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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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決着、高遠&十針

 俺の接近に気付き、高遠も向かって来た。


「マサルーーーッ! 今までの雪辱、果たしてやらぁぁぁ!」


 俺の軌道に合わせて切っ先を向けてくる高遠。端から見りゃ一騎討ちそのものだ。


「へっ、果たしてみろよ、できるものならなぁ!」


 だが一騎討ちは望むところだ。トラップを駆使すりゃ空中戦でも負ける気はしねぇ。



「「いくぜぇぇぇぇぇぇ!」」



 俺と高遠の声が木霊する。間に障害となるものはなく、最悪は相討ちになる可能性を秘めつつ正面から激突――




「ほいっと♪」

「何ぃ!?」




 ――は避け、接触寸前で軌道修正。風圧トラップで僅かに真横へと逸れた。




 ズバァァァ!


「ピギャーーーッ!?」


 結果、すれ違い様にレッサーワイバーンを斬りつける事に成功。大きく傷を負ったためか急停止して(もが)き始めた。


「バ、バカ、斬られたくらいで暴れんな!」

「へへっ、将を射んとすればまず馬から――ってな。そんじゃ、アバヨ!」



 ドゴォ!



「うわぁぁぁ!」


 生成した壁を足場に向きを変え、ワイバーンごと高遠を蹴り落とす。そこから追撃を加えようと下を見たその時、何者かの影が覆い被さってきた。


「フッ、背後がお留守ですよ」

「しまった!」


 勝ち誇った十針の声が聴こえた。避けようにもトラップ発動より奴の詠唱が完成する。


「終わりです――ダークバレット!」


 振り向いた俺に向かって避けようがない無数の刃が放たれる。




「グガガガガァァァ!?」




 ――が、致命傷を覚悟した俺の前に誰かが撃ち落としたであろうガーゴイルが割り込み、運良く弾除けとなる。


「チィッ! 悪運の強い人ですね」

「悪いな。天は俺に味方してるぜ? テメェらに負けるなってな!」


 弾除けになったガーゴイルを踏み台にし、十針に向かって上昇する。コイツにはトラップが効かないからな。肉弾戦で叩くしかない。


「今度はこっちの番だ、覚悟しやがれ十針ぃぃぃ!」

「ククククッ、甘いですよ!」



 フッ……



「な!? 消えた?」



 ワイバーンに跨がっていたはずの十針が消えた。そういや前にもあったような……あ!



「思い出したぜ、影だ!」


 以前戦った時にも影を伝って背後を取りやがったんだ。今度も同じことを企んでるに違いない。


「影に潜んでるなら影を作らなきゃいい。ちょいと眩しいが、()()が必須だろう」


 俺の周辺に()()を複数召喚した。そう、アンデッド退治で活躍した丸型蛍光灯だ。すると直後、意外にも十針の断末魔が木霊した。


「ギャーーーーーーッ! や、やめろぉぉぉぉぉぉ! 体が――体が押し潰されるぅぅぅぅぅぅ!」


 レッサーワイバーンの翼から血まみれの十針が這い出てきた。僅かに残った影から辛うじて脱出したであろう十針は、肩から下を失っているというグロ過ぎる姿でワイバーンの背にしがみついている。影が失われるのと同時に自身の体も失くしちまったんだろうな。


「なんか拍子抜けだなぁ? さっきまでの余裕はどこ行ったよ?」

「あ"あ"……お"お"お"お"お"お"……」

「――って聞いちゃいねぇか」


 並の体ならとっくに死んでるであろう十針だが、ナイトメアに力を分け与えられた事で何とか生き延びてやがるんだろう。

 いや、この場合は生き地獄と言った方がいいのかもな。それでも影に潜らなきゃこんな事にはならなかったんだが。


「そんじゃ、サクッとトドメ刺すか」


 スプリングトラップによりレッサーワイバーンの上まで急上昇。十針を視界に納め――



 

「くたばれぇ――渋谷スクランブル十字!」

「ピギャァァァァァァ!」

「が"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」


 十針と同時にワイバーンの翼も斬り捨ててやった。重力に従いワイバーンもろとも落下していく。


「一丁上がり! ――っと」


 さぁて、高遠の野郎はどこ行った?



