前へ目次 次へ PR 37/38 『40:「みかん」』 「――ひっ……!」 ミカンを食べていると、背筋に悪寒がはしった。 肩が震え、背中が縮んだ。 振り向いてはいけない、と本能が警告し、脂汗が流れた。 固まった筋肉を無理に動かし確認する。 「――っ」 声が漏れるより先に口をおさえた。 今この家には自分しかいないのに、襖の間から何者かがこちらを見ている。 眼球の中には無数の瞳孔が存在し、ぎょろりとこちらを向ていた。 「えいっ」 ミカンの皮をそちらに向けて、押しつぶした。 悲鳴が聞こえ、目がどこかへと消えた。