夏の自由研究 国政調査権
中学生の頃の自由研究の課題にしていた気がします……
s 結構前の話(三年くらい前)ですが、裏金問題について国会議員が政治倫理審査会で問い詰められたことがありましたね。
k 安倍派などの自民党内にあった多くの派閥が消えることとなった政治上の大きな転換期ともいえる事件だね。時間が過ぎるのはあっという間だね。
s そもそも政治倫理審査会とは一体何なのでしょうか。
k 「政治倫理審査会は、政治倫理の確立のため、議員が「行為規範」その他の法令の規定に著しく違反し、政治的道義的に責任があると認めるかどうかについて審査し、適当な勧告を行う機関です。」(衆議院のホームページより)国会法第十五章の二で政治倫理について明記されている。条項は三つしかないから強制力も少ない。ただ、政治倫理審査会で決めた要綱は行動規範となるからこの規則を破った場合、懲罰案件(最も重い処罰として「除名」が存在することから結構な権力はある)となることがあるからただの会議とは違う少し強めの権力がある。
s 「少し」なんですね。
k あぁ、行動規範といっても政治倫理審査会に出席させる義務はない。当然、報道機関の立ち入りも制限できる。
s ガバガバですね。
k まあ、一定の効果があるから存在はしているが。このとき、政治倫理審査会では絶対に足りない事だと思ったら国会は
「国政調査権」
という必殺技を使うことができる。この力は非常に強力で国会法、議院証言法、衆議院規則、参議院規則で定められているものの中で相当強い権限がある。
s 強い権限とは。
k 国政調査権ってそもそもいまの政治がどんな感じで進んでいるのか国会が証人を呼んで調べたいときに使うものなんだ。
s あ、別に犯罪があったからとかどうかというわけではなくて今の政治がどんな感じなのかを国会が知りたいから使うという感じですか。
k そんな感じだけど、そんなときに嘘をつかれた場合や欠席されると国政がどんな感じか国会は把握するのが難しくなる。だから「証人喚問」という絶対に出席して嘘なく真実を述べさせる手段を国会は取ることができる。手段として書類の提出や、議員まで来させて証言させるというものがある。
s 国政って言っても範囲が広いですね、制限はあるのですか。
k 例えば司法権の侵害行為がそれにあたる。裁判の結果が軽すぎるから重くするべきだと裁判官を証人喚問する行為は司法権の侵害として許されない(浦和事件では証人喚問について最高裁判所が抗議している)。
s 当たり前ですかね。
k 当然だがそれ以外に行政権の侵害、個人の思想など憲法で守られている部分の侵害は許されない。例えばだけど警察官が職務上知りえた秘密を国会で証言する場合は、本人が「証言してもいい」というような場合を除いて証言はしてはならない。それによる罰則も課せられない。ただ、一部の国会議員は本人の承諾関係なく証言する義務がある。
あとひとつ、個人の思想についてだ。共産主義者なのかみたいな個人の思想そのものについてなどの憲法が認める良心の範囲内といった部分は証言させることはできないよ。
s 何か思ったより制限が多いですね。人権上の秘密はやはり保護されるところが良いですね。
k そうだね。証人喚問は各議院の自由だから衆議院、参議院のどちらでも自由に独立して行使できる。衆議院の優越はないということだ。
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s 証言や出頭を拒めばどうなるのですか。
k 正当な理由なく拒んだ場合、拘禁刑一年又は十万円以下の罰金で又はその併科とされる。
s 正当な理由とは。
k 入院している場合や刑務所にいる場合で議院まで赴くのが困難な場合だ。この場合は国会が選んだ二人がそこまで出張して審問することができる。
s 出頭ができなければそこまで行く……思う以上に強力な権限ですね。
k そもそも、出頭は五日前(本人が海外にいれば十日前)には知らせる必要があり、その通達文にはいろいろある。証人として書類を出す場合は
「一 第四条第一項に規定する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、書類の提出を拒むことができること。
二 第四条第二項本文に規定する者が業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては、書類の提出を拒むことができること。
三 正当の理由がなくて書類を提出しないときは刑罰に処せられること。」(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律より)
という文章を添える必要がある。
s あくまで証人ですから議院にまで行くという必要があるわけではないのですね。
k 書類の提出を拒めばさっきの言った刑罰が科せられるがな。
