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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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捕らわれの身

「どういうつもりだハーミット!」


 怒りを抑え切れず、ボクはハーミットへ詰め寄る。


「あら、何のことかしら~?」

「とぼけるな! 一時的とはいえザ・ムーンを拉致監禁したのは知っているし、殺す選択肢まであったそうじゃないか!」


 これを部下の1人から知らされておきながら傍観しているほどお人好しではない。


「も~ぅ、そんなに熱くならないでよ。私まで火照(ほて)ってくるじゃない。それに実行したのはプリーステスだし~、私は関係なくな~い?」

「確かにそうだが止めもしなかった」

「だって止める義理もないし~。それにザ・ムーンに拘ってるのは貴方だけよ~? そんなだからフールの件から外されたんじゃない」

「クッ……」


 そう、ボクは私情を挟み過ぎたため、ミネルバ様から別の任務を言い渡されたのだ。


「貴方もいい加減見切りつけなさいな。そうやって駄々こねてる間にも、私はストレングスの勧誘に成功したわよ~?」

「あの男か……」


 純粋な力ではフールを上回っている男。ストレングスの適正があると思ってはいたが、あまりにも粗暴であるため勧誘は控えたのだ。


「それより貴方、こんなところでサボタージュしてていいのかしら? 確かタワーの捜索に加わるよう言われてるんでしょ~?」

「私にとっての一大事だったのだ! 妹に危機が及ぼうというのに無視はできん!」

「その通り。肉親である()()()()()()おきながら傍観する。とても耐えられる事ではない」

「「!!」」


 聞き覚えのある声が割り込んできた。女性でありながらも武骨な鎧と長剣で武装しているのは、エーテルリッツの1人――エンプレスだ。

 細身だからか、或いはエメラルドとホワイトを絡めた色合いが鎧の印象を和らげているのか、武装しておきながらも清楚なイメージが先行する。


「エンプレスじゃない。まさかとは思うけれど貴女までサボタージュ? ()は真面目なのに()の貴女は真逆ね~。もっとも、妹の方は無様に死んじゃったけれど~」



 ヒュ……



 気温が一気に氷点下まで落ち込んだ感覚を得る。エンプレスが殺気を放ったのだ。


「その軽々しい口を閉じろ、ハーミット。()()()プリーステスを侮辱する真似は許さん。それに見捨てた貴様にも責がある」



 ピキッ……



 更に場の空気が凍りつく。エンプレスの殺気にハーミットが応えたのだ。


「……悪口くらいなら構わないけれど~、殺気を向けられたらお姉さん、黙ってはいられないわ~」


 おどけているがハーミットも半分本気だ。


「止せ2人とも。ここで争って任務失敗ではミネルバ様に会わす顔がない」

「だって~、今回のはプリーステスが勝手に暴走しただけじゃないの。なのに責任を押し付けるとか、それって変よね~?」

「確かにな。私としても勝手にザ・ムーンを手に掛けられそうになったのだ。フールへの復讐は止めないが、お前を手助けする理由はないぞ、エンプレス」

「……すまない、少し熱くなりすぎた」


 妹を失って冷静さを欠いていたのだろう。先ほどまでの怒りは鳴りを潜め、素直に非を認めたようだ。


「うんうん、素直な娘はお姉さん好きよ? じゃあお利口さんなエンプレスに耳寄りな情報を教えるわね」

「耳寄りだと? 以前聞かされた話は男を取っ替え引っ替えしたとかいうくだらない内容だったな」

「ち・が・う・わ・よ。そんな昔話はもう忘れてちょうだい。私は言いたいのはプラーガ帝国を使ってフールを誘き出そうかって話」

「!!」


 ハーミットめ、いつの間にやらプラーガ帝国に細工を施したようだ。 


「どう? いい情報でしょう?」

「ああ、とても助かる。だが奴を討つのは我れだ。これだけは譲れん。ミネルバ様にも手出し不要と伝えて欲しい」


 それだけ言い残し、エンプレスは足早に去っていく。


「じゃあ私も戻ろうかしら。せっかく人質を手に入れたんだし~、いろいろと遊んでみたくなっちゃった~♪」


 気を持ち直したハーミットも何処かへ転移していった。奴め、プラーガ帝国を動かせるほどの人物を捕えたというのか? もしもテンパランスやワールドに目を付けられたらどうするつもりだ?


「…………」


 ボクが気にしても仕方がないか。

 やれやれ、タワーの捜索を続けながら健闘を祈ることにしよう。



★★★★★



「コラーーーッ! 待たんか貴様らーーーっ!」

「待てと言われて待つ奴ぁいねぇ!」

「悔しかったら捕えてみるがよい」


 必死こいて追ってくるのはプラーガ帝国の兵士たち。詳細は省くが、俺とアンジェラはプラーガ兵から逃走中だったりする。

 いや、省いちゃいかんな。実はライザ将軍に頼まれて表向きは捕らわれていることにして欲しいって言われたんだ。皇帝の命がかかってるらしいから了承はした。だけど直後にロージアからの念話で、アンジェラと一緒に逃げ出すよう促されたんだ。

 で、何故だか大盛りのカツ丼を片手にアンジェラが乱入してきて、俺を抱えて個室から逃走。城からの脱出を目指してる最中ってわけだな。


「でも良かったのか? 俺が逃げたら皇帝の命が危ういんじゃ……」

「何を言うておる? これはお主のためでもあるのじゃぞ?」

「俺の?」

「そうじゃ。つまりな……」



『プラーガに捕えられたままでは、ディオスピロスの要求しだいでお主を殺さねばならなくなるのじゃ』


 何故か念話に切り替えてきたが、確かにそいつは盲点だった。皇帝のためとは言え、命まで取られちゃたまったもんじゃない。


『で、何故に念話?』

『ディオスピロスに気付かれないために決まっておろう。どうも奴らはこちらの動きを把握している節があるのじゃ。そこでライザは手始めに闘技場にいた者たち全員を片っ端から調べることにしたらしいのぅ』


