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天界での死に方  作者: 土成 のかげ
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ご近所さん

「こんにちは。」

突然声をかけられた。双子の赤ちゃん連れのお母さんだ。

「こんにちは…」

うーん、正直言ってこの人に面識は無い。誰だろ。

「急にごめんなさい、私貴女のお家のお向かいに住んでいる、カレンといいます。なかなかご挨拶する機会がなくてこんな場所でごめんなさい。驚かせてしまったでしょう。」

!!ご近所のご挨拶!忘れていたよ!生きて行くのに必死で近所に誰が住んでいるかとか、アンセ以外ノーマークだった。わざわざご挨拶頂くとはファーストインプレッションが良くない。

「こちらこそわざわざありがとうございます。咲 と申します。引っ越したばかりでご迷惑をお掛けするかもしれませんがよろしくお願いします。」

カレンさんの眼は水色の透明なビー玉のような瞳だから、水なのだろう。子供達は寝ていて族の確認は出来ない。


「お時間大丈夫でしたら少しお話ししませんか。」


断る理由もないので誘われた近くのベンチに座る。私の背景を知らない人と何を話そう。飲み物とか間が持つもの欲しいなぁ。感情が表に出ていたのかカレンが微笑む。

「ふふふ、大丈夫ですよ。私も地上から来たので貴女の心境はよく分かるつもりです。」 

ええええ!こんな所にも地上波組が居た!!なんでアンセは教えてくれなかったんだろう。

「そうなんですね!お子さんもいて大変でしたね。」

「そうですね、予定日が明日と言うときにこちらに来たので着いて数日で出産、育児で精神的にも肉体的にも本当に大変でした。」

私より大変な人が居たよ!ビービー言っている場合ではないね。私の境遇はまだまだ恵まれている方かもしれない。

「それはなんと言うか、辛かったですね。旦那さんも地上で悲しんでいるでしょうね。」

「私1人で産む予定だったので寧ろこっちに来れてよかったと思います。アンセが5年間毎日のように来てくれて私達の世話をしてくれたのです。なので1人で地上で産むよりも安心出来ました。」

アンセはこの人の世話もしていたんだ、すごいな。カレンは私の反応を伺っている様に見える。

「そうなんですね。でも正直アンセが子供の世話しているのが想像つかないです。」

「アンセも地上から来た人でしょう、先輩としてもとても頼りになりました。」

え?アンセも地上から来たの?聞いてないぞ。

「他に地上から来た人ってご存知ですか。」

「私達の家周辺は皆そうですよ。アンセから聞いていないのですか。私のうちの隣の子は、来た時は高校生のギャルですし、アンセの家を挟んで貴女と反対側の家はエンジニアの年配の方だったと聞いてます。」

え、そんなに居るの?若干ギャルって言葉に棘を感じたのは気のせいかな。大体大いなるチカラに呼ばれてくるのは樹だけではなかったっけ?どうなってるんだ。そんなに樹の候補が待機している必要あるの?


「全然知りませんでした。今度他の方にも挨拶をさせて頂かないとですね。教えて頂いてありがとうございます。」

「アンセは建築のお仕事していて窓ガラスやドアの細かい建て付けを担当しているのですよ。色んな現場に呼ばれて腕がいいのです。今日は南の方に出かけています。休みの日にはガラス細工を作ったり、金属で飾りを作ったりもしているですよ。見せて頂いたことはあるかしら。」

「いえ、まだ来たばかりでアンセが何しているのか知りませんでした。」

決して興味なかった訳ではないよ、タイミングを逸しただけだよ、でもここで言う必要はないよね。

「ああ見えてとても繊細な細工を作るのですよ。グラスリッツェンの細かい模様のコップやお皿を作ったり、ガラスフュージングで自分で指輪を作ったり。この前頂いたグラスは花模様が全体に入ったそれはもうゴージャスなもので使うのが勿体無くて。それに手先が器用だからお料理もとても上手なんです。何を作ってもとても美味しいのです。」

ん?なんだかよく分からない単語を混ぜてのアンセはすごいよ自慢大会が始まったぞ。とりあえず、知らなかった、すごいですねを繰り返して当たり障りのない答えをする。

「火ってそんな事も出来るのですね。」

「アンセほど器用な火は珍しいですよ。貴方は知らないかも知れないですが彼は特別なのです。」

うん、アンセ自慢じゃない、私はアンセを良く知ってるよって牽制ですね。よく分かった。言動には気をつけよう。

「カレンさんはアンセの事よくご存知なのですね。」

「5年間一緒に暮らしていたので。」 

ん?さっき来てくれたって言ってなかったっけ?ま、いっか。触らぬ神に祟りなし。話題を変えるかさっさと退散しよう。

「カレンさんはどんな水の力があるのですか。」

「私は、水の形を変えられます。丸、三角、ハートという風に。アンセは火でしょう、相性が良いと思いませんか。」

うん、今決めた。退散しよう。


「それは良いですね。あの、すみません、そろそろお昼で荷物も多いので一度家に戻りたいのですが、カレンさんはどうしますか。」

「私は来たばかりなのでもう少しここに居ます。引き留めてしまってごめんなさいね。」

「こちらこそ色々と教えて頂きありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」

無事脱出成功!帰ったらご近所さんご挨拶周りしないと。


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