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s 実際に議院まで行くとなると手間暇かかりますね。
k 法律で定められた旅費と日当が出るから海外にいてもそこは問題ない(国会議員やその関係者は旅費のみだったりする)。そして議院についたらまずは「宣誓」だ。その内容は。
「第三条 宣誓を行う場合は、証人に宣誓書を朗読させ、且つこれに署名捺印させるものとする。
② 宣誓書には、良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓う旨が記載されていなければならない。」(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律より)
裁判所と基本は内容が同じだね。相当緊張するからペン先が震えて宣誓文を書くのにものすごく時間がかかる。
s 自分が証言によって有罪になると思うと恐ろしいですね。
k いや、さすがにそれは無い。議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の第四条では
「証人は、自己又は次に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。
一 自己の配偶者、三親等内の血族若しくは二親等内の姻族又は自己とこれらの親族関係があつた者
二 自己の後見人、後見監督人又は保佐人
三 自己を後見人、後見監督人又は保佐人とする者
② 医師、歯科医師、薬剤師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職にある者又はこれらの職にあつた者は、業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。ただし、本人が承諾した場合は、この限りでない。
③ 証人は、宣誓、証言又は書類の提出を拒むときは、その事由を示さなければならない。」
とあるように証言によって自分が起訴されるかもしれない場合は理由をつけて証言しないことができる。じゃあ意味ないじゃんと思うかもしれないが、そもそも証人喚問は
「国政の様子を国会が知るため」
であり、裁判のように犯罪の処罰をするわけではないからだ。証人喚問は国政を調べる手段の一つに過ぎない。国会が犯罪者の審問をすることができれば司法権の独立が危ぶまれるからできない。
「第五条の六 各議院の議長若しくは委員長又は両議院の合同審査会の会長は、議員又は委員の証人に対する尋問が、証言を求める事項と無関係な尋問、威嚇的又は侮辱的な尋問その他適切でない尋問と認めるときは、これを制限することができる。」(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律より)
とあるから証人喚問といえど無駄な質問は許されない。
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s 偽証の罪は重いですね。
k 三月以上十年以下の拘禁刑となる。刑法が定める偽証と同じ重さとなる。但し、違いとしては議院証言法の場合、嘘をつきましたと自白したら、調査などが終わる前であれば犯罪が発覚する前であれば告発しないことができる。刑法の場合は、裁判が終わる前に言えば刑の免除または軽減となっているため、前科はできるということとなる。比べてしまえば刑法の方が重い。
s 刑事告発とは、結構重いですね。
k 出席委員の三分の二の議決がいるから簡単には告発できない(当然ながら偽証という行為自体罪深いから偽証をすれば刑事告発されることは十分にあり得る)。
s 証人喚問って本当に権限が強いですね。ここまで断るのが難しいって思いませんでした。
k 当然ながら「証人又はその親族に対し、当該証人の出頭、証言又は書類の提出に関し、正当の理由がなくて、面会を強要し、又は威迫する言動をした者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。」(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律より)とあるように威圧的な言動や強要は犯罪となる。
s 当然すぎますね。
k 何で言ったかというと、国政調査権って国民のためにあるからなんだ。政治腐敗を防ぎクリーンな政界を作るために行う国民の監視システムというのが国政調査権のあるべき姿なんだ。憲法に定められている国政調査権は、国民のためを思って作られている。
s 確かに、自由と強制は釣り合いが取れないと結局自由が消えちゃいますね。
k 自由のための強制だから、強制力も監視するのが僕ら国民の役割だよ。
何度見ても、中学生の頃の自由研究ほど上手くはいかないな……(夏休み終盤で時間もないからか)あと量が多いので何段階かに分けて書きました。分かりづらくてすみません……




