表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異星奮闘記  作者: アルト
建国に向けて
2/19

第1話

第一話〜怪しげな森を抜けて〜


深い深い眠りの水底から、一息ごとゆっくりと目覚めの水面に向かって浮かんでいく。

だんだんと瞼に光を感じるようになり、横になった体が自然と起き上がろうとする。

一層光を強く感じ、その眩しさに眠りが急速に覚めていく。

俺、蓮城僚也は恐る恐る目を開けた。

そこには木の枝葉の間から漏れる木洩れ陽が、眩しい光を受ける緑の輝きがあった。

上を見れば漏れる陽の光と共に、ざわめく広葉樹の葉の重なりが見えた。

どこか幻想的で、とても綺麗な光景は、まるで夢の中にいるように錯覚させる。

頬に風を感じ、それに合わせるように耳には木々の葉が擦れる音が聴こえどこか懐かしい香りだが、

これは現実だ。創造神が言っていたように現実なのだ。

現に自分がプレイしていた装備がフルにしてあり、ステータスもスキル『分析X』で確認できてしまっても現実である。

決して超リアルな夢などどいうどうでもいいオチはない……


「とりあえず、ここでじっとしていても仕方ないか……

 そうだ、のんちゃんはどうしてるんだ?」


自分の彼女である蓮月寧香のことだが、その彼女は少し離れたところでぐっすりと眠っていた。


「ふふふ。可愛い寝顔だなぁ……

 じゃ、のんちゃんが寝ているあいだに辺りの確認をしておこう」


確認してみたが、創造神(オメシワトル)は俺たちの提案をそのまま受け入れ実行されたことがわかり、内心ほくそ笑んでいるが

このまま目を覚まさないかもしれないという可能性は捨てきれず、行動するべきだと直感が告げている。

幸いにもアイテムと装備はゲームのままなので現在の僚也は前の世界での武術も合わせると、ほとんどの敵が恐ろしくない状態である。

辺りを散策していると、一部開けた場所に錆びた蓋がされた丘があった。

気になって蓋を開けて中を探ってみると、梯子付きの真っ暗な縦穴が続いていた。

潜っていくと穴の底に扉が一つあるだけで他には何もない。

ここまで来たのだからとその扉を開けた瞬間、部屋らしきモノが見え、視界の先を何かが横切った。


「…………っ!」


反射で『分析X』を使ったが、何も表示されなかった。

体を動かして奥の扉を覗き込むと半透明のふわふわしたモノが見えた。

そう、幽霊である。

俺は幽霊を見たことがなかっため、あっけにとられていたが、幽霊が

「私の話していることが理解できますか?」

と喋ったことで、さらに驚いて尻餅をついてしまった。


「……大丈夫?背中とか痛くない?」


不思議な現象ではあるが、俺は「大丈夫だ」と片手をひらひらと振って伝えると、身を起こした。

幽霊を見てみるが、何やらよくわからない本を持って俺の方に向けて開いた。


表紙の下から何か文字のようなモノが見えたとたん、発光とともに無数の文字が本と俺の目の間を駆け抜け

猛烈な勢いで頭に殺到してくる。瞳の奥の奥、後頭部まで得体の知れない文字で満たされる。


視界を取り戻すまで約3秒。瞬間的に押し寄せた文字の洪水とそれの残した圧迫感に固まっていると、

例の幽霊がこちらの顔を覗き込んでくる。


「……大丈夫だったかな?」


そう幽霊は確認してきたので俺は


「いきなりすぎてついていけませんが、大丈夫です。」

と答えた。


「そう。本当にごめんなさいね。私はアン。訳あってここに訪れた強大な力を持つ方にあるものを譲渡したい

 という未練だけてこの世にしがみついている幽霊よ。さっきあなたに使ったのはスキルブックという

 特殊な本で、開いた人に何かしらの技術を与える本よ。あなたにはこれから渡す指輪の扱いについて

 既に何か感じ取っているはずよ。感じるかしら?」


ふと先程頭の中に入ってきた文字をイメージするとある事実に気づいた。

「あぁ、使用法と中にあるものの種類、仕組みが何故か頭にある。」

そう、何故か今までなかった知識が頭の中に存在する。

それを気にも掛けずにアンと名乗った幽霊は話を進める。

「そう。よかった。これで私の目的も達成される。

 どうぞ、この指輪を受け取ってください。

 指輪の力によるもの全てをあなたに譲渡します。」


そんな少々怪しい提案を吟味する……が、判断材料がなさすぎるのでそのまま疑問をぶつけてみることにした。

「……どうしても受け取らなければなりませんか?」


「はい、受け取っていただけないのならば上のひとは二度と目覚めないと思いますよ。

 目覚めさせる方法はこの指輪にあるものだけなので。」


