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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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王都の危機! 迫りくるアンデッド

「偽……者?」

「はい。ネクロマンサーは死者を使役するだけでなく、殺した相手と入れ替わる事もあるのだとか。ギルマスであるデヴォンに成り代わるメリットは多数とあれば、喜んで利用するでしょうね」


 なんてこった。つまり俺たちはネクロマンサーの依頼で遠路遙々(えんろはるばる)やって来たわけだ。


「あ~~~クソッ、とんだ無駄足じゃねぇか!」

「無駄足だけではありませんよマスター。ギルマスに成り代わったネクロマンサーは王都の中に入り込んでいるのですから、急がなければ王都がアンデッドの巣窟(そうくつ)と化してしまいます」


 あ……




 あれあれ?


「ちょちょ、ちょっと待て。じゃあ、俺たちをここに寄越した理由って……」

「王都から追い出すためでしょう」

「ウガーーーッ! やられたぁ!」


 ちきしょうな腐れネクロマンサーめ、俺たちが居ない間に王都を陥落させる気か!


「マズイぜロージア! 急いで王都に戻らないと!」

「はい、急ぎダンジョンを脱出しましょう」


 出口へ走りながらもこれまで獲た情報を整理していく。

 ギルマスのデヴォンはヨム族からの依頼でこのダンジョンの調査に訪れた。だが不運にもネクロマンサーの手に掛かり死亡。しかし当のネクロマンサーはこれ幸いとデヴォンに成り済まし、王都へ帰還。まんまと内部に入り込むと、邪魔者である俺たちを遠ざけて王都をアンデッドで埋め尽くす。こんな感じか。


「おかしいとは思ったのです。ダンジョンでありながらも罠が1つも無く、無意味な小部屋があるだけ。恐らく小部屋にはスポナーがあったはずです。そこから沸き出たアンデッドが侵入者を仲間へと引きずり込んだのでしょう」


 そうか。あの小部屋はスポナー部屋だったって事か。


「マサルさんをサポートする立場であるならば、もっと早くに気付くべきでした。申し訳ありません」

「一般人でそこまで深読みできる奴はいないよ。ロージアのせいじゃない」

「いえ、これでは()()()()に等しい私のプライドが……」



 んん? 全知全能とな?



「ロージア、今の台詞……」

「おっとすみません。私とした事が余計な事を口走ってしまったようです。今の発言は忘れてください」

「お、おぅ……」


 急展開で混乱してるのかもしれない。それに今気にする事じゃないし、一刻も早く王都に駆けつける事を考えないと。


「やっと出口だ――――が、ここから王都までが遠いなぁ。馬車を捕まえるにしてもここらじゃ無理だ」


 俺とロージアだけならひとっ飛びだが、他の仲間は……

 と、ここでロージアから驚くべき提案が。


「でしたらダンジョンの入口を設置してはいかがでしょう? そうすればダンジョンへの帰還は叶います」

「そうか、その手があったか!」




「――って、それだと王都に戻れなくなるやん?」

「いえ、多少の時間――恐らく一時間程度でしょうか? それとややコストが掛かりますが、1度設置した場所への入口変更は可能となっています」

「マジで!? という事は……」



 今日中に王都まで帰還できる!

 ならばと墓石で偽装したダンジョン入口を設置してみた。すると傍らで見ていたレックスが目を輝かせて……



「すげっ! お前ってダンジョンマスターなのかよ!? 入口変えられる奴なんて初めて見たぜ!」

「ああ、やっぱ珍しいか?」

「おぅ! 俺の知ってる最強のダンマスでさえ入口を変えるなんて不可能とか言ってたくらいだしな!」


 なんだその【ぼくがしっているさいょうのダンマス】みたいな語りは。すんげ~胡散臭いんだが。

 つ~かダンマスの知り合いがいんのかよ。まさかロージアの知ってる奴と同じ奴か? 互いに知り合いみたいだし、きっとそうなんだろう。


「確か1時間で王都に行けるって言ってたよな? 俺たちも空振りでつまらねぇし、付いてってもいいか? いいよな? な? な?」

「お、おい、分かったから落ち着け――」

「っしゃあ、久々のラーツガルフだぜ!」

「あ、こら、勝手に――」

「あ~~~! あたいが一番乗りだぞ! 獣人のくせに生意気だ!」

「いや、クーガもかよ!」


 一番を争ってレックスとクーガが飛び込んで行った。【夢の翼】では日常的な光景らしく、彼らと俺たち揃って肩を竦める。

 っていうかクーガ。その台詞は獣人に偽装している自分自身を真っ向から否定してるに等しいが。多分本人は何も考えてないんだろうな、はぁ……。


 しかし、そんな二人が1分も経たないうちに飛び出して来た。



「「臭いを何とかしろーーーっ!」」



 シュールストレミングを開放してから何日も経つが、いまだに猛威を奮っているらしい。なんという恐ろしい兵器なんだ。


「こりゃ防毒マスクが必要かもな」

「DPの消費がバカにならないので我慢してください」

「ロージアは使ってただろ」

「……気のせいです」

「いや、しっかり見てたからな? 誤魔化しても無駄だぞ」

「では普通のマスクにしましょう。本当にお高いので」


 そんなお高いのをキミは召喚したんだね。ロージアのためだと思えば仕方ないかもだが。


 まぁ色々と有ったがレックスたち【夢の翼】にも協力してもらい、恐らくは戦闘になるであろうラーツガルフの王都へと向かう事となった。



★★★★★



 時を同じくしてラーツガルフの王都。昨夜に発生したアンデッドが大挙して城へと押し寄せていた。

 あまりの数に嫌な汗を流す兵士たちだが、朝になれば形勢は逆転する――そう信じて凌いでいたものの、天候は生憎の雨。雨雲により日の光は遮られ、アンデッドの弱体化は阻止された形だ。


