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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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西部貴族と南部貴族3

「お嬢、カダインの部隊が奥に逃げて行きます」

「周囲の部隊を蹴散らしつつ追跡します。クーガ、ブローナ、道を開けさせなさい」

「おっし、そんじゃ遠慮なく――」

「やってしまいますわよ!」



 ドゴーーーン!



「「「ゲッハァァァ!」」」


 闇に紛れた襲撃によりカダインの私兵は大混乱を起こしました。遠くの部隊は何が起こっているのかすら理解していないでしょう。


「オーーーッホッホッホッ! ご覧くださいませジャニオ様、敵兵がゴミのように燃え上がってますわ」

「ブ、ブローナ殿、なるべく殺さない方針だったはずですが……」

「敵対している相手を思いやるなんて、なんと心の広い方なのでしょう! でもご安心ください。体は多少溶けるでしょうが、死に至るほどではありませんわ」

「さ、左様で……」


 ブローナが放ったのは普通のファイヤーストームなのですがね。エンチャントを掛けた装備品の影響でかなり威力が増しているのでしょう。

 ですがそれを自分の実力のように吹聴されるのは納得がいかないので、後でキッチリと分からせるつもりですが。


「も、もうダメだ、逃げろ~!」

「バカ、押すなよ!」

「うるせぇ、俺が先に逃げるんだ!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」


 ついに極限状態に達した兵士たちが敗走を始めました。燃えカスとなった武具を棄て、四方八方へと散り散りに。


「これで見透しが良くなりました。カダインを捕まえましょう」

「よし来た! 大将首はあたいがいただくぜぇ!」

「首はつけたままでお願いしますね」

「分かってらぁ!」


 残り僅かの私兵を伴ったカダインをクーガが追いかけます。捕えるのは時間の問題――




「き~よ~し~~」



 おや?



「こ~のよ~る~~」




 これは……歌?




「ででででで、出たーーーっ! 返り血の聖歌だーーーっ!」

「お、おい貴様、どこへ行く!?」

「お、俺はまだ死にたくねぇぇぇ!」

「ええぃ貴様もか! どいつもこいつも役立たずが!」


 妙な歌が聴こえ始めた途端、僅かな私兵も逃げて行きました。これで残るはカダインのみ。

 しかし妙な歌は流れ続けます。



「ほ~しは~~、ひ~かり~~」



 ふむ。よくよく聞いてみると、これはクリスマスソングというものですね。何故このような不釣り合いな場所に……。


「おっしゃ、捕まえたぜぇ!」

「ぐぬぬぬぬ……離せ、粗暴な女が! ワシはホーヨンの領主カダインであるぞ!」

「るせぇ、知ってて捕まえたんだよ!」

「ではやはり王家の手先か!」


 ポトッ……


 おや? カダインの懐から何かが落ちましたね。どれどれ…………これは!


「皆さん、今すぐ森を脱出しますよ!」

「へ?」

「何ですの騒々しい」

「いいから早く!」


 ただならぬ雰囲気を察したジャニオがブローナを抱えて走り出し、クーガも首を傾げつつカダインを引っ掴んだまま追いかけます。

 皆の先頭を走りつつも聴こえる歌に耳を傾けると……



「ね~むり~たも~~う~~」



 いけない、もうすぐ歌が終わってしまう!

 先ほど拾った紙には【返り血の聖歌】について書かれていたのです。あの内容が正しければ大変な事に!



「い~とや~す~く~~」


 マズイです、歌が終わってしまった!


「ええぃ離せ、この愚民共め! このカダイン様に逆らうとどうなるか――ひぐっ!?」

「うおっ! 何なんだよこれ!?」


 暗闇から伸びてきた何かがカダインとクーガに巻き付き、宙吊りにしてしまいました。


「これは蔓? いったいどこから――」

「お嬢、樹木です! 周囲の樹木が動いています」

「なんですって!?」


 目を凝らせば木々に囲まれていました。逃がさないつもりのようです。注意深く様子を(うかが)っていると、木々の後ろからエメラルドに輝く樹木が現れました。

 しかしよく見ると樹木に寄生された女? いえ、寄生されたように見えるこの女は……




「ドライアドプリンセス!」




 ドライアドとは樹木の妖精。中でも魔力が高く、木々を操るスキルを要しているのはドライアドプリンセスと呼ばれ、妖精よりも精霊に近いと言われています。


「チッ、こんなところでAランク(A級)かよ!」



 ズバズバッ!



 絡まった蔓を爪で切り落とし、クーガが自力で脱出しました。しかし、カダインの蔓は絡まったままで、グイグイと締め上げられていきます。


「グアァァァァァァ!? や、やめろぉぉぉぉぉぉ!」

「憎い……憎い憎い……憎い憎い憎い憎い!」


 キレイなエメラルドからは想像もつかない程のドス黒いオーラが立ち上がっています。


「ワワ、ワシが何をした!? ワシはお前なんぞ知らん! 頼むから助け――」

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!」

「グアァァ……ァ……ガ……」


 ボキボキという嫌な音を立てカダインは喋らなくなりました。

 カダインに恨みが? いや、クーガも掴み上げた事から無差別と言ってよいでしょう。更に怒りに満ちているためか言葉が通じるようにも見えません。

 失意の中で死したサクヤ。転移者なのが災いして上級魔物に成り果てましたか。


「戦うしかありませんね。クーガ、しばし相手をお願いします。エンチャントの効いた装備を身に付けた貴女なら対等に戦えるでしょう?」

「格上相手に無茶振りにも程がある! だが……」



 チャキ!



