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天界での死に方  作者: 土成 のかげ
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犯人との対面

「ねえ、みた?アンセの顔!絶対私達が付き合っていると勘違いしていたよね!私達、散々振り回されたんだから、いいよね、ちょっとくらい勘違いさせてもさ!あー、もう笑いを堪えるの大変だったよ。あー苦しい、あーもう!」

レイは笑いすぎて悶えている。


え?そうだったの?流石にそんな誤解はしないだろうと思いつつ、今度機会があれば訂正しておこうと思う。ちょっと気の毒だ。


しばらくしてレイが落ち着くとなぜか私に謝る。

「アンセは咲の思い人なのに笑って、ごめん。別にだからって言う訳ではないけど、あの反応は脈アリだと思うな。びっくりしたと言うよりはショック受けている感じに見えたよ。」

アンセが、と言うのも気になるけど、私はアンセが好きなのかなぁ。吊り橋効果みたいに、ここに来て助けてもらってその時の優しさに甘えているだけなんじゃないかなぁとも思う。色々な人の言葉に気持ちが揺れてしまうのが情けない。

別に今すぐ答えは要らないじゃない、とさらりとレイは言うと前に買った荷物を私に渡してくれた。確かに私にはまだ気が遠くなるくらいの時間があるのだ。今すぐどうにかするべき事でもどうにかなる事でも無い。焦る気持ちが落ち着いた。

今日は疲れているだろうから余計な事は後にして直ぐに帰って休むように促され、レイの家を出た。


とは言え気持ちが落ち着かないので考えながら歩く。私の家まで数メートル、アンセの家の前まで来た時、背後にとても近くに誰かがいるのに気づいた。考え事をしていたせいで気配に気付くのに遅れてしまった。

怖くて振り返れない。でも足音は更に一歩一歩と近づいて来るのは分かる。声を上げればレイもアンセも来てくれるのに声が声にならない。スースーと息を吐く様な音しか出せなくて、助けを呼べない恐怖に動けなくなってしまった。足音はどんどん近づいて来てついに相手の影が視界に入る。もうそこまで来ている。もうダメだ目を瞑る。すると無言で肩をぐいっと後ろに引かれて嫌でも相手の方を向く。心臓が破裂するんではないかと言うくらい大きな音で主張してくる。金縛りにあったのかのように動かないまま、目を開くと相手の一挙一動を取らえようとして全ての動きがスローモーションに見える。ゆっくりと私を見つめる相手の瞳には怒りがこもっているのがわかる。誰?こんな怖い人知らない。


どうしよう、どうしよう、アンセ助けて。叫んだつもりでもやはり声にはならない。相手の手を振り払う事もできない。

どれくらいそのままだったのか。一瞬だったのか分からない。奇跡的にアンセが家から出てくると、相手は私を掴んでいた手を離してさっと走り去って行く。


「咲!どうした?」

安心して私は腰が抜けて座り込む。声が出なくて小刻みに震えている私を見てアンセは私を家まで運こんでくれる。ベッドに座る様に降ろされアンセも隣に座る。落ち着くまで片手で背中を支えながら肩を優しく撫でて、反対の手で私の両手を包んでくれる。落ち着くまでずっとそうしてくれていた。ようやく緊張が糸が切れると涙が出て来た。あとからあとから流れてくる涙を拭おうとしても手が震えて出来なくてアンセが自分の袖で拭いてくれる。アンセは本当に優しい人だ。


一息つくと私は一生懸命思い出しながらさっきの人のことを話す。目線の高さが同じくらいだったので背は低めの男の人だと思う。今思えばどこかで会った気がするけどあんなに攻撃的な知り合いはいない。何故あんなに怒っていたのだろう。しばらく向き合っていたと思うのにそれ以上思い出せなかった。

アンセはそれでも十分だと言ってくれた。それから落ち着いたのならレイを呼ぼうかと提案してくれた。あ、やっぱりレイの言う通り誤解しているのかもしれない。

私達は友達だよ、と伝えるとアンセはすごく驚いている。

「デートだったんだろ?さっきだって抱き合ったり、腕組んで歩いていたりしていたし。」

「アンセ、地上に居たのは75年前なんでしょう?もう言葉とかカルチャーっていうのかな?色々変わっているんだよ。」

「おじさん扱いするなよ、たかが75年じゃないか。」

たかがって言葉の使い方間違ってると思うよ、アンセ。


「やっと笑ったな。で、今日はどうしたい?1人でこのあと大丈夫か?」

確かに鍵も掛けられないのに1人で居るのは怖くて耐えられない。黙っているとアンセが私の頭を撫でながら提案してくれる。

「今日はオレがここに居てやるよ。」

え?ウチにお泊まりするの?突然な展開に答えに窮する。

「何を心配しているんだ?オレが居間で見張っててやるから安心して寝ろ。」

「アンセが寝れないよ、それはダメだよ。」

「じゃ、どうすんだ?」

「どうしよう?」

色々話し合った結果、アンセが床で私の掛け布団を敷いてタオルを掛けて寝ることで落ち着いた。寝室の床が畳の様になっていて良かった。

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