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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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潜伏のネクロマンサー

「さて、悔しさに歪む顔を眺めていたいところだが時間が惜しいのでね。手早く済ませましょうか」



 シュシュシュ~~~ン!



「な!? ゾンビやスケルトンを召喚しただと!?」

「おのれデヴォン、城に押し寄せてるアンデッドも貴様の仕業だな!?」

「フハハハハ! その通りですよ。しかも女王自らがこうして内部に招いてくれたのです。恨むなら無用心な女王を恨むのですね」

「クッ……」



 ゴゴゴゴゴ……



「む……部屋全体が揺れている? 妙だな、大型アンデッドを召喚した覚えはな――」



 ボゴン!



「フゴッ!?」



 ロージアの機転により、ダンジョン入口が城に直通した。繋がった際に何かを打ち上げた気がしたが、真上に兵士でも居たのか?

 だったらすまん。後で手当てをしてやるから、今は見逃してくれ。


「――っと、無事に帰ってこれたぜ」

「どこか無事ですかマサルさん! 貴方が急かすから出現場所がズレてしまったではありませんか! ご覧なさい、あの男を。天井に頭を打って悶絶(もんぜつ)していますよ!?」


 あ、ホントだ。なぜかシルビアも居るし、ここは素直に謝っておこう。


「やぁシルビア、今日も良い天気で――」

「ありがとう御座います、マサル様!」

「うぉっと!?」


 な、なんだ、いきなり抱きつかれたぞ? どういう事かと視線を漂わせると、悶絶している男と目が合う。

 つ~かこの男……


「お、おのれぇ……よくも私の邪魔を……」

「――って、よく見りゃテメェ、デヴォンに成り代わったネクロマンサーじゃねぇか! よくも騙してくれたなこの野郎!」


 殴りかかろうとした俺の前にアンデッド共が立ち塞がる。


「邪魔だ、どけぇ!」ピカーーーッ!

「「「ヴヴァァァ……」」」


 球体型蛍光灯をその場に掲げ、間近のアンデッドを消滅させた。

 後はネクロマンサーただ1人。ロージアや他の仲間が奴を逃がすまいと取り囲む。


「さぁてネクロ野郎、テメェの目的を言ってもらおうか」

「ク、クソゥ、まさかこうも早く戻ってくるとはな。貴様を少々侮っておったわ。キャシュマーの情報ではダンジョン機能を使いこなせていないという話だったが……」

「キャシュマーだと?」


 こいつ、キャシュマーの仲間か。


「まぁよい。せっかく対面したのだ、私の目的を教えてやろう。目的はただ1つ、我が主を復活させる事だ」

「主……だと? そいつは何もんだ?」

「焦らずともいずれ分かるだろうさ。もちろん私が主を復活させる事でな。さらばだ!」



 シュン!



「き、消えた!?」

「マサルさん、ダンジョン機能です。恐らくはダンジョンに帰還したのだと思われます」

「チッ、逃がしたか……」


 でも逃がさないぜ? 都合よく使われた借りは返さなきゃな。まぁともかく……


「大丈夫だったかシルビア?」

「はい、お陰さまで。またマサル様に助けられましたね。それにそちらは……」

「彼らとはダンジョン攻略の最中に知り合ったんだ。冒険者パーティの――」

「【夢の翼】だ。これでもAランクのパーティなんだぜ!」

「「「Aランク!」」」


 シルビアも兵士もみんなビビってやがる。それだけAランクが別格ってことだ。


「【夢の翼】の皆様、それにマサル様と仲間の方々。わたくしは救われましたが城の外には多数のアンデッドが残っております。実に勝手だとは思いますが、アンデッドの掃討にお力をお貸しください」

「俺は構わねぇよ? そのつもりで戻ったんだしな。レックスたちはどうする? 王都つっても広いから、手を貸してくれると有り難いんだが」

「へへ、言ったろ? ダンジョン攻略が空振りに終わったって。まだまだ消化不良だし、俺たちも手伝うぜ。なぁみんな?」


 レックスが仲間に問い掛けると、3人とも力強く頷いて見せた。


「ありがとう御座います! もちろん報酬もお出ししますので、どうかご無事でご帰還くださいませ」

「「任せとけ!」」


 俺とレックスは同時にサムズアップをしてみせ、城の外へと駆け出す。城門前ではアンデッドが門を壊そうと群れており、それを排除するため兵士たちが城壁の上から矢を放っている。

 そこで俺たちは城壁を飛び越え、落下と同時に付近のアンデッド共を蹴散らした。


「お勤めご苦労さん!」

「後は俺たちが引き受けた!」


 ズズシャーーーーーーッ!


 同時の一撃だったが、俺の数体に対してレックスは百体を越えるかの破壊力を見せる。さすがはAランクの冒険者だな。どうやったらそんなに強くなれるのか教えて欲しいもんだ。


「おお、あれはマサル殿!」

「もう1人の青年も凄いぞ!? 彼らが来たからには百人力だ!」

「「「おおおーーーっ!」」」


 兵士たちの歓声を背中に受け、俺とレックスはニヤリと笑う。そこに遅れて仲間たちが駆けつけた。


「二人とも、雑魚と侮ると足元を掬われますよ。少しはご自重ください」

「ロージアの言う通りだぞ。ったく、少しはマシになったかと思ったら、ま~た昔の悪い癖が出てやがる。キチンと考えながら行動しろってアイリに教わったろ」

「わ、わ~ってるよ……」


 ふ~ん? アルバが言うアイリって人がレックスの師匠なのか。機会があれば俺も教わってみたいもんだ。


「じゃあ自重するからアルバたちも手伝えよな」

「オッケィ。ルークとユユはいつも通りにサポートを頼むな」

「分かってますよ。リーダーを放っておくと後々大変ですからね」

「……任せて」

「おっし、いくぜぇぇぇ!」


 【夢の翼】の4人が頷き合うと、レックスとアルバがアンデッドの群に突っ込んでいく。

 

