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『20:「悪魔と修道女」』

「ああ、やっぱりあなたでだった……匂いでわかったよ」

「神父さん? むぅに何のよう……?」

「同じ悪魔同士、協力しよう」

「え――」

少女の腹部が不自然に膨れ、その奥から別の声が響く。

『ああ、テメェもか~、いい隠れ場所だな』」


『いい隠れ場所だろ? 病気で死ぬっていうから親に話を持ち込んだら簡単に行ったんだぜ』

「なるほど、村人を夜毎に殺していったのもあなたか」

『3人だけだ。わざと殺してみせつけてやったらあとは疑心暗鬼になった人間がやっただけだ。楽しかったぜ』


「手を組まないか?」

神父は穏やかな声で言った

『同じ悪魔同士なら是非もない。今度は都に行って混乱をまき散らそうぜ』

「ええ、是非」

『それなら――グアッ、なにを……!』


「いえですね。本当に悪いのですが、私が一番楽しみにしてることがありまして」

『グッ、ゴアッ、テメェ、殴るのをやめろ……っ!』

「ああ、いい声ですね。もっと時間をかけたいよ……」

神父は恍惚とした表情で、わざと力を緩めてからもう一度殴った。

『テメェ! なんでこんなことをする!』


「私はですね、悪魔の本性に忠実なんですよ」

『なら、なんで俺を殺そうとする! 人間を苦しめるのが俺たちの本性だろうが!』

「いいえ、悪魔の本性はただ苦しめること。そして、私は人間よりも悪魔を苦しめるのが楽しいですよ』

『気狂いめ! しねぇぇぇぇ!!』

少女の上半身はそのままに下半身がふくれあがり、小屋を突き破った。


「おや、本性を現しましたか――フォニア」

轟音。悪魔の足がえぐられ態勢を崩す。

『グェッ……! 十字架型の大砲をもったシスターだと……!?』

「悪魔め、祓ってやる」

 憎々し気にフォニアをにらむ悪魔。

 その瞬間、いままでうな垂れていたいた少女が起き上がる

「――お姉ちゃん、むぅに何でそんなものを向けるの?」


「――ッ……」

「死なないために少女の意識を戻したか。うまい手だね」

「……うるさいっ!」

「見逃すかい? ここで逃がすと見つけられなくなるよ」

「わかってる……!」

「君の幼馴染のように悪魔に殺されて奪われる人もたくさん出るでしょうね」

「ッ、――あああああ!!」



「フォニアさん、終わりましたか……」

 フォニアはうなずいた。少女の両親だ。

「そうですか……娘もこれで解放されます。ありがとうございました」

 礼を言われ、フォニアの眉間の皺がさらに深く刻まれる。

 ぎりっとなにかをこらえ、少女の両親の肩を叩いて去っていく。


「感謝されたね。善行も悪くない」

「ッッ……くそっ」

「おや、苛立ってるね。でも君もわかってるのだろう。彼女はもう助けられなかったって」

フォニアが神父を殴る。


「わかってるよ……ああ、わかってるよ! でも、もっと早く訪れたら何か変わったかもしれないだろうが」

「いいや、それならあの子は病死してたよ。それもわかったんだろう」

「……っ」

「さ、納得したなら行こうか。君の幼馴染を乗っ取った悪魔を探すんだ」

 嬉しそうな足取りで歩く神父に、フォニアは少しだけ少女のために祈りをささげて歩みだすのだった。


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