㉔ 真田姉妹の反撃
乗り物から出てきたアラハバキたちは、それぞれが白兵戦に切り替えて来た。こうなると、的が絞りにくい。
雪子は一旦、500人から元の一人に戻った。
次は香子の番だった。
彼女が念じると、研究所背後の森林公園から、ドンドン根やツタの類が伸び出し、こちらへやって来る爬虫類族たちに絡みついて、彼等の動きを封じてしまった。
そしてそこへ、由理子が呼び出した、ネズミ・キツネ・タヌキ・イノシシ・カモシカ、それに様々な猛禽類が、陸から空から襲いかかった。
しかしながら、どの攻撃も、敵にソコソコのダメージを与えてはいるが、決定打にはならない。
それにしても、アラハバキの国王とやらは、一体どこに隠れているのかしら。一騎打ちでも何でも、して差し上げるのに…などと呑気に雪子が考えている時だった。
その時は、突然訪れた。
何の前ぶれも無く、雪子の胸の真ん中から、刀剣の切っ先が突き出されたのだ。
「がっはっ!」
ただ空気を吐き出しただけのような呻き声が、彼女の口から漏れ出し、同時に血も吐き出した。
彼女の冬物のセーラー服の胸が、自らの真っ赤な血で染まる。
彼女の背後から、件のアラハバキの王が、刃を突き刺していたのだ。
刃とは言うものの、その形状は、まるで長いサバイバルナイフのようだった。
アラハバキ王は、ソレを雪子の心臓に突き刺したまま、あろうことかグリッと一回転させたのだ。
「ぐっわっ!」
もはや断末魔の叫びのような声が、雪子の口から漏れ出す。
「どうかね?自分の心臓が、粉砕されるのを、感じる気分は?」
爬虫類の王は、キレイな日本語でそう言った。
「我々の転送装置は優秀でなあ、任意のターゲットの背後に、ピタリと出現する事など、実に容易いのだよ。」
「…。」
雪子は最早、何も喋ることは出来ない。
「聞くところによると、キサマは生意気にも、我々と同様、不老不死だそうじゃないか?充分に痛みを感じた後で、その首を落として、燃やしてやるからなあ…少しは我が息子の、苦しみを思い知…れっ!?」
アラハバキ王の言葉は、最後まで続かなかった。
何故なら、その瞬間、彼の上下の唇と両腕は、何者かによって、切り落とされてしまったからだ。
「オマエは今、この世で最もヤッてはいけない事を、してしまった…。」
それは囁くような声にも関わらず、地獄の底まで響き渡るような、邪気に包まれた、鬼気迫るモノだった。




