⑭ 落城前日に
城内の天草四郎の部屋に通され、安置された遺体の顔を見たジャンヌさえ、驚きを隠せなかった。
それ程二人は、よく似ていたのだ。
その後、近習の者一名と、雪子とジャンヌで、別の部屋へと移動し、今後の事について確認した。
「明日、私たちが籠城しているこの城に対して、敵の総攻撃が開始されます。」
雪子が喋り出した。
こういった預言の類は、これまで何度も彼女から成されているので、聞いている近習も、慣れたモノだった。
「あい分かり申した。我々としては、徹底抗戦の構えで御座います。」
「うん、ソレは仕方が無い事ね。でも、今残っている女性や子どもだけでも、私は助けたいの。」
「何か手段がお有りで?」
「私を誰だと思ってるの?」
「…暇を持て余した、"超時空の魔女"でしたね。」
「よく覚えてるじゃない。」
「それはもう…初めて会ったあの日に、まるで歌舞伎役者のように、大見得を切られたので。」
「ああ、なんか、急に恥ずかしくなってきたわ…とにかく、この後すぐに、女性と子どもたちを、いつも作戦会議を行っている、大広間に集めて。いいわね?」
「御意。委細承知しました。」
そう言うと、その精悍な面構えの男は、すぐにその場を後にした。
「さて、ジャンヌ。」
今度は彼女に指示を出す雪子。
「皆が集まって来たら、アナタが御宣託を言うのよ。」
「はい。一体、どのような?」
「"今から、私と共に、ここではない、別天地に旅立ちましょう"ってね?」
「それはまさか、殉教者たちがよく行なっている、無理心中!?」
「普通はそうね…て、言うか、実際はそうだったみたい。でも、この私が居る限り、そんな事はさせないわ!」
「おお、流石は大天使様…じゃないんでしたね?」
「私も暇だったから、時空転位については、ソコソコ勉強したの。それである程度の集団を、一気に別次時空に送る方法を、開発したのよ。」(…ホントは、客人のテスラに、ちょっとだけ知恵を借りたんだけどね。)
「そんな神業が?…やはりあなたは天使様?」
「ふふん。それが、コレよ。」
雪子はそう言うと、自分の傍らに持って来ていた、とあるガジェットを指し示した。それはナニやら細かい配線の付いた、銀色で三叉の燭台の様なモノだった。
「今からコレを四つ、それぞれ大広間の四隅に置きに行きます。ジャンヌも手伝ってね?」
「ハイ。」
その後、すぐに二人は、その作業を済ませた。
「アナタが皆に、例のセリフを言い終わると同時に、私がこの装置のスイッチを入れます。すると、アナタ方全員は、ここから一瞬で居なくなります。」
「…一体、その後どこへ?」
「うふふ、どこだと思う?」




