第百四話 「これお前にやるわ。」
前話の分割した残りプラス追加。
あとは久々のスキルあとがきとか。
書き漏れの分も書かなきゃ……。
「…………え?」
「最初からあのふざけた口調のヤツしか居なかっただろ。お前は何の話をしている?」
聞き間違いかと戸惑う中、リスリムの言葉に耳を疑う。
その内容は最初からそんな少女は居なかったと言わんばかりの言葉だ。
困惑の中、顔を動かせば「何を言い出しているんだ?」と言う物を含んだ視線を向けられる。
それを前にボクは自分の方が変な事を言っているのかと錯覚してしまう。
待て、ならあの少女は?
一体どう言う事だ。
そう言えばアイツ、去り際に「クォーツ」って呼んでいた。
クォーツって名前はソドソで使ってたキャラネームだ……。
―――しかもボクはこの世界でその名前を誰にも教えて無い。
打開策を得ようとしたにも拘らず逆に混乱を招く内容が増え、自分は苛立ちを覚え始める。
『―――ウ―――、え―――か』
《システム:アンノウンユーザーよりWisを確認。会話しますか?》
そんな中でノイズ混じりに擦れた誰かの声が届く。
そして同時にシステムボイスが脳内に響き、自分はすかさずYESを選択する。
『……ユウ、聞こえるか? ユウ』
『ル、ルシードさん!?』
鮮明に届いた声を前に思わず名前を口にする。
トシキならわかるけどどうしてルシードさんが……?
『無事なようだな。すまないがそちらの状況を教えてくれ』
いつもの淡々とした口調の彼だけど会話の内容にどこか焦りが見える。
恐らくはリマーゼレウォルとか言うのと関係しているのだろう。
『こっちは何とか竜を全部倒し終わって、そっちへ戻ろうとしたら出来ない状態って感じです』
『そうか。無事に討伐出来たのならいくらか安心だな』
彼はボクの言葉に安堵した口調を見せ、いくらか和らいだ声色になる。
『あの、ルシードさん。今、転移魔法陣使えないのって……』
『ああ。現在、幾層封印璧と呼ばれる多重結界が発動して外部接触が一切不可能だ』
『やっぱり……。今、そっちで何が起こってるんですか?』
『―――先程、原因不明の攻撃を地下から受け、結界が自動発動。そして城下町を中心に竜が沸き出し、襲撃を受けている』
その一言に焦燥は熱を持ち、杞憂は現実を帯びる。
まずい、戻らなきゃ……早く戻らなきゃ。
《システム:アンノウンスキルを使用し、ユーザー・レオナの元へ移動しますか?》
アンノウンスキル……?
『待てユウ!? 血を辿って転移するつもりかやめろ!!』
『っ!?』
ルシードさんの声にボクは思わずビックリする。
何故彼が自分のしようとした事に気が付いたのか……。
同時に彼の言葉にボクはアンノウンスキルが何だったのかを理解する。
それはトシキたちがボクを助ける為に学ランボタンに残っていた血を使ったと言っていた。
そしてレオナも同じ物を持っていて、ボタンに血が残っているハズ。
同じ紋章で同じ材質を使った物を用いて転移魔術は発動する。
その術式は血と言う物を使った場合、それ以上の効果を発動して魔法や魔術による妨害すらも殆ど退け、Elfの影響も受けないらしい。
地下屋敷に攫われたボクを助ける為にルシードさんはこの方法を使ったのだ。
そんな事を改めて思い出すと同時にこれ以外に方法はないんじゃ……と焦りがボクを煽る。
『お前がこちらへ戻ってしまえば結界が発動した城内に閉じ込められてしまう。敵の目的が不鮮明な中、得策では無い』
要するに今レオナの元に戻ればElfで作られた結界を前に何も出来ない。
それでは地下から襲ってきた敵どころか城下町を襲っている竜も倒す事が出来なくなる。
――――――城下、町?
