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第13話 奮戦

 カノンの目前にいるゴブリンは六体、いずれも手には武器を持っている。

 仲間が殺されたことに腹を立てているようで、ゴブリン達は血走った目でカノンのことを睨みつけてくる。


 そんな風に全力の殺気を向けられたことなど初めてのカノンの魔剣を握る手が震える。ゴブリンの放つ殺気は野生動物のそれとは全く異なり、まるで人間に睨まれているように感じた。


『落ち着けカノン、お前には私がついている』


 そう言ってレヴィアはカノンが握っている部分を暖かくして、彼の緊張を解きほぐす。

 その効果は絶大でカノンは落ち着きを取り戻す。


「ありがとう……行くよっ!」

『ああ!』


 カノンは一気に駆け出して近くにいたゴブリンの胴体めがけ剣を振る。

 踏み込む速度、剣を振る速度、どちらも一流の戦士と言っても過言ではない速度だ。とてもゴブリンの反応できる速度ではない。


『ゲギャ!?』


 何が起きたか理解することすら出来ず、斬られたゴブリンは胴を両断され命を落とす。

 命を奪った感触に顔を歪めるカノンだが、ここで躊躇って仕舞えば自分だけでなく後ろの商人まで殺されてしまう。

 口まで駆け上がって来ようとする胃酸を必死に抑えこみ、少年は次のゴブリンに剣を振るう。


「せいっ!」


 ゴブリンは手に持った棍棒で魔剣の一撃を受け止めようとするがそんななまくらで受け止め切れるはずもなく武器ごと両断される。


「す、すごい……」


 カノンの奮闘を目の当たりにした商人の男は思わずそう漏らす。

 まるで吟遊詩人は歌にするような光景に、こんな状況でも心が躍ってしまう自分がいた。


「が、頑張れっ!」


 思わず口をついて出たその言葉にカノンは背中を押され駆け出す。

 そして「うおおおおっ!!」と吠えながら続け様に二体のゴブリンを切り伏せる。


『ギャ、ギャギャ……』


 圧倒的な実力の差を見せつけられゴブリンは怒りの表情から怯えた顔に変わる。

 そしてゴブリン達は一斉に後ろを向いて逃走を始める。


「逃すかっ!」


 ここで逃したら次の犠牲者が出てしまう。それは防がなくてはいけない。

 カノンは剣を自分の横に構え、更に魔剣に『野菜ジュース(ポーション)』をかける。するとみるみる内に魔剣に魔力が宿り始める。


『くく! エリクサー程ではないが力が漲るぜ! 大技いくぞ!』

「うん!」


 二人は息を合わせて剣を横なぎに振るう。


「「黒月ノ飛刃(ムーン・エッジ)!!」」


 魔剣から放たれたのは黒く巨大な衝撃波。

 それは一瞬で逃げるゴブリン達に追いつくと彼らの体を粉微塵に切り裂いてしまう。


「……ふう」


 戦いが終わったことを確認してカノンは息をつき、そして商人の方を向いてニコッと笑う。

 彼を安心させるため、平静を装いながら。


「ね、大丈夫だったでしょ」

「は……はい」


 商人の男はこの日の出来事を生涯忘れなかったと言う。

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