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エネールとの質疑応答

「じゃあ、後でな。」

アンセは食べ終わるとさっさと仕事に戻って行った。私は最後の一口のおにぎりを頬張ると風通路へ向かった。早速買ってもらった袋を持ってエネールに会いに行こうっと!


スクエアから風通路を使って最寄り駅で降りる。家に続く道を行こうとすると、その道より西側に細い道があるのに気がついた。きっと朝通った遊歩道に繋がる道だ。ちょうどいい、エネールへの近道だしついでに散歩しよう。木漏れ日の中遊歩道を歩いているとベンチが一定距離ごとに設置されているのが見えた。晴れた日はここでお昼を食べたら気持ちが良さそうだ。そう言えばこんなに木があるのに木々の声がしないと思っていたら急に音が入ってくる。


やっと声 届いた 咲 アンセといる 声聞かない


え、え、なんで?どう言うこと?


エネール 待ってる すぐ行く


スッと右側の草木が道を作っている。それに沿ってぐねぐねと進んでいくとエネールの所に辿り着く。うーん、なんか前と道が違う様な気がする。


咲 来た!来た!

お話 する!する!


朝会った時と同じ楽しいトーンで話し始める。なんでも聞いていいのかな?会話と言うよりほとんど質疑応答みたいになりそうだけど。


「あのね、今度来る時やこれからの私の生活の中で大事なことだから聞いておきたいのだけど、みんなと話すことは悪いことなのかな?私がここにいることが他人に見つからない様にって、朝クノーに帰されたの。みんなと話してはいけないの? 内緒にしなくちゃいけないの?」


悪くない でも内緒!内緒!

咲 話せる でも ミーか分からない!分からない!

話せるの ミーだけ!ミーだけ!


「私はミーかどうか分からないと言うこと?だから内緒なの?」


ミーになる 話せない!話せない!

内緒がいい! 内緒!内緒!


ミーしか話せないけど、ミーになると話せないってこと?どう言うことだ?木々と話せるのがミーだと思っていたがそうではないらしい。ミーの条件ってなんなんだ?私はその条件を満たしてないからミーではないってことなのだろうか。それは喜ぶべきか否か。何をもってミーとなるのだろうか。でもこうしてみんなと話すのは悪いことではないと分かってちょっと安心した。


咲 話す 気持ち映す!映す!

気持ちない 話せない 聞こえない!聞こえない!


「気持ちを映すってどう言うこと?聞こえないってみんなの声が聞こえないって事?」


咲 アンセ いる 気持ちない 聞こえない!聞こえない!


ああ、確かにアンセと話している時木々の声は聞こえなかった。もし木々がずっと話していてそれが聞こえていたとしたら多分うるさすぎて生活に支障が出るに違いない。話す時は注意を向けて集中しないと木々の声は聞こえないと言うことだろう。ある意味良かった。そしてアンセと言われて思い出した。


「もう一つ質問してもいい?ここには動物がいないって聞いたけど本当?」


動物 ここ 来ない!来ない!

虫たち 仲間 仲良し!仲良し!


そうなんだ、やっぱり動物は居ないんだ。タンパク源はもしかして虫…では無いことを祈りたい。そんなに栄養マニアではないけど美味しい物好きとしてはこれからの食事は気になる。でも木々は人が何を食べているのかなんて関係ないだろうからこの質問の答えは自分で探すしかなさそうだ。


エネールは木々の名前も教えてくれた。木全体が薫るリラクフラグラン、レモンの様な甘酸っぱい実のなるシトラール、歌を歌う宿木のオペラン、他にもたくさん教えてくれたけど覚えられたのはこの3つだけだった。特にリラクフラグランは見た目にインパクトのある銀色っぽい白い木だった。幹も葉も花もみんな同じ色でハニーサックルの様な花がとてもきれいだ。花の匂いを嗅いでいたら枝葉が私を包み込んでくれる。その枝葉の香りに包まれて心が癒されていく。身を任せてそのままでいると今度は上の方から優しい歌声がする。よく見るとリラクフラグランに居るオペランが歌っている様だった。白い木の中で鮮やかな紫の蘭の様な花が咲いている。このペアは五感的に最高の癒しコンビだね!また今度癒してもらおうっと。


私の疑問はなんだか全部宙ぶらりんのままだったけどそんなことはすっかり忘れてエネール達と別れた。


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