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天界での死に方  作者: 土成 のかげ
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振り出しに戻る

「咲、いつも無茶ばっかりするなよ!お二人は急ぎ外へお願いします。ぎりぎり逃げられる道を作りますのでそこを通って下さい。」

アンセがそう言うのを聞いて安心し、2人への力を解く。アンセが手を振ると円状に炎が道を作り二人はそこを進む。そのあとアンセが何かぶつぶつ言うと目の前の炎が消えた様に見えたがまた直ぐに燃え上がる。何度か繰り返している様だが火の勢いは収まらない。


「くそ、この炎は普通じゃない。早くしないと危ない。」

「アンセそういえばどうしてここに?」

「そう言うのは後だ。早くここから出るぞ。悪いが咲を抱えて出られる余裕が今ない。その氷をつけたまま一緒に来い!」

アンセのおかげで進むに炎がないとは言え煙と熱さで目が開けられない。アンセに捕まりながらではなかったら本当に危ないところだった。

なんとか外に出るとさっきの2人も無事だった様で、私の元に駆けつけて心配してくれた。良かった誰も死ななくて。家族3人に何度も感謝されてちょっと恥ずかしくなってくる。

恥ずかしくて視線を上げると隣にいるアンセはとても疲れた不機嫌そうな顔をしている。うーん、これは目があったら怒られるパターンだな。

逃げ道を探して周りを見渡すと朝見かけたシャドーっぽい人が人混みに紛れている。そっとその場を少し離れるとその人に近づいて手を伸ばす。ズンと重たい刺激がきた。やってしまった。


気がつくと病院だった。なんというか振り出しに戻る、だね。やっぱりあの人シャドーだっだのだ。はあ、何でシャドーが見えて浄化出来るのにみんなと話せないのかね。悶々としているとアンセが見舞いに来る。


「咲、頼む、もう無茶はしないって約束してくれよ。オレはもう生きた心地がしなかった。オレが居なかったせいでこんな事になってしまってすまない。オレはもう2度と咲を置いて飲み会には行かない。今度誘われたら一緒に行こう。」

なんか教訓の方向性が間違っていると思うのは私だけだろうか。


「アンセ助けてくれてありがとう。本当のところ危なかったよ。」

「間に合って本当に良かったよ。」

「でも何でアンセあそこに居たの?」

「え、あ、偶然?仕事で来ててな。」

「休みなのに大変だね。そう言えばレイはどうしてる?大丈夫?私あの日レイとデート中だったの。」

「デ、デート?」

「うん。で、レイは?」

「…レイは仕事終わった夕方に見舞いに来るんじゃないか。」

レイには謝らないと。消防団を待てって言われたのに飛び出して心配をかけてしまった。


「そう言えばアンセは?仕事は?」

「オレはいつも通りお前のお守り役だからな。休業だよ。」

「え、またか、ごめん!もう大丈夫だよ。今回はそんなに寝込んでないでしょう?」

「まあ、今回は3日だ。前よりは短いな。」

思っていたよりは長いけど進歩しているから良しとしよう。起きようとすると手慣れた手つきでアンセが手伝ってくれる。ベッドに腰掛けるとサッと飲み物を渡しつつ背中をさり気無く支えてくれているのが分かる。この人に甘えてもいいのかな。背中の手に寄りかかってアンセを見上げて見る。私の容態を見逃さまいと真剣な眼差しで見守ってくれている。


「どうした?」

すぐに私の視線に気づいて心配そうに覗き込んでくる。これは保護者の目なのか、愛情の目なのか私には区別が付かない。トビーのせいでアンセといると最近そんな事ばかり考えてしまう。

そもそもアンセは人たらしだ。だからカレンも感違いしたのだ。今なら少し分かる気がする。


私がすぐに返事をしなかったのでアンセはさらに心配して飲み物を私から受け取り、台に置くと私と正面に向かい合う様にしゃがみ込む。


「また隠しているだろ。」

何をだろう。シャドーの事?木々と話せる事?アンセの事が気になっている事?黙っているとアンセが話しだす。


「またストーキングされているんだろ?」

あ、それか!忘れてた!でもなぜそれを?


「はぁ、レイから聞いたよ。全くなんで言わないんだ。それでカレンの家を覗き込んでいたわけか。」

アンセに見られた時の理由は違うけど、最終的に間違ってはいない。


「で、目星は?目星は付いているのか?」

「今回は全くない。」

「あの八百屋野郎じゃないだろうな。」

「違うと思う。奥さん一筋って感じだったし。実はすごい年上なんだって。」

「あ、200才くらいだろ?年寄りだから若い子に興味ないってこともないだろう?」

やっぱり年齢はお互い分かるんだ。私はまだまださっぱり分からない。


「それにトビーと2人で話している時に違う角度から視線感じたから多分違うと思うの。」

「何?2人で?うーん、じゃあ一旦仮候補にしてやる。」

「昨日も視線感じたんだよ、何度も。あ、3日前か。」

「そ、それは、気が休まらないな。でもまあここで話しても犯人は見つからないから、今度街で感じたら直ぐに言え。」

そう言われてみるとアンセといる時は感じる事が少ない様な。それとも話してて気付かないだけ?


今回は元気なので目が覚めたらそのまま退院だった。歩けない訳ではないけどアンセの腕に捕まって歩くのがこの前の退院から習慣になっている。2人で歩いているとレイが正面から駆けてくるのが見えたので私も走りだす。


「咲!起きたのね!もう大丈夫なの?」

「レイごめんね、心配かけたよね。止めてくれたのに聞かないで飛び出してこの様で。」

2人で抱き合って喜んでいると後ろから咳払いが聞こえる。


「オレもいるんだが。そう言うのは後にしてくれないかな。」

アンセは何故がすごく疲れた顔をしている。レイは私をもっと近くに引き寄せる。


「アンセ、私達の再会の邪魔しないでくれる?私が咲を送って行くからアンセは帰っても大丈夫よ。」

「そうか。…いや、それでも、オレは見守るから。」

と言う事で3人で帰る事になった。私とレイは今度はどこに行こうかで話しが盛り上がる。アンセは黙って後ろから付いてくる。話に入らなくて不貞腐れている様にも見える。


「アンセも一緒に行く?」

「え、いいの?でも遠慮するくらいの思慮はあるから安心しろ。」

チラリとレイを見る。


「ふーん。」

レイはニヤリと笑って私と腕を組んで歩きだす。腕にはこの前買ったブレスレットが付いている。似合うねと言うと、お揃いのブレスレットを預かっているから取りに来ないか、と家に誘われたのでレイの家に寄ることにした。アンセはあとは2人でごゆっくり、と言うと帰って行った。



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