★★★★★



「な、なんという数……」


 空を埋めつくさんとするガーゴイルの群が次々に地上へと舞い降りて来ます。以前あったゾンビの群よりランクは上。苦戦は免れないでしょう。


「こうしては居られない。シルビア、ボクも出ることに――」

「待ってカルバーン」


 苦々しい表情で剣を手にしようとしたカルバーンを手で制します。


「貴方にもしもの事があれば士気に影響します」

「だが!」

「ご覧ください。幸いにしてゲイザー将軍を中心に我が軍は善戦している様子。遠くではマサル様も奮闘してくれています。将は後方に立つべしという言葉もございますし、ここは堪えてください」

「分かった……」


 とは言え、歯痒(はがゆ)いのはわたくしも同じ。カルバーンに向けた台詞は自身へ向けたものでもあります。動揺は見せず、凛としていなければ。

 そう心に決めて上空から目を離さないでいると、護衛たちが真上を指して騒ぎ始めます。


「マズイぞ、こっちにもガーゴイルが!」

「何をしている魔術隊、さっさと奴らを撃ち落とすんだ!」

「無茶を言う! こちらは結界を張るのに集中しているのだ、諸君らの弓で落とせ! このままでは数分も持たんぞ!」

「何だと!? ここにはシルビア様が居るのだ、絶対に護り抜け!」


 持って数分。逃げようにも城へ入るにはナイトメアの真下を走るしかなく、そうなれば奴の思う壺。城への退却は不可能と言ってよいでしょう。


「シルビア」

「カルバーン……」


 最後の盾となるべく、カルバーンが剣を取る。せめてもう少し耐えてくれたら……せめてマサル様が駆けつけてくださるまで耐えることができれば……


「クソッ、もぅ……ダメだ!」

「お、おいまさか!?」

「け……結界が……破ら……れ……」




 パリーーーーーーン!




「「「グギギギギィィィ!」」」

「ひっ……」


 結界が破れる音と共にガーゴイルも降下。上空から爪で抉らんとする姿に思わず顔を伏せてしまう。

 しかし、痛みを覚悟したわたくしの耳に、予想外な声が聴こえてきます。




「消え去りなさい――ファイヤーストーム!」

「「「グギャーーーーーーッ!」」」


 熱風が頬を撫でたかと思えばガーゴイルの断末魔が。それに今の声、どこかで聞いたような……



「情けないですわよお姉様。たかがガーゴイルごときでこの世の終わりみたいな顔はしないでくださいまし」

「そ、その声は……ブローナ!?」

「ええ。洗脳されていたとは言え、お姉様の玉座を狙った挙げ句に失敗して国から追われる立場に転落してしまったブローナですわ」


 いきなりのブローナ出現により兵たちは戸惑う。なぜなら彼女はクーデターを企てたとして指名手配をしているのですから、当然と言えば当然。

 しかしこれは表向きであって、わたくしとしては彼女を殺したくないがためにマサル様に匿ってもらうよう頼んでいたのです。


「ブローナ、なぜ貴女が?」

「国の一大事を黙って見てるなんて出来るものですか! それにわたくしにはキャシュマーがくれた膨大な魔力があるんですもの、使わなきゃ損と言うものですわ」


 損か得かは別として、複数のガーゴイルを一気に焼き払える魔法士など、我が軍には居ません。つまりはそれほどまでにブローナは強いという事です。


「さぁお前たち、ボサッとしている暇があるなら反撃に転じなさい。このわたくしが居る限り、お姉様には指1本触れさせはしません」

「「「ハッ!」」」


 指名手配されているのを忘れ、兵たちがブローナの指示で動き出します。


「ブローナ、貴女が居なければわたくしとカルバーンは死んでいたかもしれません。本当にありがとう」

「ボクからも礼を言うよ。ありがとうブローナ」

「礼は受けますが、戦いはまだ終わってませんわ。最後まで気を抜かないでくださいし。ほら、正面から来ましたわよ?」

「「ヒィッ!?」」


 悲鳴をあげたわたくし達の視線は、低空飛行してきたガーゴイルへ釘付けに。


「お、お願いします、ブローナ!」

「そんなに慌てなくともカルロスが防いでくれますわ」

「おうさ、オイラに任せとけ!」



 ガガガガガガッ!



 カルロス様が巨大ハンマーを盾に進軍を止めました。


「今だぞ、シュワユーズ!」

「はいは~い! それではみんな、ハイ、チーズ!」




 ズバッ!




