第7話 覚悟
そう心配するカノンだがそれは杞憂に終わる。
『くくく……はーっはっはっは!! 面白い! 私に名前を付けるなどいい度胸だ!』
そう魔剣が言った瞬間、魔剣に巻きついていた鎖が一本、音を立てて砕ける。
それは封印が更に一つ解けた合図だ。それほどまでに今カノンが行った『名づけ』という行為には大きな意味がある。
『いいだろう、その名前貰ってやる。しかし私に名前をつけたんだ。それ相応の覚悟はあるんだろうな?』
「か、覚悟?」
そんなもの、彼にあるわけがない。
友達にあだ名をつけるくらいの気持ちでやったのだから。
しかしその認識は甘かったのだと少年はこの時初めて気づいた。
だがもう遅い。覆水盆に返らず、吐いた唾は戻すことはできない。
彼は自分が犯した罰を、その身で償うことになる。
『見るが良い。これが私の真の姿だ……!』
次の瞬間、魔剣は眩い光に包まれる。
その目を開けてられないほどの光は一瞬で部屋全体を包み込み、そして数秒の後に収まる。
カノンはチカチカする目を擦りながらゆっくりと目を開き魔剣に目をやる。するとそこにいたのは……。
「ふむ、人の身になるのはいつぶりだろうか。やはり手があるのは便利でいいな」
そこにいたのは、褐色の肌と銀色の髪が特徴的な人間だった。
しかも『超』がつくほどの美人……つまり魔剣は女性だった。
引き締まった肉体ながらも胸は暴力的な大きさであり、しかもそれを隠す役割のはずの衣服は最低限の恥部を隠す程度の黒鉄鎧しかない。長い銀髪は後ろで結ばれていて、風に揺られて妖しく煌めく。
非常に整った綺麗な顔立ちである彼女だが、野獣のように鋭い眼光と尊大な態度が合わさり、かなり粗暴で乱暴そうな印象を受ける。
しかしそれを差し引いても彼女は美しく、カノンは異常事態であることを忘れ彼女に見惚れてしまった。
「かかか! どうした坊主、私の美貌に見惚れてしまったか? まあ私は強くて美しい最強の魔剣だからな、無理もない」
「な、なななな! なんで人になれるの」
「んあ? そんなこと今はどうでもいいだろ、問題はお前が私に名前をつけたことだ。魔武器に名前を付ける、それは一生その武器の面倒を見るという意味だ。異性の魔武器にそんな事をするのは愛の告白と同義だ」
「そ、そんな意味があったなんて知らな、もが」
言い逃れしようとするカノンだが、魔剣レヴィアはその口を手で強引に塞ぐ。
「もちろん知らない……ってのはナシだからな? 私はもうその気になってしまったんだ」
そう言って魔剣レヴィアはギシリと音を立ててベッドの上にいるカノンに覆いかぶさる。
封印から解いてくれた礼、これから一緒に過ごすパートナーへの恩、それらの気持ちももちろんあるが……そもそもレヴィアはカノンの顔がタイプだった。
カノンは悪く言えば女の子にも見えるひ弱そうな顔立ちだが、よく言えば中性的でかわいい顔をしている。
レヴィアはそんな彼を一目見た時からめちゃくちゃにしてやりたいと思っていた。
「さて、これ以上の問答は不要。後は言葉でなく身体で語り合おうではないか……!」
妖艶な笑みを浮かべながら彼女はペロリと舌舐めずりする。
その表情はさながら獲物にありつけた大型肉食獣のようだ。カノンは自分が餌になった気分に陥る。
「あ、あの……また今度に……」
「しない♪」
その晩、三日月型の穴が空いた家から、少年の嬌声が森に響き渡ったと言う。
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