第6話 名付け
キラーハウンドとの激戦を制したカノンはへとへとの身体を引きづりながら帰路についていた。
畑で休んでいるうちにすっかり日が暮れ辺りは暗くなってきた。今の時期の夜は冷え込むのでカノンは急いで帰ろうとしていた。しかし。
「はひ、はひ、身体が、重すぎる……!」
彼の全身はバキバキに筋肉痛になっていた。
一歩歩くたびに足先から指先まで満遍なく突き刺すような痛みが彼を襲う。手には中々の重さを誇る魔剣もある為その痛みは休むことなく彼を襲う。
『歩けるだけ大したもんだよお前は。普通の奴なら動けずその場にぶっ倒れるくらい動かしたんだけどな』
「農作業で鍛えてるからかな、ぎ、ぎりぎり歩けるよ」
カノンの年は十四。
まだまだ遊びたい盛りである彼だが、頼れる大人がいない彼はその人生のほぼ全てを農業に費やしていた。なのでその身体は同年代の少年と比べてもがっしりと引き締まっている。
もし彼が貧弱な肉体だったら魔剣の身体操作に耐えられなかっただろう。
「き、今日は早く寝よう……」
呟くようにそう言ったカノンは、ようやく家にたどり着くのだが……そこには驚くべき光景が広がっていた。
「……な、な、なあああああああっっ!?!?!??!!!??」
目の前の信じられない光景に今まで出したことのない声量の大声を上げるカノン。
目を見開き、口をあんぐりと開け膝から崩れ落ちる。それほどまでに目の前の光景は衝撃的だった。
『あちゃー、これは最後のアレが当たったみたいだな。運が悪ぃなお前』
一方魔剣は他人事っぽくそう言うと『くくく』と可笑しそうに笑う。
するとそんな魔剣の態度に怒ったのかカノンは珍しく大声で怒鳴る。
「なに笑ってんだよ! 家がこうなったのは君のせいじゃないかっ!!」
そう言って指差した先の彼の家には、大きな大きな穴がポッカリと開いていた。
その穴の形は綺麗な三日月型。そう、この穴はキラーハウンドを殲滅した魔剣の一撃によるものなのだ。
『いやー、まさか私の最後の攻撃がここまで飛んていたとはな。流石の飛距離だ』
「感心してる場合じゃないでしょ! ああ! こんなのどう修理すればいいんだっ!?」
しくしく泣きながら彼は穴が空きいつ崩れるかわからないマイハウスに入っていく。幸いなことに重要な柱は外れてくれていたようで今すぐ崩れるということは無さそうだった。
しかし問題は風だ。今の季節の夜は冷える。隙間風で済まない量の風が入ってくるこの家で寝て無事朝を迎えられるのかカノンは不安になった。
「うう、さぶい」
奇跡的に無事だった布団にくるまりながらカノンはそう嘆く。
いくら身を縮めて寒さに抗っても、安物の布団は風を防いではくれない。ガチガチと歯を鳴らしながら必死に夜風に耐えていると、そんな彼を心配して魔剣が話しかけてくる。
『大丈夫か小僧。死ぬんじゃないぞ、お前がいなくなったら私は動けないんだからな』
「だ、大丈夫だよレヴィア。このくらいの寒さ、何度も乗り越えたからね」
『ん? 今お前なんて言った?』
聞き慣れない「レヴィア」という呼び名に魔剣は反応する。
するとカノンは少し気恥ずかしそうに
するとカノンは少し気恥ずかしそうにしながら説明し始める。
「えっと、『レーヴァテイン』って呼び方は少し言いにくいでしょ? だから短くして『レヴィア』。安直かもしれないけどいい名前でしょ?」
『…………』
その説明を聞いた魔剣は沈黙する。
もしかして怒らせてしまっただろうか。カノンは緊張し喉をごくりと鳴らす。
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