「クッ、なんでこんな時に雨なんだ!」

「せめて弱体化してくれれば……」

「弱気になるな、剣を取れ、我々が倒れれば一貫の終わりだぞ!」

「うおおおおっ! こっから先は死んでも通さん!」


 尚も激しさを増す攻防。そんな状況を不安そうに見下ろす人物がいた。




「大量のアンデッドが我が城を……」


 城門を破ろうとするアンデッドと、それを迎え撃つ正規軍。そんな状況を自室から見下ろす事しかできない自分に腹が立ちます。

 皆が敵に立ち向かっているというのに自分だけ安全な場所でぬくぬくとしている。このような事が許されるのでしょうか。

 そうです、ラーツガルフはわたくしが継いだのです。わたくしの手で護らなければ!



 スチャ……



「シ、シルビア様、まさか自ら討伐に向かうおつもりで!?」


 剣を取ったわたくしを見て側近がオロオロと慌て出しますが、既に心は決まっています。


「君主が兵を鼓舞するのに何の問題がありましょう? 最前線にいる者は己の命をかけて戦っているのです。僅かでも彼らの力になれるのならば、それに越したことはありません」

「そんなの無茶です! シルビア様にもしもの事があれば、この国は再び危機的状況を迎えるのですよ!?」

「今こそ正に危機ではありませんか。このような事態だからこそ、わたくしが行動を起こさなければならないのです」

「で、ですが…………あ、そ、そうだ!」


 尚も食い下がる側近が、ある人物の名を口にします。


「こういう時こそ冒険者のマサル様を頼ってみてはいかがでしょう? この様子だと城下にもアンデッドが蔓延(はびこ)っているはず。ならば彼らも気付いているでしょうし、いずれはこちらに……」

「それは希望的憶測です。彼らは数日前にダンジョン攻略に出向いたとギルドマスターのデヴォンが言っておりました。すぐには戻って来れないでしょう」

「そんな……」


 膝から崩れるように側近がへたり込みます。

 しかし、これは彼らばかりに頼るなという神からの忠告。わたくし自らが乗り越えねばならない試練なのでしょう。

 ならば乗り越えるしかない!



 コンコン!



「失礼します、シルビア王女。冒険者ギルドのデヴォン殿が謁見を求めてきました」


 扉越しにギルマスの来訪の知らせが。


「面会ならばアンデッドを殲滅した後に致します」

「そ、それが、此度のアンデッド襲撃について、上手く撃退する方法があるとの事で」

「本当ですか!? ではすぐに謁見――いえ、形式に拘ってる暇はありません。今すぐ応接室へ通しなさい」

「か、かしこまりました!」


 伝令が去ってから間も無く。冒険者ギルドのギルドマスターであるデヴォン殿が入室したとの知らせを受け、わたくしも応接室へとやって来ました。

 近衛兵二人と側近のみという手薄な状況ですが、向かいに座っているのは貴族たちからも信用されているギルマスのデヴォン。万が一はないでしょう。

 寧ろ何故デヴォン殿が1人だけなのか、アンデッドの群をどのようにして掻き分けて来たのか、大変に気になるところ。

 いえ、分かっています。今に置いてはそれを気にするべきではないという事を。


「……コホン。シルビア様におかれましては、大変ご機嫌うるわしゅう――」

「前置きは省いて構いません。本題の撃退する方法というものを答えなさい」

「…………」


 少々語気を強めたのが気に食わなかったのでしょうか、突如としてデヴォンは黙り込んでしまいます。

 そのような事を気にしてる場合ではないというのに――そう思い、再度答えるよう促そうとしたその時、デヴォンが不気味な含み笑いをし始めました。


「ククククク……」

「……何がおかしいのです?」

「いえいえ、いまだご自分の立場を分かっていらっしゃらないのだなと思うと笑いが込み上げて参りまして」

「な、何を……」


 言ってる意味が分からない。この男は何を言っているのか。混乱するわたくしの代わりに、側近がデヴォンへと詰め寄ります。


「デヴォン殿、非公式の会談とはいえ無礼が過ぎますよ? 答える気がないのなら、即刻出ていってもらっても――」

「おっと、それは困ります。私の目的はこの国を掌握する事ですので」

「しょ、しょしょ、掌握!?」


 デヴォン殿以外の全員が混乱する。いったい何を考えているのかと。

 しかし、デヴォンの発言から我々と敵対するのを望んでいる様子。ならばそのように致しましょう。


「応接室です。すぐ来るように」


 緊急要請で使用するアイテムで助けを求めました。これで近くにいる兵士たちは飛んでくる事でしょう。しかし……


「おや、手にしているブローチはマジックアイテムですかな? だったら残念。この部屋の魔力は制御させていただきましたので、貴女の声は室外に届きません」

「な、なんですって!?」


 すぐに立ち上がると、二人いる近衛兵の後ろへと匿われます。まさかデヴォンがこのようや真似をしてくるとは……


「クハハハハ! さて、たった二人の護衛だけでどこまで持つかな? ククククク……」


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