪物は俺を見ると、

「ふゥーん。お前が全員倒したのかァ?」

「残念。俺はそこまで強くないんだ」

「そうかァ」

興味を無くした目つきで一言。

「なら、みんな一緒に死んじまえェ」

直後、には何も起こらなかった。

怪物はそう言っただけだった。

言葉で現実を歪める力を持っているわけではなかった。

ただ、俺はただ、怪物の変わらず軽い調子で言った一言に、ビビってしまった。

脚が動かなくなった。

力の入れ方を忘れてしまったように。

多分、決してこれは怪物の能力なんかじゃないんだと思う。

単純に俺が怪物に異常なまでの恐怖を覚えただけ。

本物を化物を見た俺が、本物の怪物を見て、恐怖しただけ。

何の変哲もない、仲の悪い人同士の会話なら簡単に出てきそうな一言。

それにビビっただけの話だ。

「さァて、アリサ」

怪物は俺なんかに視線を向けるのを止めて、未だに会場にいたアリサに話しかける。

いや、

「まず最初はお前からァ」

確定情報を言ったまでだった。

怪物は姿勢を低くし、直線距離でアリサの元に行こうとしていた。

今、俺は動けない。ただし、怪物は関係なく動ける。

こういう時に、しょぼい能力は役に立つ。なんせ受動的な能力なんだから。

「逃げろッ!」

単純な一言。これを発するだけに、気力を相当使った。

「遅いッてェの」

怪物は脚に込めた力を爆発させ、

本来の進行方向より左側へ爆進した。

俺の能力は、一人に1日6回、相手の行動を少しだけ歪める能力。

脚に込めた力を爆発させる直前に進む方向の変更は出来る、能力。

怪物の表情は見えないが、多分、軌道がずれたことに、違和感を覚えている事だろう。

こっちは、一回蹴っただけで、5メートルの距離(水平ではなく斜め上)を埋める脚力に驚いているのに。

俺が怪物の行動を邪魔できるのは、あと5回。

その間にシキを呼べば、形成は逆転できるかもしれない。

でも、この状況で一番重要なのは、アリサさんを出来るだけ怪物から遠ざける事。

俺は重火器や武器になりそうな物を所有していない。

つまり、今俺がやらなければいけない事は、怪物を止めて、アリサさんを出来るだけシキの近くに移動させるか怪物から遠ざけて、生き残る事。

最悪だ。だが、仕方が無い。それら全てが出来なければ、どっちにしろ俺は死ぬ。

やるしかない。最悪だ。

怪物の能力は決めてありますよ。まあ怪物と言っても、小月君の感性で言ってるので、一応は人なんです。


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