夢と記憶と赤いローブ
「―――――……あなたが聖恋さんね…? 」
「うっ…」
激しい頭痛がして目が覚めた。
「あれ?誰かに呼ばれた気がしたんだけど…? 」
まだ焦点が合わない目をこすって無理やり自分の状況を確認しようとしたのだけれども、なぜか何も見えなかった。
「ここはどこ…? なんで、何も見えないの!? 」
焦って上半身を起こそうとするけれど、後頭部が激しく痛んで起きようとしてもできない。
「痛い……。なんで? どうして、頭が痛いの!? 頭をぶつけたってこんなに頭の中から激しい痛みがすることなんてないはず。脳震盪でもないみたいだし…」
そしてふと思った。
「あれ…? なんだかだるい…? だるいというか…力が入らない、みたいな? 意識がはっきりとしないし、息がしづらい……」
それでも、いつまでも何もしなかったら何も始まらない。まずは、ここがどういうところなのか、知らないと!
私は何とか上半身を起き上がらせて辺りを見回した。
「…それでもやっぱり何も見えないか…」
仕方なく立ち上がって、誰かいないか探してみる。
立ち上がってみると、さっきまでの頭痛は全くしなくなって、歩くこともすごく楽になった。体がふわふわして、脚を動かすのも手を動かすのもまるで空気のように軽い。私も空気になったかのよう。
しばらくして辺りがぼんやりとしてきて、真っ暗なところが少しずつ白くなってきて灰色になっていく。
「何、これ? 」
何が起こるのか、ここにきて初めてのことに恐怖を覚えた。
次第に明るくなってきて、最後は電気がついたかのようになる。そこからだんだんと色がついてきた。
「…これ…何となく人の形に似ているような……? 」
そして、はっきりと色がついたとき、確信した。これは、明らかに人型で、でも、人ではないもの。
もう少しで何かわかりそうなとき、私の意識はその光の中に吸い込まれていった。
「……聖恋さん…あなた…」
「え? 」
……誰? そして…さっきの夢は何?
その時、目の前が強く光って女性が現れた。
「あなたは、誰? さっきの声の人? 」
「……」
何もしゃべらない。
この女性は、決して若くはないけれど、それでも美しい。赤いローブをまとっていて、赤い帽子をかぶっていた。
「…………イオを、よろしくお願いします」
その女性は消え入りそうな小さい小さい声で、でも透き通るような声で、そんなことを言った。
そして元から透き通るような白い肌がさらに白くなっていき、肌は本当に透き通ってきていた。消えてしまう!!
「待って! あなたは…」
言いかけたときに、ついに女性は消えてしまった。
「……行っちゃった……」
伸ばしかけた腕を力なくだらんとおろして途方に暮れてしまった。
「あの人は誰? ここはどこなの? …そして、……どうやって帰ればいいの!? 」
その時、ふらりと体が揺れた。
「あ…れ……? 意識が…遠のいて…」
「………ん! ……れん! 聖恋! 」
「ん……」
私はまた、誰かに呼ばれた気がして目を開く。
「あれ? ここ…私の部屋? 」
「聖恋!! 」
「ぐは!! 」
いきなりイオに飛びつかれて、首がしまった。
「イオ! 急にどうしたの!? 」
イオは落ち着きを取り戻したようで、ゆっくりと私から退く。
そうすることで私の部屋の全体を見れるようになって、その時初めて、ヴァルやあの少女がいることに気づいた。
「……覚えてないのか? 」
「覚えてないって、何を? 」
「「「……」」」
少女はそのままそっぽを向いたまま。イオとヴァルは目を見合わせたまま黙り込んでしまった。
「聖恋……」
私はイオとヴァルに見つめられたまま時が過ぎた。
こんにちは、桜騎です!今回はミステリアス(?)なキャラを出してみました!次回はこのキャラの正体がわかるかも!?
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!