「……分かりました。全て引き受けます。」


「ありがとう。では、この指輪を右手の人差し指にはめて……

 そうすれば……あとは……あなたの…………頭にある通りにすれば……」


そう言いかけて、その幽霊は目の前で成仏してしまった。

「……よくわからない指輪だな…………とりあえず、上に戻ろう。」


来た道をそのまま引き返して、愛しき彼女のもとに戻る。

ここまでかなり時間が立っていると思うが寧香は一向に目覚めない。


仕方ないので、指輪を使ってみる。

目の前に大きな木製の扉が現れ、扉の周りの空間が歪む。


俺は扉を開けて、中を探索する。

中には大きな屋敷の裏に広大な農地、牧場地、工場、倉庫、蔵が併設されているが、どれも時が止まっているようだった。

俺は頭の知識の通りに屋敷の玄関前にある魔力石に魔力を注ぎ込む。

すると屋敷の時が進み、先程までは薄暗くてよくわからなかった部屋がはっきりと見える。

天井は高い……5mくらいはありそうだ。

天井と壁は石造りの平滑なもので、床にはふかふかの絨毯が敷き詰められている。

入口の両脇には木製の台座に大きな球体の魔力石がはまっている。

入口から見て左右の壁の奥にはそれぞれ木製の両開きの大きな扉がある。

入口から見て正面の壁の奥には金属製の両開きの大きな扉が2つある。

天井以外にも木製のスタンドがついたランプがいくつかある。


俺は試しに入口の魔力石に魔力を注ぎ込んでみる。

すると入口の部屋の明かりと空調が魔力量に応じて変化した。


しばらくすると頭の中にある知識が発動して、この部屋が応接室 (60畳)で居住空間の入口に当たること、

他の部屋の設備の操縦も可能であること、

目的の薬のある薬品室までのルート、

入口から見て左の奥の部屋が40畳ほどの食堂と厨房、食料庫、10畳ほどの茶室、40畳ほどの和室があること、

右の奥の部屋が50畳ほどの客室と30畳ほどの寝室、広大な露天風呂のついた大浴場があること、

正面の扉の1つの奥は男女共用のとても広いトイレ(水洗トイレ2つ)があること、

もう一つの扉の奥の部屋が10畳ほどの密談室があり、密談室の奥の壁に赤、緑、青、紫、黒、白、黄色の扉があること、

その扉はそれぞれ蔵、薬品室、農地、工場、書斎、倉庫、牧場地の入口であること

その他諸々細かな制御の仕方が頭に刻まれる。


俺は頭に刻まれた情報を頼りに薬品室に入る。

薬品室の調度品はソファーに木製のテーブルセット、ステンレス製のテーブルセット、ドラフト装置、空調機。

天井には綺麗なステンドグラスがはめ込まれている。

広さは……40畳くらいだろうか……

薬品を取り、もう一つスキルブックを探す。


俺が探しているスキルブックはこの屋敷に関する歴史が記されているものだが、それは書斎にあった。

スキルブックを使い、この空間についてもう少し詳しい知識を得てから大きな木製の扉をくぐり、もとの森に戻る。


すると扉は一瞬で消え、何もなかったかのように木々が輝いている。

俺は寧香にとってきた薬を口移しで飲ませ、暫く抱きしめていた。


しばらくすると寧香は同時に目覚めた。

「ん……おはよう、トモ君。…………ってなんで抱きしめられてるの!?」


「おはよう、のんちゃん。えっと抱きしめるまでぐっすりと寝てたんだけど…………あぁそぅだ、寧香、顔洗っておきなよ」


「!?…………『アイテムボックス』水、水……あった。……ってトモ君離してくれないの?」


「……だってせっかく抱きしめたのにこれだけってもったいないじゃん。もうちょい」


「うっ…………」


(もうちょいってなんだ、もうちょいって。)

寧香は顔が自然発火しそうなの離して欲しかったが、いざ離れるときは名残惜しく感じるんだろうなぁ、と、

なんだかんだで現金な自分がいることに気づき、さらに羞恥を加速させた。


「のんちゃん、目覚めてよかった、ホントに」


「う、うん……」


ようやく満足したのか、僚也が身体を離す。僚也の両手は寧香の手を掴んだまま。

寧香は予想に違わず名残惜しく感じてしまい、現状と、いきなり抱きしめられたという事実が頭の中でぐちゃぐちゃにうずを巻き結果、僚也の顔を直視できないでいた。


「ん、じゃちょっとこれからについて話す前に落ち着こうか」


「そうだね。けど、顔洗いたいからトモ君こっち向かないで。」


「はぁい、じゃそのへん散歩してくるよ」


僚也と寧香はそれぞれ行動に移ったが、如何せん、ちょっぴり恥ずかしくてなかなか動けないでいた寧香を心配して僚也は一緒に顔を洗うことにした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


