㉑ 由理子の愛情
「ジャンヌさん、貴女は、多分、イングランド派ではない方の、フランス王室への愛と、キリスト教への宗教愛から、英雄として戦っていたのよね?」
眼下の名護屋の街並みを見ながら、ふと由理子が語り出した。
「天草四郎の事件も、実は同じキリスト教の中の、別の宗派…確かカトリックとプロテスタント、だっけ?…の争いの、代理戦争の側面があったんだって。おかしな話よね?」
彼女はコレで合ってるかしら?という顔を鷹志に見せながら、話し続ける。
「因みに、私の愛情は違うのよ。もっともっと、大きなモノを目指しているの。ニンゲンだけじゃなく、イヌやネコやトリや他の生命も、みんな愛で包み込むのよ。もちろん一番は、鷹志だけどね!」
「はあ…。」
「だからジャンヌさんも、これから、色々と考えてみて。大切にするべき事は何なのかって。そして、正しい生き方はどんなモノかって。ごめんなさい。私、口下手だから、こんな事しか言えないわ。」
「ああ、でも、ありがとうございます。私なりに、色々考えてみますね?」
「困った時は、サン・ジェルマン伯爵に相談するとイイよ。彼は聡明で、経験豊かな永遠の35歳だからね。」
鷹志がそう付け加えた。
「鷹志も相談に乗ってあげなよ。賢いんたから!」
「いや、ボクは、もう、タダのファンだから…えへへ。」
「あ〜締まりの無い顔して!ちょっとジェラシーだわ。」
「いや、コレはあくまでも、尊敬の気持ち…リスペクトだから。誤解しないでよね、ユリちゃん。」
「分かってるけどお〜。」
そう言いながら、頬を膨らます由理子だった。
それを見ながら、思わずジャンヌはクスクス笑った。
「あっ、やっと笑顔になった。良かった。」
「アナタはホントに天真爛漫ねえ。因みに歳は、おいくつなの?」
「こう見えても、私は21歳なのです。」
今日も赤いウィッグを着けた彼女は、メイド服のエプロンをヒラヒラさせながら、そう言った。
「あら、失礼。年上でしたの?」
「イイのイイの。フランクな付き合いで行きましょ?」
「優しくしていただいて、ありがとうございます。」
「もう、堅いんだから。でも600年前の女の子は、みんなこんな感じなのかな?あ、アチラに見えて来たのが、東山スカイタワーでございま〜す。」
アレコレと、忙しく喋る由理子である。
「不思議ね…。」
ジャンヌが呟いた。
「由理子、アナタからは邪気というモノを、まったく感じない…。私は、他人の殺気や邪気を感じ取ることが得意なの…でもアナタからはナニも感じない。アナタは、他人に殺気を出す事なんてあるの?」
「…有りますよ。」
その問いに、何故か鷹志が答えた。
「ボクは、ソレを見た事があります。ナニかが、彼女の逆鱗に触れた時にね。恐ろしい目に遭いますよ。」
「…もう、やめてよ。鷹志ったら。」
「あら、じゃあ、怒らせないように、気をつけなくっちゃ、ですね?」
「アハハハ…。」
由理子は笑って誤魔化したのだった。




