㉒ 祟る爬虫類族
そんな、和気あいあいの、三人の場面を遡ること数時間前、未明の自室で、真田雪子は目を覚ました。
そこは、特殊なセキュリティを施した、地下3階のプライベートルームだった。よって、誰も入って来られるはずはなかったのだ。
しかし、雪子は確かにナニかの気配を感じた。
そいつは、ベッドのすぐ脇のソファに、悠々と座って寛いでいたのだった。
「そこに居るのは、誰?一体どうやって、この部屋に潜り込んだのかしら?」
雪子は用心深く、ゆっくりと身体を起こしながら、慎重に尋ねた。
「キサマの構築したセキュリティなど、我々にとってはオモチャ同然だぞ。よくも、まあ、そんなに無防備な様子で、スヤスヤ眠れるものだ。ほとほと呆れるわ。」
ソレはヘブライ語で、どこかで聞いたことのある声だった。
「ライト・オン。」
彼女の声掛けで、部屋の灯りが点灯した。
そこに居たのは、並行異世界からやって来た、四つの爬虫類族の王国の内の一つの代表者、セベク王だった。
「あら?確かココには二度と現れないって、前にアナタ誓ってなかったかしら?」
怪訝な顔で訊く雪子。
「ナニを寝ぼけたことを言っている。分からんのか?コレは緊急事態だ!」
真剣な顔でなおも語るセベク。
「オマエたち、アラハバキ国のモノに手を出したな?あいつらは、我々爬虫類族の中でも、特別に執念深い。厄介な事になったぞ。しかもオマエは、直接ゲートルに手を出した。アイツはアレでも、あの国の第一王子なのだ。もうどうなっても、オレは知らんからな。」
「あら、そうなの?別に誰が攻めて来ようが、構わないけど…私、ヒマだから。何人おいでになろうが、むしろウェルカムよ?」
眠たげに答える雪子。
「ふざけている場合か!オマエたちの時間軸で、明日の夜20時00分に、アラハバキ王が直々に軍を率いて、この現場への総攻撃を開始する。だから、今すぐ早急に対策を練っておけ。コレは…サン・ジェルマンの戦友としての、オレからの忠告だからな!」
それだけ言って満足したのか、セベクはその場から、スッと消えてしまった。
「…対策ねえ?この私の渾身のセキュリティを、安々と破って来るヤツラに対して、一体どうしろと…。」
その場に残された雪子は、独りで呟いた。
「よし。サン・ジェルマンに相談してみようっと。」
彼女は早速、シャワーを浴びて、出かける準備を始めた。
「…由理子と香子…鷹志にも、一応知らせておかなくてはね。彼女たちも古代日本で、アラハバキ相手に、結構派手に、ドンパチやってたらしいものねえ…。」