「「「プギェェェェェェ!」」」


 固まっていたガーゴイルをシュワユーズ様が一刀両断。これで付近のガーゴイルは居なくなり、その隙に魔法士たちが結界を張り直していきます。


「これでしばらくは大丈夫だぞ!」

「戦闘が終わるまであたしたちが護衛するから」

「カルロス様、シュワユーズ様、お二人のご助力、感謝します」


 マサル様の仲間たちが加わり、これで形勢逆転――



「フハハハハ! ここでシルビアを葬れば今までの失敗はチャラ。おとなしくその首寄越せぇぇぇ!」

「ぐわっ!」

「がふっ!」


 敵の新手が護衛たちを一掃!? 黒を基調とした毒々しい服装の男、この者は何者……


「あ、アンタは確か――」

「へぇ、そこの女は覚えてやがったか」

「――マサルくんにコテンパンにされて敗走したザコキャラ!」

「んなっ!?」


 この異色を放つ男がザコ……。信じがたい事ですが、シュワユーズ様が仰るのなら真実なのでしょう。


「俺はザコじゃねぇ、高遠だ、タ・カ・ト・オ! これでもナイトメアにスカウトされた身だ。ザコだと思うんなら俺の一撃、防いでみやがれ――カーズスラッシュ!」


 ドッッッ!


「ぐぅぅぅ――――うぉっ!?」

「そんな、カルロスが防げないなんて!」


 やはり手慣れでしたか。剣技ではあちらが上のようです。


「そらそら、死にたい奴はかかってこい――カーズスラァァァッシュ!」

「くっ! 力だけは上のようだね、カルロスが飛ばされるはずだわ」

「そりゃナイトメアから力を分けてもらったんでな、強くなきゃ意味がねぇさ」


 何とかシュワユーズ様が防いでくれてますが、わたくしが重荷となり思うように攻めれない様子。


「ブローナ、シュワユーズ様の援護を!」

「こちらも新手のガーゴイルが迫ってますのよ。障壁を解いたら一気に崩壊ですわ」

「くぅ!」


 なんという歯痒さ! せめてわたくしに戦地に立てるくらいの剣技があれば!

 しかし、唇を噛むわたくしにブローナから意外な言葉が。


「慌てなくても大丈夫ですわ。あの肉食女なら葬ってくれるでしょうから」

「肉食……女?」


 聞き慣れない物騒なフレーズ。それの意味するところは……



「――っしゃあ! 獲物ゲットだぜぇぇぇ!」

「ゲフッ!?」


 横から現れた獣人がタカトウを蹴り倒したようです。なるほど、彼女がブローナの言う――


「クーガ様参上! ガーゴイルに飽々していたんだが丁度いい的が有るじゃないか。ちょっと相手してくれよ」

「ゲホッゲホッ……、ええぃクソがっ! 次から次に沸いて出やがって――死ねぇ!」



 スッ……



「なぁ!?」

「へっ、バカがよぉ! 至近距離で大振りな剣があたいに当たるわけねぇだろうが――よ!」


 ザスッ!


「ゲボッ!?」

「フン、人間に毛が生えた程度の強さかよ。本気出して損したぜ」


 さすがはマサル様のお仲間。難なく新手を撃破しました。


「大丈夫かーーーっ!? シルビア、カルバーン――って、クーガに先越されてたか」

「ええ。お陰で助かりました。マサル様はお怪我ありませんか?」

「この通りピンピンしてるぜ。けど休んでる暇はないみたいでな。さっきからロージアの救援要請が絶えないんだよ」


 そう言ってマサル様はナイトメアを指しました。奴の周辺ではロージア様とジャニオ様が足止めをしているようです。


「そういう訳でもうちっと辛抱してくれ。さっさと片付けてくるからさ!」

「はい、ご武運を」


キャラクター紹介


高遠たかとう

:4、5年ほど前に日本から転移してきた少年。転移と同時に得た特殊スキルを使ってイグリーシアで暴れまわっていたが、アイリに討伐されて一度は死ぬ。

 しかしナイトメアに取り込まれた事で別個体として復活し、主であるナイトメア復活のために働くことに。

 剣の腕前はマサルと同等ながらもトラップを駆使するマサルとは相性が悪く、最後まで見せ場を残すことなく敗れた。十針とはクラスメイト。


十針とばり

:高遠と共に日本から転移してきた少年。死亡から復活する過程まで高遠とほぼ同じ。高遠とは違って直接戦闘より魔法での遠距離攻撃や飛行による空中戦が得意。

 バリアーによりトラップを無効にするためマサルとの相性がよく、何度か勝機を掴みそうになるもあと1歩及ばず、策士策に溺れるが如くの最後に見舞われた。高遠とはクラスメイト。





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[気になる点] 「マサルーーーッ! 今までの雪辱、晴らしてやらぁぁぁ!」 正:雪辱を果たす
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