プロローグ
「よっしゃああああ」
網に獲物がかかった。
漢らしく雄たけびを上げるあたしに、うれしそうに微笑んでくれるのは黒域の王子。
只今、黒域の王子と悪夢狩りをしている。悪夢を捕まえるための網を片手に、暗黒の森を颯爽と駆け抜けていく。走っている時の風はすごく気持ちがいいし、隣に王子がいるから、もう最高。空まで跳びあがってしまいそうだ。
おっと、紹介を忘れていた。
王子の名は、レント。漆黒の髪と瞳をもつ、この国きっての美少年。控え目だけれど気が利いて、頭も運動神経もいいからとっても評判な王子。
ちなみにあたしは、リュート。女だけど漢まさりで、よく「綺麗な格好したら可愛いのに」と残念がられる。王子のお世話係だ。
今日は王の命令で、暗黒の森で悪夢狩りをしていた。最近、悪夢が繁殖しているという噂は耳にしていたけれど、ここまで増えているとは思わなかった。
ここで繁殖した悪夢は、国民にとりつく。悪夢にとりつかれた国民は狂ってしまい、最後には死んでしまう。それを阻止するために狩りをする。
「本当は、番人がいるんですけどね。」
「ついこの間、とりつかれちゃったからね。」
つぶやいた声に反応してくれたのは、もちろん王子。
そう、ここの番人が悪夢にとりつかれてしまい、しばらくここは野放し状態になっていたんだ。
「もう少しだよ。あと三つくらいつかまえたら、帰ってご飯だ。残りは明日にしよう。」
世話係のあたしまで励ましてくれる王子。なんてやさしいんだろう。
「はい!」
あたしは力強くうなずいて、まだ悪夢がうろうろしている森へ走って行った。