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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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剣と弓

 ラーツガルフで暗躍していたナイトメアは恨み節を吐いて消滅していった。これでブローナの反逆から始まった騒動は幕を閉じたことになる。これで落ち着いて冒険者暮らしができるかって言われればそうでもないんだなこれが。


「お~い、戻ったぞマサル~」

「おぅ、クーガか。――というかお前、帰ってくるのが早くないか? 冒険者ギルドに行ったと思ったんだが」

「あ? 誰のせいで早まったと思ってんだ!」

「あ~、やっぱり()()のせいか?」

「そうだよ、()()のせいだよ!」


 ここに出てきた()()という台詞。簡単に言うと、俺がダンジョンマスターだってことがバレちまったんだ。

 なにせナイトメアの野郎、消える間際に「おのれぇ、貴様もダンジョンマスターだったのかぁぁぁ!」なんてほざきやがったんでな。そうなると欲深い貴族が俺に目を付けないわけがないってもんよ。


「ギルドに着いた途端、待ってましたとばかりりはに貴族共の使者が殺到してくるし、お陰で依頼を漁ってる余裕もないしで散々だ。だいたいがマサル、全部お前のせいだろうが! ほれ、こんなに貰っちまったぜ」


 貴族が寄越した手紙をその場に放り投げてきた。見方によっちゃ札束にも見えるが、そんな有りがたいもんじゃない。数十にものぼる手紙の詳細は、ぜ~んぶ俺を雇いたいって内容だ。


「凄い人気ですねマサルさん。いっそのこと冒険者を辞めてダンマス一筋で頑張ってみてはいかがでしょう?」

「嫌だよ。俺は冒険者として活躍したいんだ。それにどっかの貴族に肩入れしたら、ま~た争いが勃発するじゃねぇか」

「そこはほら、マサルさんの腕の見せどころでしょう。上手くいけばラーツガルフを裏から支配できるというメリットも」


 どう見ても柄じゃないよなぁ……。そもそも俺の目標は冒険者として名を上げることだ。


「つ~かさ、そんなにロージアはラーツガルフを支配したいのか?」

「いいえ。私はマサルさんに付いて行くだけですので、マサルさんが望まないのならそれも良いでしょう」

「うん、望んでないぞ。だからクーガ、そこにある汚ねぇラブレターは全部捨ててくれ」

「嫌だよメンドクセ。んなもんブローナに燃やさせろよな」

「ブローナか……」


 ナイトメアとの一戦でブローナの信用は高まっちまったんだよなぁ。派手に活躍したお陰で変装もバレちまったし(←当初は髪の色を変えてたんだが、意味がなくなったから金髪に戻してるぜ)、これたら城に戻れる――



 ――という展開にはならず、今でもブローナはダンジョンに居る。なんでも将来はジャニオと一緒に暖かい家庭を作るのだとか。その望みが叶うかは未知数だけどな。


「しっかしな~、こんな事が連日続いたらやってられないぞ。オイラもこんなに貰っちまったし」


 カルロスまた大量の手紙を抱えて戻って来た。こりゃ本格的にダンジョン隠ろうかと考えていたところ、カルロスの脇から一通の手紙が落ちてくる。


「落ちたぞカルロス」

「ってオイラに返すなよ。全部マサル宛なんだから」

「いや、読む気になれないし、このまま捨ててくれても――――ん?」


 手紙を拾う際に偶然目についたプラーガ帝国という文字。よく見るとプラーガ帝国にある冒険者ギルドからの手紙だった。


「どうした?」

「いやさ、何でか知らんけど冒険者ギルドからの誘いも混ざってるみたいなんだ。しかもプラーガ帝国のな」

「あら、そんな遠くからなんて珍しいですね」


 俺たちの居る国はラーツガルフで、その東がヨム族の住む大平原だろ、更に東へ進むとミリオネックという連合国があって、そこから南東方面にあるのがプラーガ帝国なんだ。ロージアの言う通り、かなり遠い場所だよな。

