色々な木
そろそろ帰りなさい 昼は人通りが増えて出られなくなるから 今度またおいで 話しましょう
そう声がするとまた草花が道を作ってくれる。その道に沿って歩いていくとまた水たまりの様な川を渡りぐねぐねと歩いていると木の葉の擦れる様な声がする。
エネール 咲に プレゼント
そこで立ち止まると別の元気な子供の様な声が聞こえてきた。
こんにちは!ひゃっほー!
これまたキャラのだいぶ違う木が現れた。10本くらいの中木が、まるで肩を組んでいるかの様に楽しそうにユッサユッサ揺れて踊る様に盛り上がっている。
「こ、こんにちは」
サッキー わたしたちからも プレゼントだよ!
まずは元気にならないとね! 元気、元気!
みんなにもお裾分けしてね! 分け分け、分け分け!
すごく楽しそうだね、サッキーって私のことかな?今まで話した木々が割と落ち着いた感じだったのでちょっと驚いた。木もそれぞれ見た目だけではなくて性格が違うんだ。
オレンジ色のコリンキーの様な実がコロンコロンと数個転がってきた。すでに大玉スイカで手がいっぱいで、どうしようかなバッグが必要だ。どうしようか考えているとエネールが言う。
また来て 取りに来て! 来て、来て!
「ありがとう、すぐ取りに来るよ。」
そう答えると新しい道が現れてそれに沿って進むと最初の遊歩道に出た。
このまま進む 止まらない
言われた通り真っ直ぐ家に向かうと誰にも会わずに辿り着いた。まずはもらったクノーの実を机に置く。どうやって食べたもんか。とりあえず半分に切ってみる。甘い香りが部屋中に広がる。中は赤くて小さなタネが2つ真ん中に入っている。大きいので八分の一にしてスイカを食べるように大きな口でガブリと食べる。甘酸っぱくて香りが口に広がる。二口目を食べたところですごくお腹いっぱいになってしまった。あれ?朝ご飯をそんなに食べたかな。何だかとっても満たされたので残りは冷蔵庫に仕舞う。
お腹が満たされて一息ついた後は、エネールのくれたものを受け取りに行く準備だ。袋とかバッグ、部屋にないかな、コリンキーを数個手で持つのはちょっと無理そうなんだよね。一通り家中を探して見るも何も見当たらない。無い無い尽くしだね。出店を見るのも兼ねてとりあえず中央に行ってみるしかないか。何がこの世界にあって何がないのかも一緒に確認しに行こう。
再びドアを開けて思い出した、あ、鍵。さっき鍵かけずに出てしまったけど、どうしよう。でも取られて困るものもないし、行こう!
真っ直ぐ風通路に向かって歩く。一人で乗れるか分からないけど乗るしかないよね。頑張るぞ!!いちにのさん!わっ、ちょっと滑ったけどなんとか乗り込む。順応性あるんじゃない?私。1人で乗っていると手持ち無沙汰になって外の景色を楽しむ。それぞれの途中の乗車場の間は、道を挟んで雑木林のようになっている。遠くの方までは見えないけれど、そこそこ広い森に見える。中央につながる道やそれに交わる道を歩いている人や走っているにしては速いスピードで進んでいる人もいる。この風通路に乗るのが普通なのか、歩くのが普通なのか、まだここの住人は3人しか知らないから何が普通のなのか分からない。ここに馴染むためにはしっかり観察しないとね。
中央に着いた目の前の建物は食品のスーパーだって言っていたのでまずはどんなご飯を食べているのか確認しよう。
スーパーの入り口は定番の野菜。これは万国共通なのかな。
あ!クノーって書いてある札を見つける。似ている実が札の近くにあるけどとっても小さい。ブルーベリーかそれより少し小さいくらいだ。本当におんなじ実なの!?隣になるのはもしかしてエネール?こっちも蜜柑くらい小さい。スーパーに売っているサイズはやっぱり主流だよね?とすると私がもらった実はどっちも規格外の大きさな気がするんだけど。現時点ではもらった実の存在は隠しておいた方がいいかもしれないと直感的に思う。
肉とか魚とかタンパク質はどんなものがあるのかな、虫みたいのではないと良いけれど…
探しても何処までも野菜だけどどうなっているのだろう。葉っぱや、果実などはあるけれどタンパク質になりそうなものがない。それとも私が分からないだけで野菜に見える何かはタンパク源なのか。端っこに加工品もあるけど、どう調理したら良いのか分からない。みんな何食べてるの???
食料品コーナーをざっと全て通り過ぎてもその疑問は解決しなかった。アンセへの相談案件がまた一つできた。
そうだそう言えば袋を探しに来たのだった。どっかにあるかなーただでもらえる買い物袋があると嬉しいんだけど。
隣の建物に行ってみると日用品が並んでいた。そこにはみんなが持っている麻で編んだような袋が大きさ違いであった。よく言えばとてもシンプルな、何の柄もデザインもない手提げ袋だ。お金もない身で、袋ならなんでもいいと思っていたけど、買うならもう少し可愛いのが欲しい。
食器は素敵なデザインやガラスもあってお金が出来たら買い揃えたい物が見つかった。一通り見終わったので外に出て出店を見てまわることにした。
植木、衣服、食べ歩き、お弁当、アクセサリーなど手作りフリーマーケットのような感じだ。スーパーよりも人が沢山いて特に食べ物系が混んでいる。そろそろお昼なのではないかと思う。時計を探す。よく見ると広場の真ん中に時計台があって黄色の花が咲いている。これくらいがお昼なのね。お腹が空いていないのはさっきクノーの実を食べたからに違いない。
比較空いている服や装飾品の店を見ているととても可愛いちょっと丸みのある斜めがけも手持ちも出来るバッグを見つけた。あるじゃない、可愛いの!沢山は入らないないけど日常使いに良さそう。手に取って見ていると後ろから、お嬢さん、カッコいいお兄さんが買ってあげようか、と声をかけられた。びっくりして振り向くとアンセが立っていた。