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作戦終了

「次弾装填。」

人が死ぬ鐘の音が何度も何度も鳴り響く。

一度鳴り響けば次弾装填の声が聞こえ、この機体の背後で砲弾が装填される。

装填が終われば照準を少しだけ変えてまた鳴り響く。それをどれだけ繰り返したか。

「撃ち方やめ。総員、射撃姿勢解除。射撃地点が見え、射線を通せるまで前進せよ。」

言われた通り、足の爪を外し、関節のロックも外し、ゆっくりと四本の足を通常状態へと戻してゆく。

「みんな、市街戦機動をON。急な接敵に注意。前方のビル郡の隙間を移動し続ける。砲撃地点に30ミリ速射機関砲の射程圏内で射線も通る位置についたらその場でとまれ。」

「了解。」

指示を出し、左にあるカバーを開け、中にあるレバーを引く。

今いるマンション群の屋上から降りる。今更だが、かなりでかいマンション群だ。一つ一つのマンションの背も横、縦幅ともに大きい。

地面に着地する頃にブースターを吹かし、衝撃を相殺する。

そして、隊列を維持したまま前進する。

「こちら第451。前進を開始した。」

「こちら本部。了解した。広域レーダーON。周囲の警戒を怠るな。」

言われた通り、広域レーダーをつける。反応はない。

レーダーを見ながら隊列をある程度維持したまま進む。

結局、敵はレーダーに映らず、砲撃地点は目と鼻の先というところまで来た。

「みんな、止まれ。各自前のビルに登れ。ちょうど射線も通るはずだ。」

全体に指示し、前のビルに登る。前の足をビルに食い込ませ、クライミングの要領で登る。

頑丈なビルに足の爪が食い込み、確実に上へと登ることができる。

登りきった時、そこは見えた。

とても頑丈なはずのビルは吹き飛び、基礎部分しか残っていなかった。瓦礫がそこらへんに転がり、巨大なクレーターのようなものもできていた。

今いるビルが境界線のように、見事なまでに崩壊世界と言える景色が広がっていた。

「こちら6番機、敵機と思われる残骸が見つかりました。データを共有します。」

6番機が見つけたらしき残骸の画像が送られてきた。

そこには確かになにかの兵器のあとだとわかる装甲やライフルの銃身に見えるものが写っていた。

「本部、敵機の残骸と思われるものを発見。データ共有をします。」

「了解。解析を開始する。」

画像の解析は本部に任せ、もっと明らかな証拠を探した。

だが、6番機が見つけたもの以外は全く見つからなかった。

…6番機が見つけたのは一機分の残骸にしか見えない。

おかしい。たった一機で前線を止められるものか。砲撃で木っ端微塵になったのか?

おかしいな…。

そう思った時、地響きが鳴り響いた。

その方向を見ると、そいつがいた。2本の足でたち、一丁のライフルを手に持っている、高機動二脚戦闘兵器が3機。

「みんな!戦闘準備!」

全体に呼びかけ、戦闘に備える。

「本部、高機動二脚戦闘兵器が出現!戦闘を開始する。」

「了解。一機に全火力を集中させろ。」

本部の命令を聞き、全機が一斉に30ミリ速射機関砲を一機に対して火力を集中させた。

機関砲の曳光弾が3発に1発放たれ、光の一線を描きながら一機に対して数え切れない弾丸が突撃する。

その弾丸が当たる。そう思えるときにそいつは行動を変えた。

肩から何かを出し、機体の前方へ突き出した。

それは骨組みだけの長方形のなにかだった。

そして、その長方形を通った大多数の弾丸はその機体に命中することなく、消滅した。

「おい!どういうことだ!」

8番機が叫ぶ。

俺だってわからない。新兵器というやつか?あまりにもSFじみている。熱で弾丸を焼き切る熱線バリアのようなものか?

混乱がこの部隊に広がるが、敵機はこちらへと向かってくる。

「落ち着け!敵機が、」

混乱の中、最初の犠牲者が発生した。

最初の犠牲は最初に混乱の火をつけた8番機。敵機のライフルによって撃ち抜かれ、炎上した。

「全機、攻撃開始!」

こちらが指示を出しても、無線には絶叫が響き、各機が無茶苦茶に乱射していた。

「あぁもうクソ!」

どうすれば良いんだ!

