前半
ダークパープルの空にハーフムーンがきらめいている。
--僕が、真実佳と別れて1週間がたった。
別れた原因は、僕にある。
真実佳とだけ過ごすはずだったディナータイムを、ある日、僕が、真実佳以外のレディとも過ごしてしまったことが原因だった。
その日の夜、真実佳は枕をクリスタルティアーで濡らし、翌日、約5ヶ月馴染んだ僕の部屋を出ていった。
その日の朝、僕が起きてリビングに入ると、一通の紙切れがテーブルの上で僕を待っていた。
その紙切れには、ただ、一言、『さよなら』とだけ書いてあった。
レイニーブルー。
真実佳は、トムの店で泣いていた。
閉店後のため、他に客はいない。
街路樹が並ぶ坂道。--そこに、レンガ造りのトムの店はある。
年代物の街灯が、降りしきる雨にぼんやりと霞むトムの店を映している。
店内には、ナイトオールディーズが静かに流れていた。
カウンターには、飲みかけのカクテルグラスが一つ…。--ピーチ・クーラー。
真実佳の長い髪が、その泣きはらした目を隠している。
トムは、ディッシュを拭いている。
--閉店直前に、真実佳は静かに店へ入ってきた。
それから20分、真実佳は、一度も口を開いていない。
ただ、一言、「トム……今夜は何でもいいの…」と言ったきり、だった…。
風が、窓を揺らした。
トムは、ディッシュを拭き終えて、しばらくすると、焼きたてのサイコロステーキを真実佳の前へ置き、
「マミカ。もしかすると、今夜は、何も食べていないんじゃないのかい?さあ、よかったら食べな」
と、優しく言った。




