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57.刹那のウルリクアクア


 私の痛快な復讐劇を邪魔されてしまった。


 ──刹那のウルリクアクア……


 彼の泰然自若とした態度。雅な挙措。それでいて傲慢な視線。全てが私の全身を震わせる。

 

 刹那のウルリクアクアのおかげで、さらに物々しい雰囲気が漂い始めた。私は生唾を飲み込む。未知の魔法、未知の魔族、そして災禍の四柱。


 ──より一層警戒しなきゃ。


「なに?!?刹那のウルリクアクア!?」

「あぁ、アイユイユさん!危ないですよ〜!」


 シェリロルに治療され、両眼を取り戻したアイユイユが弾んで歩いてきていた。それにシェリロルが急いで追随する。


「ホンモノ!?!?ワタクシ、夢でも見ていますか!?あの正体不明の"刹那"が目の前で生き、動いている!!!!」そしてアイユイユは地面に膝をついた。「あぁ……なんと神秘的な……!!!ワタクシは運がいいぃ〜!!」


 戦場でこんなに高揚できるだろうか?アイユイユも相変わらず気味が悪い。

 

「シェル!下がってて!!アイユイユも!」


 私は2人を庇うように前に出て、杖をウルリクアクアに向けた。


 2人は強力な能力を持つ代わりに身体能力の脆弱性が際立つ。大切な仲間や友人を目の前で殺される屈辱はもう味わいたくない。

 

「伝説の精霊 "憩泉の精霊(ユーチー)"を遣える精霊使いと、魔族殺しの宮廷魔導師……うん……どっちも邪魔だね……」

「悪いけど、この2人倒すならまず私たちを殺さないと無理だと思うよ?」


「そうだな」


 リアトは震える声で呟く。私同様に魔法の杖をを向けていた。私の煽りに乗じて、エリィとグレアムも戦闘態勢に入る。

 

 ──殺したければやってみればいい。シェリロルは絶対殺させない。仲間をこれ以上傷つけさせない。


「そうか……威勢はいいね……?」


 ウルリクアクアは依然と傲慢に言う。彼が動いたら攻撃を仕掛けよう。


 そう思っていた最中、ドサッ──と、人の倒れる音が背後からした。状況が掴みきれずに振り向こうとした時、私の足元に何者かの血が広がっている事に気が付いた。手が震え出す。振り向くにも振り向けなかった。

 

 ──そんな……まさか、嘘だろう?


 敵から目を離てしまうほど不安だった。私は2人の目の前で守っている。私を差し置いて攻撃されるはずがない。私の背後にはエリィとグレアムもいるんだ。


 それに、刹那のウルリクアクアは動きを見せていない。私は瞬きひとつもしていなかった。


 私の不安は杞憂になってくれなかった。敢然と振り向いた時に見えた光景は私が世界一見たくないものだった──シェリロルとアイユイユは無惨にも血の海で倒れていた。


 アイユイユは首の頸動脈を斬られ、シェリロルは心臓を刺されていた。2人とも既に息はない。アイユイユの美しい瞳が虚ろに映る。シェリロルの綺麗な肌も薄青色のさらさらな髪の毛も、鮮血で汚れてしまっていた。

 

 ──一体どうやって私たちの警戒網を掻い潜ってシェリロルとアイユイユだけを殺せたの?


 シェリロルとアイユイユの生々しい死体を見て気が狂いそうになった。


 ──また守れなかった。


 視界がぼやけ、息が荒くなる。手の震えが止まらなかった。ちゃんと杖を握らなければ。


 ──落ち着いて、イヴィアナ。


 感情だけは抑制しなければ魔法に粗が生じてしまう。


 震える手を強く握る。唇を強く噛んだせいで血が垂れてしまっていた。手の甲で血を拭き取って、律儀に私を待っているウルリクアクアをめつけた。


「シェリロル!!」


 リアトの嘆きが背後から聞こえる。彼は血の海に倒れるシェリロルを抱えるが、彼女の腕は力なく垂れた。それを目の当たりにしたリアトは呻き声を漏らした。


 リアトは涙を流しながらもシェリロルを抱え、木陰にもたれかけさせた。


「ウルリクアクア」怨みと哀しみを含んだ声音でリアトが言う。「俺たちはなんで戦ってるんだ。お前らと戦う必要があるのか?」

「何言ってるのリアト、魔族は……」


 私は口を挟んだ。仲間を殺されて悲哀に満ちてもなお、リアトはお人好しだ。

 

「そういう先入観がこの世界を狂わせてるんじゃないのか?実際にマルシュとウルリクアクアは仲間なんだろ?人族と魔族は"絶対"に敵対するわけじゃない。ただお前たちがなんで俺たちを殺そうとするのか、なんでお前たちと戦わなきゃならないのか知りたいんだ」


 ──先入観……私は今まで先入観で魔族を侮蔑していたの?


 ──違う。


 魔族が人族を苦しめる現状は、冒険の過程で何度も目撃した。グレアムもマリオネも、魔王軍と幾度の戦を繰り広げた。魔族の侵略が、人族との戦争を引き起こしている。


 ──侵略者が敵じゃない?そんなはずないでしょ。リアトは何を言っているの?


「ふうん……いい視点を持つ勇者だね……」ウルリクアクアは視線を上げた。リアトを見るでもなく、空を見ている。「ううん……"何故"……か。リアトには分かるはずもないから気にしないで……?」


「そんなこと……でも、俺はお前たちと特別戦いたいとは思わない!」

「リアトは戦いたくないかもしれないけど、私たちはもう戦うって決めてるんだよ……」


 リアトは世間知らずで優しすぎる。魔族とそれに加担する人間に倫理観なんてない。魔族と与太話をする時間は無駄。魔族を見かけたら問答無用で殺すべきだ。


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