「死ねぇ!」

「おい!6番機!」

急ぎそちらを見ると、6番機がブースターを吹かし、敵機に飛びついた。おそらく射撃姿勢をとり、敵機に完全に貼り付いていた。

「全機!いままでありがとうな!」

6番機はそう捨て台詞をはき、背中の榴弾砲の砲口を敵機へと向け、引き金を引いた。

「おい!6番機!返事しろ!」

そう呼びかけても返答はない。6番機は爆発四散し、原型をとどめていなかった。そして、敵機も同じ状況だった。

「クソ!」

まだだ。まだ2機残ってる。

残りの8機で、なんとか、なんとかして…。

「ッ!」

嗚呼、クソ。次は俺らしい。

敵機のライフルに撃ち抜かれ、機体全体に巨大地震かと勘違いするほどの振動がかかり、異常を表すランプが一斉に点灯する。

「動け!動け!」

戦闘教義も忘れ操縦桿を動かし続けるが、機体が反応を示すことはなかった。

こんなことをしている場合にも敵機は接近し、ライフルの精度を上げ、みんなを撃ち抜いていく。

一機、また一機と榴弾砲の角度維持すらできず動かなくなるか、爆発するかの運命を辿っていった。

比較的小型の四脚は敵機の大型のライフルに一発でも撃ち抜かれれば装甲をかする程度でない限り致命傷になる。

俺に関しては右足の2脚がが撃ち抜かれ、動かなくなった状態だ。燃料タンクにもかすったらしく、燃料のメーターが徐々に減っていく。

「動け!動けよ!過去にお前をを生き延びさせてくれた部下に、隊長に申し訳ないと思わないのか!」

俺は、生き残った。新人の頃に殿を努めてくれた隊長のおかげで。無線で注意をしてくれた部下のおかげで。大量の犠牲の上に俺は生きられた。

「お前はどうだ!四脚!俺とお前は同じようなものだろ!動けよ!一機でも、一機でも、次は俺があいつらを生き残らさせるんだよ!」

その時、ランプが消えた。背部武装の異常ランプが。

榴弾砲の角度を手動で変える。

ガガガというどこか引っかかる鈍い金属音が背後からなり、ゆっくりとぎこちなく、だが確実に砲口を天へと向けていった。

「よくやった!それでこそ俺の機体だ!」

システムの再起動で偶然動いているだけかもしれない。だが、それでも良い。

照準補正システムとの連携がうまく行かず、手動照準のみだが、それでいい。

照準補正システムを切り、完全手動照準に移行する。背中にある榴弾砲が機体の上部へと移動し、ところどころ欠けたメインモニターに照準が表示された。

まだ、まだ爆発していない機体がある。あいつらはまだ生き残っているはずだ。

今からその機体たちが鹵獲されていくだろう。動かない我々を見て奴らはさぞ油断しているだろう。

「狩りの鉄則だが、最も捕食者が油断する瞬間は獲物に夢中になっているときと勝ったと思った瞬間だ。」

ゆっくりと確実に砲口を敵機へと向ける。

敵機は歩いている。それほどのスピードも出ていない。

ゆっくりと、ゆっくりと、砲口を向ける。照準補正がろくに信用できなかったあの時代の感覚を全身に思い出させ、照準器の目盛りを頼りに照準をつける。

「あ」

「た」

「れ!」

新人時代の照準をつけて射撃するときにいう言葉を出し、引き金を引いた。

射撃姿勢を取っていないこの機体は反動で後ろへと吹き飛び、金属がコンクリートをひっかく音をかき鳴らす。

だが、そんな音を蹴散らす射撃音が静かになった戦場に穿たれた。

砲弾は確実に敵機へと吸い込まれるように飛び出した。だが、少し、偏差が大きすぎた。敵機の目の前の地面に大穴を開け、周りに飛び出した爆薬が敵機の足を削り、前方へと倒れ込んだ。

「クソ!」

次弾装填急げ!

急な射撃音に動揺していた最初に弾丸を消滅させた機体は、こちらへと照準をつけた。

一斉に射撃音が響いた。あちらが弾丸を打つのとほぼ同時にこちらが砲弾を放ったんだろう。

砲撃の反動でまたも後ろへと機体が動き、振動を一気に感じると同時にメインモニターがほとんど黒く塗りつぶされ、明らかに反動とは違う衝撃が機体を襲った。

運の良いことだ。反動で偶然この機体が中心を撃ち抜かれずに前方だけ撃ち抜いたのだろう。

ほとんど見えなくなったメインモニターから、砲弾が命中したことを確認した。

命中を確認した時、俺はこのまま死んでいいと思った。もうメインモニターも見えない。異常を示すランプはほぼ全て点灯している。システムが稼働している事自体が奇跡と言える機体だ。

そう思い、目をつむろうとした時、地面を揺るがす音が響き渡った。

つむろうとしていた目を開け、わずかに見える部分から外を見た。そこには、榴弾砲が機体の上部へと動き、砲口からゆっくりと煙が立ち上っている四脚機体だった。

「まだ…動く機体があった。」

この瞬間、生きようと思った。そうだよな。必死に生き残ってきたもんな。

さっきの砲撃で二脚の第二射は外れ、俺の機体とは違うところを通り抜けていた。

その瞬間をチャンスとし、後部の非常脱出口から出ようとした。二脚のライフルはどちらかといえば精度重視。速射性よりも一発一発の火力を重視している。まだ、時間はあるはずだ。

固い非常出口を体重を掛け、こじ開けた。

密閉された機体内部に空気が入り込み、強烈な風を受けるとともに、体重を掛けていたため、思い切り外へと放り出された。急いでさっき砲弾を放った機体の方を向き、状況を確認する。

ちょうどそちらを向いた瞬間、どちらも一斉に引き金を引いた。

機体の中にいるときとは大きく違い、砲撃音が耳を直接叩いた。

ぐわんぐわんと脳を直接叩かれるような感覚が体に起こる。

だがそれでも敵機の方を向き、この目で撃破を確認しようとしていた。

砲撃は…命中。敵機の胸部へと命中し、胸部装甲を穿ち、小型爆薬が胸部の深部まで破壊した。

撃破…である。

だが、

「あぁ、クソ。」

こちらも破壊されていた。弾薬庫に誘爆したのか機体が爆発し、炎上していた。

俺は、俺は、守れなかった。守られてばかりで。

また、また俺の足場に死体が増えた。

そんな、俺の暗い気持ちを吹き飛ばすかのようにヘリコプターの音が戦場に響いた。

だが、そんなもので俺の今の絶望を吹き飛ばすことができるわけがない。

俺は腰のホルスターにある非常用の拳銃をそっと取り出す。

9ミリ口径の自動拳銃。ゆっくりと、頭にその銃口を突きつける。

「許してくれ。こんな、不甲斐ない守られてばかりのクズを。」

引き金を引く。

カチッ。

音が響いた。

読んでくださりありがとうございます。評価等お願いします。

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