寧香が顔を洗い終わった頃を見計らって僚也は話を切り出した。


「じゃ、お互い落ち着いたところで……現状を確認しようか。」


「……(あんなに抱きしめられていたなんて、どうしよう。ちょっと興奮してるかも)うん、そうしよっか。トモ君はもうステータスとか確認したんだっけ?」


「一応は……ね。寧香はステータスとかに変化ある?」


「えっと……うん、二つを除いて変化なし。

 おっぱいがなんかおっきくなってるのと、必殺料理人ってスキルが入ってる。」


前半の発言に目ざとく反応してしまい、つい魔が差して触ろうとしてしまったが、一応触る前に聞いてみた。

「…………ホントに大きくなってるのか、触って確認していい?」


「え!?……いいけどダメ。……だって…それだけで終わらないでしょ?」


少々今までの行動を振り返ってみるが、自信を持って終わると宣言できなかった。

「……そうだね、じゃ確認はそれなりの場所でするとして……必殺料理人って何?能力確認出来そう?」


「……わかんない。けど料理人なんだから料理に関係するんじゃないかな?」


「じゃ、色々と実験とかしないといけないかなぁ……とりあえずは保留かなぁ。」


「……そうだねぇ。じゃぁまぁとりあえず、スキルと魔法とかを一通り確認しておこうか。トモ君からする?」


「ん~……俺が持ってるのはほとんどのんちゃんも持ってるから……ね。ある程度二人で分けて確認していかない?」


「そうだね、じゃ武器や作成系のスキルはトモ君に任せた。私は攻撃、回復、補助の魔法を確認していくよ。」


「ん、任された。」


僚也はスキル(かなり膨大な量あるが)や魔法を一通り確認し、効果の程を検証してみた。

幸いに周りは森だけだったので火さえ気をつけておけば壊して困るものはあまりなくある程度強力なものも確認できた。


アイテムもそのままアイテムボックスの中に入っていた。

ゲームの金銭『£』は二人であれこれと想像してみたが1枚ずつ取り出すことが出来た。

1£で白銅貨1枚を取り出すことが出来るということに気付き、二人で全額白銅貨に変換した。

これでかなりの大金(ざっと100兆ぐらい)を手にし、世界のどの国よりも所持している金額が多いのはまた別の話。


ゲームとの違いは、大きなクレーターを幾つも作ったことでスキルを使用する際に発生する硬直時間や再使用までの待機時間がなくなっていることと、魔法の威力が調節できることなど、細かな部分で違いがあった。


もちろん怪我をすれば痛いし、血も流れ出る。

細かな怪我 (関節が外れるとか、腱を痛めるとか)にも注意を払う必要がある。

だが回復魔法 (光属性)はある種驚異的なものであった。

が、いざというとき動けないようでは死んでしまう。

ここはゲームではなく現実なのだ。

しっかり考えて動かないと危険性が高まることは二人とも既に気づいていた



「さて、確認も済んだことだし、そろそろ行くかい?」


「うん、イこ」


「ちょっと、のんちゃん?今変なイントネーションじゃなかった?」


「気のせい、気のせい。トモ君もイクんでしょ?」


「のんちゃん……そのイクは後でたっぷりとね。」


「うん、こっちの世界ではどうなんだろう?気持ちいいのかな?それと、私の胸も確認してね?」


「うん。じゃ行こっか」


「…………ところでさ、行くってどこに?話の流れからなんとなくゲームでいつも使ってた拠点であっているの?」


「うん、おそらくここまで設定が生きてるならあるはずだからさぁ。でもまぁ……ハイエルフの従者はいるかどうかわからないけどね。」


そこまで聞いて、寧香はふと不安に駆られた。

「ねぇ……拠点の家って安全なのかな?毎回私たちが移動するときは二人で最強の結界張ってたとはいえ、そこまで機能が生きているのかわからないし

 ……それに、私ちょっとグロイ戦闘はちょっと避けたいかも。いきなりこっちの世界でも前の世界みたいに血で血を洗うような生活はしたくないかなぁ~って……さ。」


「それは……まだわからないよ。でもまぁそれほど酷い生活にはしないように二人で頑張ろ?俺たちは一応自由にようやくなれたわけだしね?…………それじゃ、走るかね?」


そんな僚也の台詞を聞いて寧香は安心したが、最後に聞き捨てならないモノを聞いたような気がしたので我儘を言ってみることにした。

「えぇ〜!?トモ君が抱っこして運んでくれるならいいけど、走りたくな〜い」


「……俺はそれでもいいけど、本当にイイの?」


「あぁ〜……じゃ途中まで抱っこして~」


「わかった。んじゃ満足したら普通に歩こうね。それじゃぁ『ホーム』」


エージェントの諜報員として身につけた索敵術を使うため、僚也がそう唱えると先程取り出していた栞が光だし、大きな地図が光によって地面に描かれた。

「・・・トモ君、これってこっちの世界では光魔法の上級の技に分類されるんじゃない?」


「……そうかも。因みにのんちゃんもこれ出来るよね。」


「う~ん……多分ねぇ〜」


現在位置と目的地を頭に入れた二人は目的地が意外と近いことがわかり、ハイキング気分で森を出て目的地に向かった。


少々以降の話との辻褄合わせをするので投稿ペースが落ちます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