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第百十五話 「僕の酒を断るかぁ?」

「どうしたぁ侍女、僕の酒が飲めないのか」


「リスリム様から頂いた物が飲めないと言う訳では無くてですね」


「何だ歯切れが悪いな! それなら何だ? 宗教の問題か」


「いえ、法律でわたくしの年齢で飲酒禁止だったので……」



あの後、ボクはリスリムに誘われるまま庭園へ出た。

庭園にはテーブルと椅子が並べられており、

お酒やつまみがこれでもかと用意されていた。

しかし晩餐の場と比べて人が少なく、物静かな人達ばかり。

親密な関係同士で楽しんでいる……そんな雰囲気だ。


しかし彼もボクを毛嫌いしてるハズなのに2人きりで話って何だろう?

……まさか初対面の時の事をこじらせてそっちに目覚めたとか無いよね。

うん、流石にそれはないだろう。うん。

―――と、思ったけど今日は会談があるって事で西洋人形みたいな格好な自分。

鏡で見て『凄く可愛い』とか我ながら感心した程だったし……。

メイクの力恐るべし。

ってそうじゃないな。

この格好もあいまって目覚められたらどうしよう……。

気のせいかチラ見しながら顔赤くしてるしなぁ。


「なら今はここの法に従え。この国は10から飲酒出来る。だから飲め」


彼はそう早口で喋るとグラスのお酒を煽る。

自分はそれに倣って渋々口へグラスを付ける。

うわ……何この匂い。

自分はむせかえる匂いを我慢し、口の中へ一気にお酒を流し込む―――


「っけほ!? げっほけほ! か、からぁ!!」


「飲んだ事ないクセに一気に飲む奴があるか。ぶっ、あははははははは!」


喉と舌に走る辛さと熱さと痺れに涙する中、リスリムが爆笑する。

大人ってみんなこんなの美味しいとか言って飲んでるの?

てかリスリムもよく平然とこんなの飲めるな……。


「……恵みよ此処に在れ、レーフィアス」


彼が何かを唱えたかと思うとボクの空のグラスに水が注がれた。


「安心しろ水だ。……ゆっくり飲め」


「あ、ありがとうございます」


自分は口の中を洗い流す様にゆっくり水を流し込む。

うん、やっぱお水が一番だ……。


「ところでリスリム様、ボクに話とは?」


自分は誘われた内容を尋ねる事にした。

恐らくは大迫轟の節メリサリンド・ルゥの事とかだろうけど、

わかっていても気になる。


「色々とあるがまず大迫轟の節メリサリンド・ルゥの件、ご苦労だった」


彼は短くそう言うと右手を胸へ宛てて見せる。

確かこれは目上の人が下の者に敬意を評す場合に取る動きだっけか。

っと、この場合は自分も同じ様にして、確か会釈だ。


「しかしその功績は僕の所へ来てしまった……本来ならばお前の物なのだがな」


彼はそう呟きながら胸で金色に輝く栄章へ触れる。

クロカさんに説得されたと言っても納得行かないのだろう。

しかしボクに受け取れって言われても何か違うんだよね。

早い話が必死にやった結果と、もう一つ。


「自分は無我夢中でやっただけで……

 それにわたくしは攫われたりもしちゃったので」


ボクは大迫轟の節メリサリンド・ルゥの最中、攫われて危なかった。

しかしそれに対し、みんな達が動いてくれたお陰で事無きを得た。

もしルシードさんの助けが遅かったら自分は手遅れだっただろう。


そしてリスリムも裏で色々動いてくれていた。

ペリアさんに協力を促したのもそうだしボクが攫われている間、

その事実を隠したりと手助けをくれた。

ボクが選帝の敵で……レオナ側であるにも関わらず、だ。


「リスリム様はわたくしを助けて下さいました。

 ですから、それも含めての栄章だと自分は思います……それでも駄目ですか?」


ボクの言葉にリスリムは眉根を寄せたかと思えば顔を逸らした。


「助けて下さって、ありがとうございました」


自分は素直にそう伝える。

しかし彼は顔を背けたままでこちらを見てくれない。

まぁ、初対面の事を考えれば都合の良い話だとは自分でも思うけどさ……。


「ふんっ。馬鹿馬鹿しい……」


すると彼は近くのテーブルへずかずかと進む。

そして酒瓶が並ぶ中からワインボトルを乱暴に掴み、グラスへ注ぐと一気に煽る。

先程から赤かった顔は更に染まり、その顔をこちらへ向けてボクを睨んできた。


「僕はな、当たり前の事をやっただけだ! 

 民が王の為にあるならば王は国の為に在るべきであろう!