そう言えばリアさんとカーレンさん、今週の土曜に城下町に行くとか言ってたような。
でも今日は金曜だから流石に……いや、
『ルシードさん、あの……城下町って今どう言う状態ですか?』
『…………結界により騎士たちが城下町へ出る事が出来ず、城下町では多くの負傷者が続出している』
ドクン、と鼓動は強く打つ。
それは身体の芯を叩き、遅れて震えが走る。
『今日って城内勤務の人、連休を与えられたって聞いた覚えがあるんですけど……城下町に行ってる人、結構居ますよね?』
『…………』
『今日、レオナのお世話してる人って……誰ですか』
『―――ニーア1人だ』
リアさんでもカーレンさんでもノーウェンさんでもない。
って事はみんな連休を貰ってる可能性があって、リアさんとカーレンさんはもしかしたら。
杞憂だと思いたい。
問題無いと思いたい。
大丈夫だと……。
けれど立て続けに起こる予想外の出来事に、否定が声を上げる。
そして様々な不安と同時に、辺りを覆う血の匂いがボクへ吐き気を覚えさせる。
それは過去を思い出させ、警鐘を鳴らすかのように。
どうにかして戻らなきゃ、
何とかして行かなきゃ、
何か方法は、何かスキルは、何か何か何か何か―――
《システム:MP不足によりアイテムの発現失敗。討伐モンスターをMPドローしますか?》
《システム:MP不足によりアイテムの発現失敗。討伐モンスターをMPドローしますか?》
《システム:MP不足によりアイテムの発現失敗。討伐モンスターをMPドローしますか?》
無機質な声はボクの考えを見抜いたかのように繰り返す。
その言葉に顔を上げ、視界の先に映る赤黒い血を零す塊を自分は見つめ、
「リスリム、お願いがあるんだ」
「呆けていたかと思えば何だ、唐突に」
「―――倒した竜、全部ちょうだい」
「……は?」
《システム:MP不足によりアイテムの発現失敗。討伐モンスターをMPドローしますか?》
相手の返答を待たずしてボクはYESを選択した。
《システム:(メール)これお前にやるわ。>>アイテム添付1件。》
一年前、唯一フレ登録してたMASAKIさんって人から短い一文と一緒に装備を貰った。
その人はソドソを始めたばっかりの時に知り合った人で、時々会話したり一緒にモンスターを倒しに行ったりするだけの関係だった。
細かい事を聞いて来る事も無く、ボクも聞く事は無かった。
どこか不思議な人でゲームを止めるって時もどうしてか理由を聞く気にはなれず、ボクはそのまま素直にお礼を返してアイテムを貰った。
それから暫くしてから彼が有名な廃人プレイヤーだったと知り、貰ったアイテムもとんでも無い物だったと知る。
そしてそのアイテムはボクのキリングスタイルを更に加速させ、確立させる事となる。
そのアイテムは特殊素材を集めて作成され、作成条件がとても困難なアイテムだった。
重課金者の廃人プレイヤーでも手にするのが難しい代物で、
―――通称・神器と呼ばれる装備の一つだった。
《システム:MPドローにより、総てを弥るモノ発現成功。装備しますか?》
……YES。
「おい侍女……なんだその、ソレは……?」
彼は畏怖を含んだ声色で疑問を向けながらボクを見やる。
自分の足元に視線をやると踵から4つの炎、そして腰からも4つの炎が小さな羽のように伸びる。
グラをリアルで表現するとこうなるのか。
どうして今になってシステムさんの声が聞こえるのかとか、何で今更になってソドソに関する細かな事を思い出すのか……。
そんな色々な疑問がありながら今はこの力に頼るべきだとどう言う訳か理解している。
我ながら矛盾はしているとは思うけど、これしか方法が無いんだと言った言葉で自分は理由付けを終える。
「ごめん、リスリム。ボク戻るね」
「も、戻るとはどこに―――」
「サテンフィン王国」
辺りに落ちていた竜の肉片が全て消え失せ、目の前で起こる現象に顔を歪めるリスリムに先程のみたいな尊厳は薄れていた。
ボクはそんな彼を尻目に一歩足を前に出す。
遅れて付いてくる焔は赤から青へ色めき、揺らめく。
《システム:スキル・翔ける剣色を使用しますか?》
システムボイスの問いにYESと答え、二歩目の足を前に出すと景色は溶け伸びた―――。
【総てを弥るモノ】
北欧神話における滑走するもの、滑らかに動くを意味する。
主神オーディンの愛馬で、8本の足を持つ軍馬。
系統 :靴
性能 :防御力-15% 移動速度+20%上昇
純最高ステータスを+200%上昇効果
最高ステータスが重複する場合、
職業ボーナスステータスを基準として効果発動
特殊効果:装備時、専用スキル・翔ける剣色を使用可能
装備制限:Lv100以上
【翔ける剣色】
北欧神話に於ける駿馬スレイプニルの血を引くとされる牡馬。
属性 :無
タイプ :瞬間移動魔法
詠唱時間:基本詠唱、ディレイ、クールタイムなし
スキルLv1固定
消費MP:1
効果範囲:自キャラクター
魔法効果:画面内指定セルへ移動
魔法、魔術、召喚スキルによる妨害スキルを無視し、移動可能
画面内の障害物を全て無視し移動可能
指定セルに魔法、魔術、召喚スキルが発動していた場合、
移動後その影響を受ける
指定セルへ障害物があった場合は隣接セルへ移動
効果時間:特殊
効果対象:自キャラクター
総てを弥るモノを装備時のみ発動可能
発動制限:上位職以上




