90.未来のオリミユを救うために
「そうなんだ!それはめでたい!」
俺が無意識に手を叩くと、オリミユは「うふふ♪」と言って頬を赤く染めた。
――あれ、そういえば1ヶ月後って……
1ヶ月後。その時期は、俺たちがシヴァージ王国で滞在している頃だ。
俺とマルシュはカフェのような場所でひと休みした。あの時に、ウルリクアクアが現れた。そして、マルシュと不可解な会話をしてすぐに立ち去った。
――あの後の話だ……!
マルシュが気を揉んで「危ないことをしようとしている仲間がいる」と話してくれた。その"仲間"はオリミユの可能性が高い。
過去2回も同じ流れを見ている。つまり、毎回と言っていいほどオリミユは生死を彷徨う結末となるのだ。
――でも、不老の星神使いを危機に陥れる状況って何だ?
「誕生日ですか!都市についたら、プレゼントをサプライズしますね!」
「言ったらサプライズにならないんだよシェリロル」とグレアムが半目で言う。「でも、せっかくだから少し早くても祝いたいね」
「本当?うふふ♪すっごく楽しみ」
「オリミユ、お前なにをしようとしてるんだ?」
俺は無意識に口に出していた。言うつもりなんてなかったのに。
「え……?」
オリミユは多彩に輝る瞳を大きく開けて、俺を凝視した。
この少女が未来で何らかの脅威に晒されるのは、俺が看過できないらしい。
マルシュやウルリクアクアが危急だと焦るほどならば、かなり窮した事態に発展してしまうのだろう。
――そうだよな……敵味方なんて関係ない。
誰にでも温和な笑みを浮かべるオリミユを、救える方法があるなら喜んで選択する。
「あんまり、危ないことはするなよってことだよ。いいか、オリミユ」人差し指を立て、やや説教口調で言う。「俺がいるのを忘れないこと。イフォーツと話すことの近道はどう考えても俺だろ?黒魔術とか無謀なことをするんじゃないぞ」
イヴィアナを襲撃したのは夜間警備隊のハルヴィン。前回俺たちを襲ったものホワステルやマルシュ、それにウルリクアクアだった。
伝説のパーティーの中でも4人が俺たちに敵として現れている。今思えば、俺が経験した4回の旅でオリミユと邂逅しなかったのは、彼女が何かしらの危険を犯したからだ。だから、俺たちの掃討に加勢できなかった。
ただ、ひとつ引っかかるところは帝国魔道士のカソリゾイが警戒するオリミユが――運命を司る"アルクトゥールス"と契約する異次元の能力を持つ彼女が、危機に瀕するなんて想像できない。
「そうだよ。少なくとも今日みたいな事はしないで」
グレアムは腕を組んで、「ふう」と息を吐く。それから俺に目配せをした。
「そうです!リアトさんは凄いんですから!」と、シェリロルも俺を無条件に褒めてくれる。
「うん。リアトはすごい」
エリィも淡白ながらも、俺への信頼が感じられる言葉を言ってくれた。
俺は思わず口角が上がる。こんなに俺を信頼してくれる仲間を持てたことが幸せでたまらなかった。
「待たせることにはなると思う。それでも、俺は決めたよ。オリミユのために魔法を探すって」
今度は親指を立てて、元気に歯を見せて笑った。人を元気づけるにはやはり"笑顔"が1番だ。
「分かった……♩アタシはキミを信じるよ」
オリミユは控えめに笑って視線も斜め下に落としていた。
そしてイヴィアナの一瞥が俺を襲った。彼女は珍しく口数が少ない。
――なんとなくわかる。
イヴィアナは心底、伝説のパーティーに嫌悪感を抱いているのだ。
この出来事が原因でオリミユと対峙する機会が作られてしまった可能性はある。でも、それを考えるのはやめた。
運命を打ち破ることは主目的でも、それに左右される冒険なんて御免だ。俺は助けたいと思った人を助けたい。
――それが誰であっても。
山小屋で一夜を過ごし、再びローグポリスへの冒険が再開した。下山をし始めると、じわじわと温暖さが戻ってきていた。残りの旅は野営で問題なさそうだ。
そして、いつも通り道中に現れる魔物を狩りながら進んだ。この世界は本当にどこの地でも魔物が出現する。特に辺境や村落といった自然が広がる土地は、多くの魔物が道を塞ぐ。国間の移動も困難な世界だ。
「そういえば誕生日って言ってたけど、オリミユは今年で何歳になるんだい?」
昼食をとっている最中、不意にグレアムが話題を提起した。俺とイヴィアナはオリミユの異常な年齢について既知だ。非常に気まずい話題だった。
イヴィアナは狼狽えを一切見せなかった。
――割と演技上手いのか?
「僕とイヴィは16なんだけど、同い年くらいなのかな?」
――ほんとにこの2人は若いな。
イヴィアナとグレアムが弱冠16で帝国魔道士――そして帝国騎士という高位職につけている事実には驚愕するばかりだ。
「私は21歳です!」シェリロルは笑顔で言った。彼女の年齢が1番言動との齟齬が生じるだろう。「リアトさんは……」
「俺は18だよ。エリィは19」
エリィを見ると、一瞬目を合わせた後視線を横にずらした。
――全く懲りない人見知りだ。
「アタシは今年で確か……」
オリミユは「ん〜……♩」と唸りながら唇を人差し指で軽く叩いた。
「153!アタシは今年で153歳だよ♪」
「うふふ♩」と微笑むオリミユ。
正反対に俺とイヴィアナも含めて全員が愕然と口を開けて固まった。まさか正直に年齢を吐露するとは思わなかった。生肝を抜かれた気分だ。
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