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20.順調すぎる


 複数のネベルブリーヤが俺たちを囲む。どれが本物か見極めなければ。集中力を高めようとした時、ホワステルが笑い声を漏らした。


「繊細な魔法だね。残念、あたしが相手で」


万物を浄化する(プリュケータ)


 ホワステルは魔法の杖に煌々とした光を凝縮させ、天上に魔法を放った。


 すると濃霧で不明瞭だった視界が見紛うほど鮮明に景色を写しだした。俺の"無効化(リヤ)"は触れることで解除できるが、霧という掴みどころのない魔法はそれが出来ない。


「フ……」

「無駄に魔力を使わなくて大丈夫だよイヴィアナ。霧は晴れたから」


 イヴィアナが例によって魔法を詠唱しようとした所を、ホワステルに杖を押えられていた。白髪の高いサイドポニーが得意げになびく。


 魔王城の番人ネベルブリーヤがホワステルの圧倒的な白魔法に狼狽しているうちに、どこからともなく現れたクリファイドが金髪を荒ぶらせて、神聖な大剣で仕留めた。


「逃げられたんだ」


 彼は気だるげに言う。ネベルブリーヤは魔王城の番人と呼ばれる大魔族だ。その大魔族がたった1人の人族の戦士に(おのの)き、口実を作ってこちらに避難したとは……味方の俺が畏怖(いふ)した。


「クリファイドもそうだけど、宮廷魔導師も強いやつらばっかなのに、なんでとっとと大魔族を倒さなかったんだ?」

「そりゃ決まってるだろ。魔王城の番人なんて殺したら魔王の怒りを買うから、手出しできなかったんだ。魔王には勝てない」


 前回、あのタイミングで"不可知のユーペス"を倒したのもそういう意味があったのか。俺はとっとと魔族の母数を減らして被害を最小限にするのもひとつの手かと思っていた。


 その後、魔王の偽りの力の説明を受け、その力を支える魔道具の破壊をするため俺たちのパーティーとマルシュたちで分かれてダンジョン攻略を目指した。マルシュたちは俺たちが前回行った不可知のユーペスがいるダンジョンに行った。そのため、俺たちは必然的に前回と異なるダンジョンに入ることとなった。


 そこにもまたあの魚人魔族のように魔道具の守護者をしている魔族と出会った。そのダンジョンは熱砂の如く蒸し暑く、守護者の魔族も業火のような魔法を使った。厳密に言うとイヴィアナとは別の炎魔法であり、火山魔法だそうだ。


 残念ながら、炎でイヴィアナの大火力に敵うはずもなく、案の定"火炎放射(フランメルン)"の炸裂(さくれつ)に圧倒されていた。


 とにかく、うちのパーティはチート揃いだ。死を纏う妖刀を持つエリィ。魔力欠如者だが、常軌を逸した体力と戦闘技術を持つグレアム。攻撃系の魔法に特化し、高火力と轟速で魔法を放つイヴィアナ。不死身の泉と呼ばれた憩泉(けいせん)の精霊を遣わすシェリロル。


 勇者だと言われているが、実はこの中だと俺が一番平凡な魔法使いなのではないか。


 そんな劣等感を抱きながら魔王城に向かった。クリファイド、マルシュ、ホワステルのパーティーとは魔王城で待ち合わせている。距離的にもこちらが先に到着するだろうから、先に魔王を討伐して欲しいとの事だった。


 魔王とは二度と戦闘を交えたくない相手だ。また死ぬ気で戦わなければならないのか。


 まぁ、盲目の翼人魔族が魔王との戦闘中に加勢して来ないことが何よりの幸運だろう。


 ん…?魔王直下の魔族が討伐され、俺たちは既に向こうに感知されているはず──魔王との戦闘中に加勢することも出来ていたのではないか?


 いや、魔王が討伐されるのを待っている……?そして討伐後に襲撃することで"惜しくも一歩間に合わなかった同胞による復讐"として演出する事が出来る…が……。


 それは魔族側にメリットがあることなのか?


 魔族の脅威であるアイユイユを殺害したのも、俺たちを"魔王の討伐後"に襲撃するのも魔族側に特別な利点があるとは思えない。まさか、何者かの私利私欲のため、か…?


 いや、そんなはずはない──多分……


 全て俺の荒唐無稽な憶測に過ぎない。忘れよう。


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