表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様のお人形〜理想の人形に召喚された私、溺愛魔王に捕まりました〜  作者: タツナミ ソウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

7・噛み合わない温度

 

 その日の夜。

 寝台に入ったものの、なかなか寝付けず本を読んでいると、控えめなノックの音が聞こえた。メメリィだろうか――


「はい」

「⋯⋯エリー、こんな時間にすまない。今、少し良いだろうか?」

「デモくん?どうぞ」


 何かあったのだろうか――改まった聞き方に、少し緊張してしまう。

 ゆっくりと扉が開き、魔王が静かに入ってくる。


「どうしたの?何かあったの?」

「いや、少しだけ、エリーの身体に組み込んである術を確かめたくてな⋯⋯」


 寝巻き姿の魔王は、分厚めの本を持ってこちらへ近づいてきた。

 そして寝台に腰を掛け、不安げに揺れる双眸を向けてくる。


「うん、良いんだけど、それって⋯⋯」


 まさか、脱ぐのだろうか――


「ああ、大丈夫だ、エリーはそのままでいてくれれば」


 ほっとした後、こくりと頷く。

 薄く笑った後、魔王は私の心臓部分へ手を翳し、何やら呪文をとなえた。すると、淡く光る幾重にも重なった魔術陣が現れる。


「うわぁ⋯⋯すごい」

「⋯⋯ふむ」


 抱えていた本を開き、魔術陣を観察している魔王。

 まるで医師のようだ。


 数刻の沈黙――不安が喉を詰まらせる。


「⋯⋯大丈夫だ、エリー。術は完璧だ、異常も見当たらない」

「よ、良かった⋯⋯」


 真摯な声音に、深く息を吐き出す。


「予定を組むから、研究棟でもっと細かく検査しよう」

「わかった。とりあえず、緊急的に悪い所が無くて良かったよ」

「⋯⋯そうだな」

「⋯⋯ねぇ、何かあるならちゃんと言ってよ。そんな歯切れの悪い言い方されたら、不安にしかならないよね?わからないの?」


 思わず、きつい言い方になってしまう。


「演習場ではまた後日って言ったのに⋯⋯わざわざ今調べに来たって事は何かあるからなんじゃないの?」

「エリー落ち着いてくれ」

「全部話してよ!」


 荒くなった呼吸だけが、静かな寝室に響く。

 自分はきっと、酷い顔をしているだろう。


 ――ふと、魔王が視線を下げた。


「⋯⋯一つだけ、懸念している事がある」

「それはなに?」

「⋯⋯器への魂の定着が、不安定かもしれない事だ。見たところ問題ないが――全て細かく調べない限り、我は安心出来ない」

「定着が不安定だと、どうなるの?」

「⋯⋯分離するかも知れない」


 分離って――この肉体から離れたら、魂だけの私は。


「私は、消えるの?」


 少しだけ、声が震えた。


「いや、元の輪廻に戻る」

「⋯⋯なるほどね」


 消える訳ではないのか――と、多少安堵する。


「分離する時は、苦痛はあるのかな?」

「それも無い。入った時と同様、眠るように分離するはずだ」

「そっか⋯⋯」


 まだ来て間もないこの世界だが、それでも、仲良くなった魔族達と離れると思うと淋しさを感じた。特にメメリィと離れるのは辛い。


「⋯⋯淋しいけど、その時はその時だよ。元々死んでいるしね」


 一度死んだ記憶があるからだろうか、自分でも驚くほどすんなり受け入れられた。

 ふと、魔王を見ると、俯いたままだった。


「デモくん、どうしたの?」

「⋯⋯なぜ、そんなに簡単に受け入れる?」

「⋯⋯えっ」


 拳をきつく握りしめた魔王の声音は――小さく、掠れていた。


「⋯⋯っ、なぜお前まで、軽く言うんだ」

「簡単に受け入れてもいないし、軽く思ってもいないよ」

「ならなぜだ!!」

「!!」


 顔を上げた魔王の紅が、私を射抜く。

 思わずビクリと肩を震わせてしまう。


「⋯⋯っ、⋯⋯すまない」


 消え入りそうな謝罪。逸らされる視線――


「⋯⋯どうして、そんなに怒っているの?」

「⋯⋯」

「いったい、何が気に入らないの?」


 だって、私が消えたとしても⋯⋯


 胸に手を当てる。聞こえない鼓動が、沈黙に共鳴しているかのようで――


 ゆっくりと瞬きをしてから、魔王を見る。


「⋯⋯また、別の魂を召喚したら良いじゃない」


 言葉にしてしまったその一言は、とても苦く、重かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