 故に僕はそれに倣った結果なのだ。僕に礼を言う口があるなら……」


彼は椅子にドカリ、と腰掛けてテーブルをコツコツと叩きここへ座れと催促し、


「その口に酒を注げ!」  


彼は鼻を鳴らしてそう言ってくる。

どう言う事?

お礼を言うくらいなら酒飲めって色々おかしくないですか?

てかアルコールが一気に回ったせいかリスリムの耳、真っ赤だよ。


「あの、ですからわたくしはお酒は」


「このヴィーレンなら飲めるだろ。

 祝い事で子供が飲むアルコール度微量のジュースだ」


「とは言ってもお酒入ってるなら―――」


「未来の国王である僕の酒を断るかぁ?」


「はい、頂ます……」


目が座ってる怖い。

根負けした自分は大人しく椅子に座り、ヴィーレンを貰う。

少しは良いヤツかなーと思ったけど、やっぱ苦手だこの人。

どうしよう。

SOS出そうにも出せる相手はルカさんかニーアさんか……

もしくはペリアさんなんだが、先程の場所から消えている。

何かあったらすぐ行くからって言ってくれはしたものの、駄目じゃん。


「―――全く、貴様はどうして男なんだか」


「……何か言いました?」


「な、何もない! 早く飲まないか!」


溜息交じりに何か言っていたので聞き返すと怒声混じりにお酒を強要された。

駄目だ、早くも出来上がってて高圧的な発言に拍車が掛かってる。

仕方ないのでボクは渋々お酒を口に運び、覚悟を決めて飲む。


「―――あれ、オレンジの炭酸ジュースだこれ」


すると先程の辛みや痺れは無かった。

口の中に甘みと酸味が広がり、覚えのある味を前にボクは声を上げる。

この世界に来て初めて飲む炭酸ジュースに自分は感動を覚える。

まぁ元の世界の物と比べるといくらか炭酸弱いけど、おいしい。

異世界じゃ炭酸なんて無いと思ってたよ……。

ボクは嬉しさの余り、気付けば全部飲み干す。


「おいしいですねコレ!」


「ほう、イケるじゃないか」


気を良くした彼は空になったグラスにヴィーレンを注いでくれる。

そしてボクはそれをまた飲む。


「で、ヴィーレンはカーディアル名産のレンフィーから作られた未熟酒でな。

 サテンフィン王国の名産酒の一つでもある。

 後はレンフィーと言えば……茶だな!

 同じくカーディアル名産のティオの実と合わせて作ったレンティオ茶がうまい」


「それボクも飲んだ事ありますです。おいしいですよね!」


気付けば自分は4杯目を楽しんでいた……。


そしていつの間にかリスリムとの会話が弾み、互いに笑い合いながら喋る。

リスリムに合わせて使っていた敬語も怪しい物になっていたけど……

まぁ、いいか。


「おお侍女? お前も飲んだ事あるのか。

 あれの良さがわかるとはなかなかじゃぁないか、褒めて遣わそう!」


「えへへ、ありがとうございますー。

 でもあれって飲み過ぎちゃうと夜寝れなくなっちゃうんですよね」


「兵が夜間でも戦える様に作られたとも言われているからな。

 昔は紛争が多かったカーディアル国ならではの名産と言ったところ―――」


「そうなんですね通りで!

 ……あれ、どうされましたリスリム様?」



気分よく喋っていたリスリムは急に黙る。

彼はボクの言葉にも反応せず、いくらか考え込む。

何か変な事言ったかなぁ? と様子を伺っているとこちらをチラ見する。

そして『ふむ』と唸って見せ、何か確かめる素振りを見せた。


「お前と話をしたいと思っていた件だが、実はな」


その言葉と共に彼は小さな手帳みたいな物をテーブルの上に置く。

何か見覚えがあるけどコレ……なぁんだっけな。

いくらかボヤけた頭で記憶を漁っているがナカナカ出てこず。

そして思い出したと同時に目の前へ藍色の石が現れる。


そうそう、これって収納マジックアイテムだ。

しかし石の方は……何だろう?



「この石は城下町でお前が倒した竜の体内から発見された。

 ……見覚えはあるか?」


野球ボールサイズの藍色の石に金色の細かな彫刻。

大きさは違うけど、第五でローズさんから貰った転移魔法石に何となく似てる。

しかしそれ以外は類似する点は見当たらず、ボクはそれを手に取って眺める。


「いえ、見た事な――――――」


そう言いかけて自分は固まる。

ただの模様だと思っていた金細工はゲームや漫画で見かけた事のある物。

でも何でこの文字が……?


「ルーン文字だ、これ」


この世界で使われているはずが無い文字を前に、ボクのボケた頭は一気に醒めた。

未熟酒と言う言葉は無いです! 多分!

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