「おもしれぇ、やってやるぜ!」


 両手の爪をギラつかせながら木々を切り裂くクーガ。サクヤもそれに反応し、蔓を増やして絡め取ろうとしてきます。

 その間にも操られた樹木がこちらを捕えようと迫るので、私の氷魔法で足止めし、ジャニオに抱えられたブローナが燃やすという動きが繰り返されます。


「憎い憎い憎い憎い、この世の全てが憎いぃぃぃ!」

「へっ、二度も同じ手に掛かるかよ!」

「ぐぐぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」



 バスッ!



「――――チィ! 掠ったか」


 ひらりと蔓をかわしていくクーガに業を煮やしたのか、捕える動きから(むち)のように打ち付ける動きに変化させましたか。理性を失いつつも相手を倒すという思考は消えないようですね。ならばこちらも――



 シューーーーーーン!



「コボルトたち、周囲の木へ火矢を射よ!」

「「「ワフッ!」」」


 急遽召喚したコボルトが次々と火矢を放ちます。火と植物、相性はご覧の通り。


「さぁブローナ、貴女も加勢を!」

「だからわたくしに指図するなと――ファイヤーストーム!」


 クーガが善戦しているお陰でこちらへの攻撃が手薄になっています。その間に邪魔な木々を焼き尽くしてしまいましょう。


「アアアア燃えるぅ! 憎い! 痛い! 憎いぃぃぃ!」


 効いてるようですね。魔力を木々に裂いているせいで焼失時に痛みとして伝わるのでしょう。さて、今のうちに探さなければ……


「ちょっとロージア、さっきから地面をほじくり返して土遊びですか!? わたくしやクーガとコボルト(獣たち)に働かせておきなが、貴女は何をしていますの!?」

「亡骸です。あのドライアドプリンセスは怨念が練り固まったもの。サクヤ本人の亡骸は別にあるはず」


 私の予想が正しければ、残っている亡骸を完全に消滅させることでドライアドプリンセスも消え失せるはず。

 これは一種の賭けです。万が一にも無かった場合、無理をせずダンジョンに帰るほかありません。


「お嬢、探し物ならお任せを。ゲットスキャン!」


 そうでした。プロトガーディアンのジャニオには探しているものを見つけ出すゲットスキャンというスキルが有ったのです。すっかり忘れてました。


「見つけました。ここから西に3メートル。北に10メートル地点です」

「お手柄ですジャニオ」


 即座に上空へ舞い上がり、氷のシールドを(まと)って指定された地点に狙いを定めます。


「よく分からんが見つかったのか? あたいはそろそろ限界だぞ」


 エンチャントはあるもののやはりランクの差は覆りませんでしたか。被弾も増えつつあるようですし、早く回復させなくては。


「安心なさいクーガ。これで終わりに――」



 ゴゴゴゴゴゴ……



「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ゆるさないぃぃぃぃぃぃ!」

「ハッ!? 魔力が増大している!」



 これは大魔法を放つ前兆! これを食らったら無事じゃ済みません!



「んだよコイツ! いったい何をしようってんだ!?」

「強力な全体魔法です! 辺り一帯の森が消滅する程の魔力を開放する気です!」

「バッキャロゥ! こんなところで死にたくねぇぞ!? 何とかしやがれ!」

「私も死ぬ気はありません!」



 こうなればスピード勝負です。サクヤの魔法より先に、地中に埋まった亡骸を粉砕しなければ!



「すべてを――すべてを消し去ってやるぅぅぅぅぅぅ!」

「させません!」



 ドライアドプリンセスが濃厚なエメラルドの輝きをいっそう激しくし、大魔法を発動させます――が、私も同時に地面へと到達し……




「――ラウンドシェイカーーーーーー!」

「――アイシクルメテオアターーーック!」




 ドドーーーーーーン!




「ギャァァァァァァァァァァァァ!」




 大きなクレーターが出来上がるのと同時にドライアドプリンセスが悲鳴をあげ、急速に萎んだ挙げ句に動かなくなりました。見た目は只の樹木でしかありません。


「ふぅ。何とか倒せましたね。際どい状況でしたが」

「ほ、本当に倒したんですの? 小さくなっただけというのは無しですわよ?」

「それはありません」


 魔力が感知できなくなりましたからね。怨念と共に消え去ったのでしょう。できる事なら乱暴な手段は取りたくなったのですが、相手はAランク。手加減できる存在ではなかったのです。


「おせぇんだよ、ったく……。筋肉痛になったらどうしてくれんだ。イテテテ……」

「クーガもよく耐えてくれました」


 あれで理性を保っていたら勝てなかったでしょう。それこそアイリさんを頼る他なかったかもしれません。


「それにしても最後のアレは何なんですの? 地面に体当たりをかますなんて、まるで脳筋のマサルのようでしたわ」

「これはブローナ殿に同意です。まるでマスターのようでしたよ、お嬢」

「フフ、マサルさんの色に染まってきたのかもしれませんね」


 肝心のカダインも死んでしまいましたが、まぁそれはそれ。手間が省けたと思って、引き続き南部貴族と接触していきましょう。


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