「おいおい、さっき自重しろって言われたばかりじゃ――――えっ!?」


 勢いよく突っ込んだらアンデッドに囲まれるぞと俺も仲間も兵士たちも思ったはず。

 しかし予想とは裏腹に左右をルークとユユがカバーをし、アンデッドを寄せ付けない。素人目に見てもかなりバランスの取れた戦いを見せている。

 その戦いぶりに見とれていると、横に並んだロージアがクスクスと笑いながら告げてきた。


「フフ、彼らも初めは無名の冒険者だったようですよ。それを見かねた――のかは不明ですが、知人のダンマスが鍛え上げたのです」


 また知人のダンマスか。益々興味深くなってきたな。


「ちょっとマサル、何をボサッとしてるんですの?」

「ん?」

「ん――じゃありません! このままだとアイツらだけの手柄にされてしまいますわ!」

「ブローナの言う通りだぜ? オイラたちも派手に暴れようじゃないか!」

「おぅよ、弱肉強食を生き抜いて来たあたいの力を見せてやる!」



 【夢の翼】に触発され、俺の仲間も暴れ始める。広い王都を東に西にと駆け回り、アンデッドを殲滅し終えた頃にはすっかり日が傾き始めている。

 シルビアに掃討が完了した事を告げた後に冒険者ギルドに立ち寄ったところ、あちこちから歓声が上がる騒ぎになった。



「本物だ、本物の【夢の翼】だ!」

「まだ二十歳かそこらなんだよな!? すげぇ実力だ!」

「マサルさんたちと一緒にアンデッドを殲滅したらしいぜ? あ~あ、俺も本調子だったらな~」

「アホか。お前は一目散に王都から脱出しただろ」


 さすがはAランクパーティってとこか? 凄いカリスマ的扱いだ。

 そんなカリスマ的リーダーであるレックスが片手を挙げ、ロビー全体に聴こえるように発言する。


「みんな、聞いてくれ。今回の騒動を起こした犯人はネクロマンサーだという事が分かった。奴はここのギルマスであるデヴォンを殺し、本人に成り済まして城を襲撃したんだ」

「「「ええっ!?」」」


 犯人はネクロマンサー。さらにギルマスに成り代わったと知り、冒険者や職員に動揺か広がる。

 そりゃそうだ。ネクロマンサーはともかく実力者であるギルマスが殺されたんだ。ざわつくのも仕方がない。


「だが安心してほしい。俺たち【夢の翼】と、彼ら――え~と…………マサルのパーティは何て名前だ?」

「え? ……ああ、そう言えば決めてなかったな」

「「「おいおい」」」


 有名成りつつあったものの、俺のパーティ名が無かった事に対して更にざわつきが大きくなった。うん、そうだな。せっかくだし、この機会に決めちまうか。

 そこへ大変お節介ながらも周りの連中がパーティ名を上げ始めた。


「豪腕ルーキーなんてどうだ?」

「いやいや、オーバーキルだろ」

「超フルスイングとか良くね?」

「ここはタイムリーにゴブリンキラーとか」

「ジャニオ様親衛隊!」

「凄ぇよマサルさんだな」

「優良コネ大使」

「いや、ニュータイプだろ」


 う~ん、どれもピンと来ないなぁ。つ~か優良コネ大使ってなんだ。カルバーンやシルビアとのコネが羨ましいのか?


「やっぱ自分たちで考えるよ。パーティ名は――そうだなぁ……」


 なんか今すぐ決めろ的な雰囲気になっちまってるし、パッと浮かんだやつにするか。


「よし、決めた。今日から俺たちパーティは【ヤオヨロズ】だ」

「「「おおっ!」」」パチパチパチ!


 多分意味は分かってないんだろうが、パチパチと拍手が送られる。

 ……で、なんでパーティ名を決める流れになったんだっけって思ったところで、再度レックスが口を開いた事で思い出した。


「……コホン。安心してくれみんな。俺たち【夢の翼】と【ヤオヨロズ】が必ずネクロマンサーを退治してみせる! そこで協力して欲しいんだけど、ネクロマンサーとそいつのダンジョンに関して知ってるやつがいたら教えて欲しいんだ」


 しかし、やはりと言うかなんと言うか、冒険者たちは一斉に考え込むものの誰からも有力な話は出てこない。そう簡単には行かないかと諦めかけたころ、「あ、そういえば」と言いつつ挙手をしたギルド職員が現れた。


「ギルマスのデヴォンさんは王都の外に別荘を建てていたはずです。人が寄り付かない場所ですし、身を隠すのならもってこいかと。あ、でもギルマス本人とネクロマンサーは別人でしたね。ごめんなさい」


 恥ずかしそうに後ろへ下がるギルド職員。だが俺たちにとっては願ったりな情報だった。


「貴重な情報を提供していただき、誠にありがとう御座います」


 職員に礼を述べたロージアがこちらに振り返って頷く。ネクロマンサーは本人に成り済ますだけじゃない、記憶も共有されるんだ。

 つまり奴の居場所は……


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