 で、肝心の手紙だが……


「何々……プラーガ帝国で武術大会が開かれます。今大会は世界各地の強者が集う大規模な催しであるため、貴殿が更なる高みを目指すには良い機会となるでしょう。是非とも参加のご検討を……と。なるほどねぇ、俺も有名になったもんだ、うんうん!」

「水を差すようでアレですが、これは単に冒険者ギルドが駐在する冒険者を勧誘しているだけなのではないかと……」

「ま~たまたぁ、すぐロージアは無駄に疑っちゃって。俺の名声が(とどろ)いた結果がコレなんだよ。第一どの国に対しても中立を取っている冒険者ギルドがそんなセコい真似するかって」


 例えそうだとしても武術大会には興味がある。腕試しに出てみるのも面白いよな。


「よっし、決めた。俺も武術大会に参加するぜ!」



★★★★★



 思い立ったら吉日ってやつで、シルビアとカルバーンにはプラーガ帝国に向かう事を告げると、ヨム族が暮らす大平原を東へと進む。久々の長旅になりそうなんで、ジャニオとブローナはダンジョンで留守番。カルロス、シュワユーズ、クーガにロージア、そして俺を含めた5人で旅立った。

 ああ、何でジャニオとブローナを置いてきたかって? そりゃブローナがいると疲れただの休ませろだのうるさいからだよ。んで、お目付け役にジャニオを残したってわけ。ダンジョンの防衛も気にしなきゃならないし、ちょうど良かったな。


「ん~~~、今日もいい天気で良かったね~。平原だと雨宿りが出来ないし、ミリオネックに出るまでは晴れていて欲しいな~」


 俺もシュワユーズに同意。出発してから一週間は経つが、まだまだ平原を抜けれそうにないもんな。

 あ、いや、だいぶミリオネックが近いのか? ちょくちょくすれ違う冒険者が増えてきた気がする。


「だーーーっ! あ~に寝ぼけたこと言ってんだ、全然戦闘にならねぇじゃね~か。こうも退屈だと体が鈍っちまうぜ!」

「相変わらずですねクーガ。そもそもこの平原には殆ど魔物がいないのですから当たり前でしょう」

「く~~~ぅ! だったら動物でも狩ってやる。ウサギだろうが鹿だろうが何でも出てこ~~~い!」

「動物虐待は止めろ。愛護団体がうるさいんだから」

「愛護団体? 何だそりゃ?」

「いや、こっちの事だ。気にすんな」


 多分イグリーシアには動物愛護団体は存在しないはず。多分……。


「んお? おいおい、ありゃ~雨雲じゃないか? 東の空が真っ暗だぞ」


 カルロスの言う通り、遠くに雨雲が広がっていた。それは奇しくも進んでいる方角で、徐々に水滴が体に付着するようになる。


「マズイな、本降りになる前に凌げる場所を探さないと。ったくシュワユーズがフラグ立てるからだぞ」

「ちょっと~、あたしのせいにしないでくれる?」

「そんな事より二人とも、あそこに村が見えます。あそこで休ませてもらいましょう」

「ナ~イスロージア! みんな、村に向かって走れ」

「おっしゃ、クーガ様が一番乗りだぜ!」


 大雨になる前に村へと駆け込むことに成功した。宿屋のオバチャンが「大変だったねぇ」と労いながら部屋へと案内してくれる。


「ふ~ぅ、シュワユーズのせいで危うくズブ濡れになるところだった」

「まったくだぞ。シュワユーズは反省しろ」

「うわ~ん、男共が虐める~。ロージアさん助けて~♪」

「では外へ逃げてください。雨の中1人で」

「……え、酷くない?」


 さて、勢いで宿屋に入っちまったがどうすっかな~。



 コンコン!



「お~い、この部屋に泊まってる人たち~」



 ガチャ!



