⑫ 種明かし
飛行するビートルの助手席では、ジャンヌが落ち着いて座っていた。明智光秀とは大違いである。コレも彼女の信仰心の賜物か?
道すがら、暇つぶしになればと、彼女に雪子が種明かしをする。
「もう、私の正体を明かすわね。私の名は真田雪子。日本人よ。だから天使でも悪魔でもないわ。ただ、アナタと同じような方法で、永遠の17歳になった者よ。あと、少しばかりチカラを持っているだけ…。」
「はあ、そうなん…ですね?」
「さっきアナタの代わりに縛り着けてきた人形なんだけど…。
「ああ、はい、アレの事ですね。」
落ち着いて見えた彼女は、上の空で、ボンヤリしていたのだ。それはそうだろう。あんな目にあって平気な者など、この世に居る筈もないのである。
「アレは骨格はセラミックで、その周りは人工タンパク質で出来ていたの。」
「はあ…?」
「…だから燃やしてしまえば、ホンモノの遺体と見分けがつかないって訳。まあ、この時代には、DNA鑑定も無いしね?」
「そう…なんですね?」
「つまり、ついさっき、"オルレアンの英雄ジャンヌ・ダルク"は、この世からキレイさっぱり居なくなったって事なのよ。」
「…なるほど。つまりアレは、出来のイイ身代わり人形だったって事ですね?」
「そうよ。なんだ。ちゃんと分かってるじゃないの。それでね。アナタに少しばかり、お願いがあるの。」
「何でしょうか?」
「今から200年ほど先の未来で、働いて欲しいのよ。どう、頼めるかしら?」
「貴女は今日まで、戦いの中で、数々のアシストをしてくれました。そして最後には、火炙りの刑からも救ってくれました。どれだけ感謝しても、しきれません。この際どんな依頼でも、引き受けたいと思います。」
「ありがとう。そう言ってもらえると、助かるわ。」
「…でも、200年先って?」
「ああ、ごめなさい。私、時空を旅しているの。」
「…ジクウ?」
「時間と空間の事よ…もう、面倒だから、タイムトラベラーでイイわよ。」
「時間を旅する者?」
「そうよ。そして、この乗り物が、ソレを可能にするマシンなのよ。」
「タイム…マシン、コレが?」
15世紀の少女には、把握する事が無理な、奇天烈な情報の洪水だった。しかし、彼女は敬虔なクリスチャンだった。全ては神の思し召しと、自らを納得させたのだった。
「…因みに、何処で何をするんですか?」
「アナタ、男装が得意よね?」
「ええ、まあ。ソレも裁判の争点だったんですが。」
「なあに?何かの違反になるの?」
「それが、キリスト教の教えに、反するとか…。」
「はあ?何よソレ。訳分かんないわよねえ。」
「…はあ。」
「まあ、いいや。とにかく、日本という国で、男の姿に化けて、キリスト教徒たちを率いて、戦って欲しいのよ。そこに悪い支配者たちが居るの。だから、農民たちが、みんなで必死に抵抗しているのよ。アナタは是非、その助けになってあげて。それが済んだら、オンナの姿に戻って 後は自由よ。生活に困らないだけの、砂金もあげるわ。」




