㉓ ヤツラの総攻撃
時に西暦1991年2月5日の火曜日。
時刻は夜19時55分。
真田雪子は、自分の研究所のエントランス前で、その時を、仁王立ちで待っていた。
セベク王が予告した時間まで、あと僅かだ……彼が自分を騙す可能性についても、チラリと雪子のアタマをかすめたが、彼は高貴なる戦士だ。まさか、そんな事はするまい。
やがて20時になった。
その日の夜空は、幸か不幸か、雲がスキマ無く空を埋め尽くし、星が一つも見えなかった。そして、その一部に今、丸く大きな穴が開きつつあった。
「来たわね。」呟く雪子。
戦闘機、ヘリコプター、それに空飛ぶ空母やバイクのような乗り物……に乗ってアラハバキの軍勢が、どんどんコチラの空間に押し寄せて来る。
アラハバキの王は、雪子が王子に手にかけたのが、余程許せなかったらしい。
このおびただしい敵の数を見れば、アチラさんの本気度が窺えるというものだ。
雪子はまず、イシュタル戦でやった分身の術を使って自らの数を500人程に増やした。
そして、両手を上に挙げ、敵を待つ。
それは別に、降参のポーズではない。
彼女はその状態から、最近習得したアノ技を繰り出すつもりなのだ。
「お姉ちゃん、お待たせ!」
「あら、来たのね?……香子まで。今日は平日なんだから無理しなくてもイイのに。」
そのタイミングで、妹の由理子と香子がやって来た。
「面白い体験は、独り占めしないって約束したでしょ?」
由理子と香子が、ユニゾンでそう言った。
「ああ、そんな話もしたわね?」
雪子は、両腕を挙げたまま笑った。
「私も由理子も、街ではそれほど役には立たないけど、この森林公園前なら別よ。ところで、それ、何のポーズ?元気玉でも出すつもり?」
「そんな、鳥山明センセイを冒涜するようなマネは、しないわ。まあ、見ていなさい。」
迫り来る敵の軍勢までの間合いは充分になった。
雪子は、すかさず攻撃を開始した。
アラハバキたちの頭上から、次々に稲妻が走り、雷が落ちた。ハイテクな兵器ほど、こういうモノに弱いのは、異世界共通の事実だった。
たちまち空中空母も戦闘機も不調になり、空の壁にぶつかっては、その辺りに不時着して行く。
それは、杉浦鷹志とサン・ジェルマンが共同で開発した、新型の電磁防壁が、研究所の上空まで、ほぼ球状に張り巡らさられていたからだ。
だから、内側でどれだけドンパチやっても、外側の街には、一切迷惑がかからない仕組みなのだ。