「ちょっといいか~?」


 扉を開けたのは、俺と同じくらいの歳に見えるヨム族の少年だった。麦わら帽子に弓を背負っている、いかにも狩人って姿でな。


「いや、ちょっといいか~ってお前、返事する前に開けてんじゃね~かよ」

「あ~わりぃ、ついいつもの癖でさ。――ってそんな事はどうでもいい。あんたら俺と勝負しないか?」

「おい待てよ。勝負しないかって――」

「おっしゃ! ちょうど暇してたところだ。あたいが相手になってやるぜ――おらよ!」

「へブッ!?」

「――って、おいクーガ!」


 クーガにブン殴られた少年が向かいの扉を破ってスッ飛んでいく。すぐに駆け寄るもケガは無いらしく、難なく自力で立ち上がった。


「俺の連れがわりぃ、大丈夫か?」

「お~~~いってぇ……。そりゃ勝負しろとは言ったけど、いきなり殴ることないだろ?」

「あ? 男のくせに弱々しいこと言ってんじゃねぇ。それに決着はついてねぇんだから試合続行な、おりゃ――」

「「だからヤメロッテ!」」


 浮き足立つクーガをどうにか落ち着かせ、少年の話を聞くことに。


「……で、何で勝負したいんだ?」

「あんたら冒険者だろ? だから自分の実力を試したいんだよ。いずれは族長の息子として自警団を引っ張って行きたいんだ」

「なるほどな。実は俺も武術大会に出場するべく修行してる最中なんだ。俺でよかったら相手になるぜ?」

「ホントか!? なら地下の訓練場についてきてくれ」




 流れで族長の息子と勝負する事になった。俺は木刀を構え、相手は先を丸くした矢を弓につがえる。


「では私が審判を勤めます。レディ――」




「ゴーッ!」


 ロージアによる開始の合図。先に動いたのは俺で、相手に向かって即座に距離を詰める。


「悪いな、一気に決めさせてもらうぜ!」

「っ!」


 蛇行した俺の動きに狙いは定まらず、急遽相手は弓を投げ捨てた。俺は構わず木刀を振り下ろすが……



 スッ!



 回避された!? いや、それだけじゃない、上半身だけを器用に逸らしてやがる!



「そこだぁ!」

「なっ――――ぐふっ!?」


 ヤバい! ――と思ったが遅かった。逸らした動きを利用した回し蹴りが俺の横っ腹にヒット! 情けなく転がりながらも何とか距離を取った。


「あ、あれ? おっかしいなぁ、完全に入ったと思ったのに……」

「いんや、キッチリと決まったぜ? 並の装備なら今ので悶絶(もんぜつ)してるだろうな」

「あーーーっ! まさかお前の装備品、エンチャントかけてやがるな!?」


 はいご名答。ダンジョン機能で防御力を上げてあるんだなこれが。


「いやさ、武器はともかく防具には何も言及されなかったし、別に反則じゃないだろ?」

「けど卑怯だろ!」

「でも実戦じゃ卑怯だの何だのは理由にならないぜ? 死んでから文句言うつもりか?」

「うっ……」


 まぁエンチャントがなきゃ俺が負けてただろうが。


「はぁ……負け負け、俺の負けだよ」

「ん? まだ決着はついてないぞ?」

「さっきので仕留めるつもりだったんだよ。それが出来なかった以上俺の負けさ。カウンターだって二度も効かないだろ?」

「ん、まぁな」


 しかし俺としても有意義な試合だった。相手が弓だからと完全に舐めてかかったしな。武術大会の前に見直せて良かった。


「では勝者はマサルさんに決まりですね」

「それでいいよ。でさ、もう一つお願いがあるんだ」

「なんだ、弟子入りでもしたいってか?」

「違うって! 俺と一緒に討伐依頼を受けて欲しいんだ」

「討伐依頼?」

「ああ、実は……」


 そして少年は語り出す。そこにはヨム族の深刻な悩みが盛り込まれていた。

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