 なるほど。決戦の舞台(クライマックス)明けに見た光景はそれだったのか。


『それで結果は?』

『結果として構成員は居た。居たのだが、どうも皆が揃ってディオスピロスに協力した経緯が分からんと申しておる』

『それってつまり……』

『強力な洗脳――そう考えるのが妥当かの』


 洗脳か。エメローナの時とはまた違ったパターンだな。


「そこの2人、止まるんだ!」

「城から逃げられると思うなよ!?」


 もうすぐ出口だってのに回り込まれちまったか。


「さて、お喋りは終わりとしようか。お主を無事に脱出させるようライザから頼まれてるしのぅ」

「ライザ将軍が?」

「詳しくはロージアから聞くがよい。それより準備はよいか?」

「準備って何の――っておい!?」


 アンジェラが片手で俺を掴み上げた。


「ちょちょちょちょ! アンジェラお前、何するつもりだ!?」

「脱出させるに決まっておろう。ほれゆくぞ――せ~~~のっ!」



 ブン!



「ぬぅわぁぁぁぁぁぁ!?」


 槍投げの要領で投げ飛ばされた俺は、兵士たちの頭上を越えてグングンと上昇していく。やがて城を飛び出て城門も越えると、唖然とする兵たちを尻目に雲を突き抜けん勢いで飛び立つのだった。



 いやいや、これだとハッピーエンドみたいな感じじゃねぇか。つ~かどこに向かってんだ俺は……。


『マサルさん、ご無事ですか!?』

『おおロージア。城で捕らわれそうになったけどアンジェラのお陰で脱出できたぜ。ついさっき城を出たところだ』

『無事に脱出できたのですね。それなら一安心です』


 安心するのは無事に着地できてからにして欲しいがな。


『ロージアの方はどうだ?』

『私は無事です。シュワユーズとカルロスも一緒ですよ』

『ん? シゲルとクーガはどうした?』

『あの2人はダンジョンに帰還させました。ディオスピロスの話をライザ殿から聞きましたので、念のためダンジョンの守りを強化しようと思いまして』


 どこに目があるか分かったもんじゃないからな。ロージアの判断は賢明だろう。


『そのライザ将軍なんだけど……』

『ああ、言い忘れてましたが、マサルさんを捕えたままだと最悪は処刑せねばならなくなると仰いまして』


 逃がしてくれたのか。眠ってる間に殺られるよりはマシだな。


『それでマサルさんは今どちらに?』

『まだプラーガ帝国の上空だと思う。どこに向かってるかはアンジェラに聞いてくれ』

『そこでアンジェラさんが出てくる理由がわかりませんが、無事なのは理解しました。地上で合流しましょう』


 合流する前にこのままじゃ迷子なんだが。まぁ考えても仕方ない、自力で着陸するか。


「どこかに村か街でもあればな――お? あれは…………村か?」


 現在地が分からなければどうしようもないってことで、テキトーに見つけたへと着地することに。

 ――が、地上に近付くにつれ様子がおかしいことに気付く。冒険者らしきパーティが村人と戦っているんだ。しかも村の連中、フラフラとした足取りで動きがぎこちない。

 また随分と面倒な場面に遭遇したもんだと脳裏で愚痴りながらも、互いを背にして戦っている冒険者の近くへと舞い降りた。

 そして1人の顔を見た直後、俺は冒険者パーティに加勢することに決めた。



 スタッ!



「よっ! 久しぶりだなレックス」

「お前は……マサル、マサルか!?」


 この冒険者パーティは以前ラーツガルフのアンデッド騒動で共闘した【夢の翼】だ。


「おぅ、なんでここに飛ばされたか分からんが助けに来たぜ。本当は城から脱出したついでで、道に迷っただけなんだが」

「言ってる意味がまったく分かんないけど加勢は助かる。見ての通りコイツらは普通じゃないんだ」

「分かってるって。まずは――」


 それでも戦うからには理由があるんだろう。まずは手っ取り早く戦闘を終わらすため、近くの村人から次々と罠に掛けていく。


「――漬けもの石!」



 ガクン!



「ううっ!?」

「お、おおぉ……」


 これは漬けもの石を背負ってるかのように体が重くなるトラップだ。しばらくはまともに動けないだろう。


「助かったぜマサル。どうも村の連中は何者かに操られてるみたいでさ、間違っても殺すわけにはいかないんだ」

「つっても時間稼ぎだけどな。それでレックスたちは何しにここへ?」

「冒険者ギルドの依頼だよ。定期便の荷馬車が村から戻らないってさ。てっきり事故か何かだと思ったんだけど……」


 まさか村人に異常が発生してるとは思わんよな。

 しかしここで村人に異常が発生している原因がノコノコと姿を現してきた。



 ササササッ!



「き、貴様はマサルではないか! 何故このような場所に!」

「あ? 何だお前ら――って、お前らのその格好、ユキノを拉致った連中の仲間だな!?」


 頭までスッポリ覆った紫のローブ姿。忘れもしねぇ、エーテルリッツの下っ端共だ。


「こうなっては仕方がない。我々だけでこ奴らを狩るぞ!」

「者共、配置につけぇい!」


 動けない村人に代わり、エーテルリッツ共が相手をするらしい。


「へぇ、やるってのか? なら存分に味わってもらおうか!」


 いい機会だ、仲間に手を出したことを後悔させてやる。


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